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動物では、何を主食にしているかで消化管の長さに差がある。一般的に草食動物の消化管は長く、肉食動物の消化管は短い。たとえば、肉食動物であるライオンの消化管は体長の4〜5倍だが、草食の牛や羊の消化管は体長のおよそ20倍もの長さがある。

草食動物の消化管が長いのは、草に含まれている食物繊維をバクテリア(細菌)による発酵作用で分解し、必要なアミノ酸を得る必要があるため。一方の肉食動物は、捕えた動物の肉からアミノ酸が摂れるので、長い消化管は不要なのである。

このことから「伝統的に穀物や野菜などの植物性食品を食べていた日本人の消化管は欧米人より長い」という主張もあるが、これは内臓における都市伝説のようなもの。

ヒトという動物は肉食でも草食でもなく、どちらもどん欲に食べる雑食。その食生活に適した長さの消化管を備えており、民族による差はない。英国のセント・マークス病院と東京大学医学部附属病院との共同研究(2004年)でも、西洋人と日本人を含む東洋人を比べても大腸の大半を占める結腸の長さに違いはなかったという結果が出ている。

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