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バーチャル駅伝レース「ASICS World Ekiden 2021」に参加を表明した、プロランナーの川内優輝選手。onyourmarkの読者公募で募ったランナーと「AWEカワウチエキデン部」を結成、バーチャル駅伝に挑んだ。そんな川内選手とチームのチャレンジをリポート。

昨年11月に初開催されたバーチャル駅伝「ASICS World Ekiden(以下、AWE)」第1回大会には、179カ国から13,602チーム、56,007人という多くのランナーが参加し、大きな注目を集めた。今年もAWE第2回大会が、11月11日から22日まで開催。プロランナーの川内優輝選手と、onyourmarkの読者公募で集まったランナーが「AWEカワウチエキデン部」を結成しAWEに挑んだ。

42.195kmを6区間に分割し、最大6人のランナーでタスキをつなぐのが、このAWEというレース。フィットネス・トラッキング・アプリの「ASICS Runkeeper」を利用して、自身が走る区間をトラッキングし、デジタルたすきをつないでゴールを目指すバーチャルレースだが、「AWEカワウチエキデン部」のメンバーは、2人はオンライン参加し、4人はリアルにタスキをつないだ。

オンラインの参加者とオフラインの参加者で健闘を称え合った

第2回AWE初日の11月11日、関東地方には雲一つない青空が広がっていた。遠くには富士山も望める秋晴れの下、「AWEカワウチエキデン部」のチャレンジはスタートした。

「“頑張ろう”とやる気を起こすのに、目標設定は大事。不可能な目標じゃなくて、“頑張ればいけるかもしれない”という目標として、ちょうどいいなと思った」(川内)
メンバー間で相談し、2000年シドニー・オリンピックで金メダルを獲得した高橋尚子さんの優勝タイム(2時間23分14秒)を目標タイムに掲げて、6人はタスキをつないだ。

1区・5km 藤田潤さん

1区を託されたのは、ロシアから参加の藤田潤さん。藤田さんが住むモスクワと日本とは6時間の時差があるため、真夜中に5kmを走った。

「1区なので、みんなに勢いを付けなきゃなと思っていたんですけど…」

藤田さんがスマートフォン越しに見せてくれたのは、路面にうっすらと積もった雪。晴天のリアル会場とは打って変わって、モスクワは、深夜に初雪が降ったという。

「これから足跡を付けてきます!」と藤田さんは、サンライズレッドの“JAPAN”のウエアを着て、スタートを切った。今回、藤田さんは、川内選手も出場した2013年モスクワ世界陸上のマラソンコースとして使われた周回コースを走った。途中、雪が積もっている箇所や、氷が張っているところもあり、予想以上の悪路に藤田さんは苦戦したという。それでも、「途中で苦しいなと思っても、誰かにつなぐんだよなと思うと、元気が出て、頑張れました」と5kmを20分23秒で走り切った。

「バーチャルでも、2区の佐藤さんにタスキを渡さなきゃっていう気持ちだけはありました」

2区・5km 佐藤真希子さん

藤田さんからタスキを受けたのは、和歌山県在住の佐藤真希子さん。

「皆さんがSNSで走っている様子とかを発信されているのを見て、“頑張っているんだな”とか“私もやらなきゃ”と思ったり、親近感を覚えたりしました。皆さんがアップした活動されている様子を見るだけでも、だいぶ距離が縮まるように感じました」

顔合わせ以来、「AWEカワウチエキデン部」の仲間の活動に刺激をもらいつつ、AWE当日を迎えた。この日は、もう1つの拠点である愛知県からオンラインで参加し、1周約500mの周回コースを走った。「通勤の方が駅に向かうなか、その横をはあはあ走っていて、ちょっと恥ずかしかったです…」と佐藤さんははにかむが、最後まで気を緩めることなく、5kmを24分15秒で走った。

「ひとりぼっちで走っているんですけど、次の方が待っているし、みんなとチームだし…。残り1㎞ぐらいから苦しかったんですけど、最後は頑張ることができました。実際には目の前にいなくても、待っている人がいることを感じることができました」

 走り終わった後は、藤田さんと共に、オンラインでつないで、リアル会場でタスキをつなぐ仲間に声援を贈った。

3区・10km 森川千明さん

リアル会場での先陣を切る3区・10kmを担ったのは、元・実業団ランナーの森川千明さん。「1km3分40秒から3分50秒で走れれば…」と話していた森川さんだったが、勢いよく飛び出した。最初の1kmは3分20秒と、予定よりもかなりのハイペースだった。

「3分40秒に落としたほうがいいのかなとも思ったのですが、次の1kmも3分30秒だったので、いけるところまでいこうと思いました」コース途中には上り坂もあったが、ペースを落とすことなく、10kmを走り切った。

「やっぱり一人じゃないから頑張れました。一人だったら、3分40秒でも50秒でもいいかなって、簡単に諦めちゃっていたと思うんですけど、みんなが待っていてくれたことがすごく励みになりました」
タイムは34分44秒。なんと、実業団引退後の自己ベストタイムを叩き出した。

「思ったよりも走ることができて、普段の練習よりもガツンと刺激を入れることができました。すごく収穫がありました」
12月に予定しているフルマラソンのレースに向けて、高強度の練習代わりにもなったという。チームを勢いづけて、中嶋さんにタスキをつないだ。

4区・5km 中嶋友里さん

ランニングインフルエンサーとして活躍する中嶋友里さんは、1カ月前に100kmのレースを走っており、それ以前にはスピード練習をほとんどしていなかったという。そのため、AWEに向けて不安もあったが、顔合わせの際に、川内選手から「時間がない中では、坂道ダッシュがお勧め」とアドバイスを受け、毎朝5時に200mの坂道ダッシュと5kmのペース走に取り組み、AWEに備えてきた。その成果は着実にあった。

「みんな頑張っているので、準備期間があるなら、可能な限りできることをしたいなと思っていました。ジョグのペースが上がって、脚も速い動きになれました」
中嶋さんは、キロ4分30秒ペースを目標にしていたが、5km、22分21秒と、目標を上回るペースで見事に走り切った。

「2kmから3kmあたりがすごく辛くて、ペースダウンしちゃったんですが、皆さんがいてくれたので頑張れました。ランナーはみんな、しっかり追い込みたいという思いを持っていると思いますが、頑張ることができたのでよかったです」

5区・10km太田陽之さん

5区の太田陽之さんは、岩手・盛岡在住だが、「川内選手にタスキをつなぎたい!」という強い思いから、盛岡からリアル会場に駆けつけた。

「AWEカワウチエキデン部は2週間限定のチームではありましたが、自分のチームでの練習でも“今日のため”と思って取り組んできたので、2倍、良い練習を積めたのかなと思います。SNSで皆さんの活動を追っかけて、励みにしていました。どんな練習をしているか、もそうですが、みんながランニングを楽しんでいる模様が分かって、刺激になりました」

太田さんは、国内外にいる仲間に触発されながら、準備を進めてきた。そして、目標ペース通り、35分44秒で10kmを走り切り、憧れの川内選手にタスキを渡した。

「待っててもらえる、うれしさがありましたね! まして川内選手でしたから。みんなからも応援してもらえて良かったです。タイムには悔いが残るので、その悔しさは地元に持ち帰って次に繋げたいと思います」

仲間とのタスキリレー、特に川内選手につなげたことは、一生の思い出になったようだ。

6区・7.195km 川内優輝選手

5人がつないだタスキを受けて、最後を飾るのは川内選手。実は、9月下旬に左膝の靱帯をケガし、約2週間のノーラン期間を経て、1カ月前にようやく走れるようになったばかりだった。トレッドミルで2kmをキロ7分30秒ペースで走ることから再び始めたといい、AWEがケガからの“復帰戦”となった。それでも、川内選手は、キロ3分5秒ペースを目安にしていたのにもかかわらず、いきなり3分を切るハイペースで元気に走り出した。

「皆さんの頑張りを見て、アンカーの私も頑張らなきゃなって、本当にレースのような気持ちで頑張りました。最後、ペースが落ちかけたんですけど、応援をもらって、すごく良い走りができたと思います」

最後はみんなの声援を受けながら、トラックを周回。そして、みんなの待つフィニッシュへと駆け込んだ。7.195kmの記録は22分11秒。12月には福岡国際、防府とマラソンを控えているが、ケガ明けとは思えないほどの力走を見せ、AWEカワウチエキデン部のとりを飾った。

オンラインで参加した佐藤さんがこんなことを口にしていた。

「もちろんコロナ自体は良くはありませんが、こういう状況下でオンラインが身近になって、遠く離れた人との距離をぐっと縮めるツールになっているんだなとつくづく感じました」
リアル会場に足を運べなくても、その場にいるような気持ちで仲間とつながっていたのだろう。

オンライン参加の佐藤さん、藤田さんと言葉を交わす川内選手

「駅伝は埼玉県庁に所属していた時以来となるので、3年ぐらいぶりでした。半分リアルで、半分バーチャルですが、みんなとタスキをつなぐのは元気が出ましたね」

AWEで復活を果たした川内選手にとっても、今回の経験は大きなモチベーションになったようだ。目標としていた高橋尚子さんのタイムには届かなかったが、走ったランナー、それぞれが力を出し切れたこと、そして、新たな交流を持つことができたことに満足した様子だった。

完走後、各自スマートフォンで記録を確認した

「ASICS World Ekiden」は11月22日まで開催しており、まだまだエントリーが可能だ。いつも一緒に走っている仲間とチームを組むのもいいし、遠方に住む友人とチームを組めるのもAWEならではの楽しみ方だ。AWEカワウチエキデン部を仮想ライバルとし、勝負を挑むのもいいかもしれない。

6区間のデータが反映されると、完走証が発行される

#AWEカワウチエキデン部

ASICS World Ekidenにエントリーしよう!

AWEカワウチエキデン部がチャレンジするASICS World Ekidenは、どなたでも無料でチャレンジが可能。6区間を走るルールだが、一人が何区間も走ってよいためチーム人数は2人以上いればOK。「Runkeeper」を用いて代表者がチームを作成したら、発行されたURLをチームメイトに共有しエントリーするだけ。この秋のランニングのモチベーションUPに、近い仲間とも、離れた仲間ともチャレンジしてみては?

ASICS World Ekiden 2021
Runkeeperをダウンロードする

川内優輝(かわうち・ゆうき)


1987年、埼玉県出身。中学入学後から陸上競技部に所属。学習院大学在学中は関東学連選抜のランナーとして箱根駅伝に2度出場している。卒業後、フルタイム勤務の地方公務員を続けながら各地のレースに参戦、2011年東京マラソン3位、2013年別府大分毎日マラソン優勝、2017年ロンドン世界陸上マラソン9位といった記録から「史上最強の市民ランナー」と謳われた。2018年のボストンマラソンでは、日本人選手として31年ぶりの優勝を飾った。2019年、埼玉県庁を退職し、プロランナーに転向。2020年12月、フルマラソン2時間20分以内における完走数100回を達成、ギネス世界記録に認定された。
yuki-kawauchi-marathon.com

アシックス公式サイト
www.asics.com/jp/