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onyourmarkでは働くことと身体を動かすことの関係をワーク・スポーツ・ライフバランスと題して取材してきました。日本のスポーツ政策を担うスポーツ庁にて、これからのスポーツと働くことの関係をインタビューしました。

お話を伺ったのは、スポーツ庁の藤江陽子(ふじえようこ)次長。

onyourmark(以下OYM):スポーツ庁で働く方は、やはりスポーツに関するバックグラウンドをお持ちの方が多いのでしょうか。

藤江次長:スポーツ庁は2015年に新設された、非常にハイブリッドな組織です。130名程の人数ですが、民間企業や地方公共団体など幅広いバックグラウンドを持った方や、他の省庁から来た人もいます。スポーツに関する取り組みの調整役としての役割も大きいので、このような組織になっています。金メダリストである室伏長官をはじめ、国体やインターハイで活躍した職員もいたりしますが、そうした経験は持たないけれどスポーツを楽しんでいる人など、非常に多様ですね。

OYM:スポーツ庁として考えるスポーツの価値とは何ですか。

藤江次長:スポーツ行政の方向性を決定する指針としてスポーツ基本計画があり、現在は第2期の真っ只中です。その計画の中ではスポーツが貢献できる価値として「スポーツで人生が変わる」「スポーツで社会が変わる」「スポーツで世界と繋がる」「スポーツで未来を創る」の4つを掲げています。スポーツをしたり観戦することで楽しみが増えたり達成感を味わえたり、仲間とのコミュニケーションが生まれることで個々の人生が充実することがスポーツの大きな価値の一つだと思いますが、スポーツ行政としてはそれだけでなく、スポーツが社会に貢献する力、社会を変える力に大きな意味があると思っています。

例えば障がいの有無に関わらずスポーツを楽しめる環境を作ることが、日常生活におけるバリアを無くすことに繋がるなど、スポーツが共生社会に向けて良い影響を与えることがあります。他にも、その土地が持つ自然資源を生かしたスポーツが地域振興に役立ったり、SDGsの達成についてもスポーツが貢献できる部分があったり、スポーツと何かを掛け合わせることでさまざまな社会への変化を生み出すことができると思っています。

OYM:onyourmarkでは、働くことと身体を動かすことを考える、ワーク・スポーツ・ライフバランスを特集しています。取材をする中でスポーツエールカンパニー※の認定をよく目にしますが、この施策の背景を聞かせてください。

※従業員の健康増進のためにスポーツの実施に向けた積極的な取組を行っている企業を「スポーツエールカンパニー」として認定する制度。

藤江次長:スポーツの実施率が低いのは働き盛りである20代から50代なのです。全体としてスポーツの実施率を高めていくためにも、ビジネスパーソンに向けた施策が必要で、朝活やFUN+WALK PROJECTを提案しています。ただ、働き盛りの世代がスポーツをできない一番の理由は時間が確保できないことにあります。会社での時間が生活の大半を占める中で、スポーツの機会を増やす取り組みを企業がしてくれれば、スポーツの実施率に効果があるのではないかということで、従業員のスポーツ活動を勧める企業をスポーツエールカンパニーとして認定しています。

OYM:企業が従業員の健康や運動に取り組んでいることに対して、どのようなメッセージを伝えたいですか。

藤江次長:かつては企業が健康や運動に対して取り組むことには福利厚生の意味合いが強くありました。もちろんそういった観点も大切ですが、加えて従業員が心身ともに健康で働くことは、その人材が最大限能力を発揮することや欠勤の防止にも繋がり、経営的な視点やリスク管理からも重要だと思っています。このような健康経営の考え方や健康管理の取り組みは経済産業省や厚生労働省も勧めています。他省庁とも連携をしながら、従業員の健康保持に運動やスポーツが効果的であることを訴えていきたいと思っています。さらには、スポーツをすることが従業員のコミュニケーションの活発化や一体感にも繋がると思うので、ぜひ企業でもスポーツを取り入れて、スポーツの価値をさまざまなところで生かしてもらいたいです。

OYM:スポーツ庁では、職員が日常にスポーツを取り入れるためにどのようなことをしていますか。

藤江次長:コロナの影響で昨年は実施できませんでしたが、夕活という、夏に1時間早く仕事を切り上げて何かしらの活動をする取り組みが政府全体であります。その中でスポーツ庁ではスポーツレクリエーション活動の日を設けていました。ベリーダンスやシッティングバレーなど幅広くスポーツを楽しむ、活発で楽しい会になっています。他にもウォーキングイベントや昼休みのダンス活動、長官室にある俵を廊下一周運ぶ競争(!)をしてみたり。夕活など組織的に行う取り組みもありますが、現場からも意見を出し合ってやってみることが多いです。それが、庁内のコミュニケーションにもつながっています。

OYM:スポーツ庁として考える、国民のスポーツに関する達成目標や将来像はありますか。

藤江次長:目標としては、スポーツの実施率を設定しています。スポーツ基本計画の中で5年間で42.5%から65%まで上げることが目標となっており、今年が最後の年です。昨年が59.9%だったので、達成まであと少しという状況です。コロナの影響も懸念していましたが、かえって身体を動かさなければいけないという思いが強くなったのか、昨年も実施率は上がりました。現状としては簡単にできるウォーキングや体操をする人が増えてきていますが、新しい生活様式の中でオンラインを使った運動もさらに推進が必要だと思っています。

多くの方にスポーツを身近に楽しんでもらうために、Sport in Lifeプロジェクトという取り組みをしていて、企業や地方公共団体、スポーツ団体などと一緒にスポーツが日常的に生活の中にある環境づくりを目指しています。現在、このプロジェクトには、1,000社以上の企業や団体が参加していて、みんなで一緒にスポーツを盛り上げていきたいと思っています。

※Sport in Lifeプロジェクトでは加盟団体を募集中! https://sportinlife.go.jp/

スポーツ庁職員のワーク・スポーツ・ライフバランスとは

スポーツ庁で働く職員の方はどのように身体を動かすことを楽しんでいるのか、内海隆博(うつみたかひろ)さんにお話を伺いました。

スポーツ庁に勤務する中で、どのようにスポーツと関わっていますか。

今年の4月から競技スポーツ課に属しており、日本のトップアスリートの競技力向上のための取り組みを担当していることに加え、スポーツ団体が開催する全日本選手権や天皇杯などにも関わることが多いです。最近はコロナの影響もあり難しいですが、現地に行くことも多いです。

プライペートではどのようにスポーツを楽しんでいるのでしょうか。

大学まで柔道をやっていました。大学の柔道部の同期には日本代表選手も数名いて、全体で200名弱の部員の中で毎日稽古をしてました。今は柔道をすることがありませんが、ランニングは続けています。昔から走るのは速い方でした。今でも、日常的に身体を動かさないとなんだか落ち着きません。最近は週に3回程度近所をランニングしています。毎日通勤していた時には平日に走る時間を確保することは難しかったのですが、テレワークが導入されてからは平日にも走るようになりました。子供たちを送り出してからテレワークを始めるまでの少しの時間でランニングをしています。テレワークで通勤時間がなくなった分、走る時間や家族の時間が作れるようになりましたね。

スポーツ庁での仕事を通して、スポーツに対する考え方に変化はありましたか。

そこまで大きく変わってはいませんが、スポーツを推進する仕事に関わっているため、率先して身体を動かすことを意識しています。簡単なことですが、2駅手前で電車を降りて歩いたり、庁内の移動で階段を使うようにしています。また、柔道をしていた頃は上を目指すことばかり考えていましたが、スポーツ庁での仕事を通して、レベルを問わず子どもから高齢者まで、誰もがスポーツを楽しめる環境を整えることの大切さに改めて気付かされました。アスリートの活躍を見て興味を持った人が、そのスポーツを始められる環境が地域にあること……トップアスリートから地域での運動まで、スポーツが身近にあり、すぐにできる循環を作ることが大事だと感じています。

取材を終えて
この2021年はふたつの意味で、スポーツの価値が我が国で問い直される年になると思う。ひとつは、昨年来のコロナ禍における生活様式の変化。そしてもうひとつは、今夏に開催される(であろう)東京五輪だ。ロンドン五輪は、その開催後市民の運動量を増やすことがひとつの目的とされていた。そして実際に、英国には空前のサイクリングブームが沸き起こった。東京2020という名の時代に翻弄された大会は果たして、我が国にも同じような結果をもたらすだろうか。藤江次長によれば、この5年でスポーツ実施率は順調に伸びているという。今夏、おそらくそれはさらに加速するはずだ。身体を動かすことが好きな私たちは、競技者たちの情熱と集中に大いに感化されて、またスポーツを楽しみたい。それは巡り巡って、よい社会をつくることにつながるのだから。2021年は、私たちが日々行う運動の価値をより実感させてくれる年になりそうだ。

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