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山岳アクティビティにおける人口増加や気候変動による異常気象がもたらす環境負荷。使われなくなった山道の再生による観光資源への新活用。我々を受け止めてくれる愛すべきトレイルは近年、様々な課題に直面している。そんな中、日本各地でトレイルを整備し、保全するための動きが活発化しているのも事実だ。フィールドで活動する人物にアクセスすることで、課題解決への道筋に近づけるかもしれない。果たして、その道はつまずきやすい悪路になるか、それとも気持ちのいいシングルトラックになるだろうか。「トレイル整備」をキーワードに”人とフィールド”へアプローチする新連載。第1回目は神奈川県・丹沢エリアで活動する山本哲史さんを取り上げる。
山本哲史さん 神奈川県秦野市出身。幼い頃に地元でボーイスカウトを経験。高校からサーフィンを始め、現在はMTBを楽しんでいる。NPO法人 丹沢を愛する会代表、丹沢TrailS理事、YAMA CAFEオーナー。

トレイル清掃を始めたきっかけ

都心からアクセスが良く、バリエーション豊富な地形を持ち山のアクティビティを楽しむ人たちから高い人気を誇る神奈川県丹沢エリア。今回登場するトレイル人は、NPO法人「丹沢を愛する会」代表及び「丹沢TrailS」理事の山本哲史さん。2020年には表丹沢の入り口、大倉に「YAMA CAFE」をオープンさせ、このエリアのアクティビティを盛り上げている。そんな彼が特に注力しているのが丹沢のトレイル清掃。そのきっかけはどのようなものだったのだろうか。

「2020年にオープンしたYAMA CAFEを運営する中で、ハイカーとトレイルランナーとの摩擦やヤマビルなど、様々な問題を目の当たりにしました。表丹沢の玄関口で商売をしているのなら、何かできることはないか常連さんと話をするうちにたどり着いたのがトレイルを清掃すること。トレイル清掃から広がってトレイルを大切にすることや、トレイルにおけるハイカーとランナーの棲み分けまで波及していけると思ったんです」

トレイル清掃へ向かうときは愛車のマウンテンバイクを利用することも。

トレイル清掃=自分たちの遊び場を作る

山本さんが主催するイベントでは3人一組で行われるトレイル清掃。1人目が山道に積もった枯れ葉を掃き、土を露出させ、2人目がその枯れ葉を集め脇に寄せる。3人目がその枯葉の山を壊し、谷に投げるという一連の流れにより、ヤマビル発生の原因となる湿気の溜まる環境を少なくしていくのだという。

そもそもトレイルをきれいにしたいという思いがあっても、実際に掃除をするというのは誰もがすんなり取り組めるものではない。そこで着目したのがアクティビティとの連携。「楽しさ」をエッセンスとして加えながら、トレイル清掃をイベントの一環に組み込んだ。

「トレイルを掃除をするだけではなくて、必ず何かしらのアクティビティを一緒にしてもらうようにしています。例えば、家族向けや初心者向けのイベントとして、山の知識を共有しながらトレッキングを楽しみ、同時にトレイル清掃をしてもらう。他にもトレイル清掃をした後に木彫りのマグカップを作るイベントを企画しました。一回で終わるのではなく、一ヶ月かけてトレイル清掃を行いながらマグカップも完成させていく。トレイルとウッドクラフトを並行して楽しめるようにしたんです。『トレイル清掃=自分たちの遊び場を作る』というところまでお客さんを引き込みたいと思っています。みんなで協力し合いながら遊び場を作ることがイベントになる。自分で作ったトレイルなら遊びたくもなるし、守りたくもなりますよね」

登りながら倒木を除け、下りながら落ち葉を掃くというのが山本さんのスタイル。
枯れ葉が積もった状態だと湿気が溜まりヤマビル発生の原因になる。清掃はヤマビル対策の意味でも重要な作業だ。

荒廃していく山の姿への危機感

イベントは一過性のものだが、トレイル清掃は継続していくことが必要だ。続けていかなければ山の荒廃は進むばかり。山本さんは危機感をにじませる。

「トレイル清掃は1ヶ月では終わりません。2ヶ月で『やっとここまできた!』と思っても、そのあと3ヶ月放置したら元に戻ってしまいます。毎週ではなく、2〜3ヶ月に一回のペースでもいいのでトレイル清掃を続けてほしいです。イベントではなく、10〜20年続く定例清掃にするには、やっぱりモチベーションの維持が課題となるでしょう。天然林の山は日本にはほとんどありません。約8割が人の手が入った山です。一度人が手を入れた山は、手を入れ続けないと荒廃してしまいます。そのような背景もあるので、実際はトレイル清掃を通じながら、山の維持管理の問題にまで踏み込んでいきたい。ただ、いきなりそれを言ったら自分ごとにするのが難しいので、まずは楽しんで『自分たちの遊び場を自分たちで作る』というところから興味を持ってもらい、最終的に山の荒廃というところまで考えてもらえたらと思っています」

トレイル清掃で見えてくる新たな魅力

丹沢には手つかずの林道や廃道も多く、トレイル清掃を行うことで見えてくる魅力や課題解決への糸口もある。

「地形のバリエーションが多く、トレイルランニング、マウンテンバイク、e-バイク、沢登りなど様々なアクティビティができるのが丹沢の魅力です。また、丹沢で切り出した木材を使ったウッドクラフトもYAMA CAFEで体験することができます。丹沢は廃道が多いのも特徴のひとつ。そういった道を復活させて通れるようにして、トレイルランナー専用にしたらハイカーとの棲み分けができますよね。いい意味で手付かずなので、まだまだポテンシャルがあるのが丹沢なんです」

YAMA CAFEではOnのシューズレンタルもできる。

山本さんが営むYAMA CAFEではイベントを通して、今後もトレイル清掃を行っていく企画を予定している。丹沢の魅力に触れながら、楽しむ場所を自分たちの手で作り、守っていく。そんな経験に接することで、持続可能な環境の保全を目指しながら、トレイルやアクティビティへの愛着が増していくかもしれない。

YAMA CAFE
Facebookページ:www.facebook.com/tanzawabakaone/
住所:神奈川県秦野市堀山下1487-1
アクセス:小田急線渋沢駅より「大倉」行き路線バス渋02で約15分
トレイル清掃参加情報:YAMA CAFE Facebookページよりご確認ください

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