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onyourmarkがお届けしているポッドキャストonyourmarkRadioの最新回は、「データはモチベーション」と題してトレイルランナーにしてウルトラランナーにして猟師(!)の羽田知弘さんとStravaにおけるデータ活用術についてお話しました。まだ聴いていない! という方はぜひ下記よりお聴きください。

ちなみにonyourmark Radioでは、ランニング時やジムトレーニング、通勤時間などにちょうど良い(と思われる)1時間前後のプログラムでお届けしています。近頃は「ランニング中に聴いています!」と言われることも多く、心の中で感涙しています。深謝。

今回のプログラムの大前提として、onyourmark読者のStravaへの関心の高さがあります。放送中にもお伝えしましたが、昨年5月に公開した「サブスクモデルへ移行するSTRAVA」は読まれに読まれ、2020年の年間ランキング3位という注目度の高さでした。今も一定数のアクセスがあることからも、無料と有料での線引きについては一般アスリートにとって大きな関心ごとです。

私のStravaタイムラインに上がってくる友人知人のアクティビティログを見ていても、一般アスリートの変化を感じることは多々あります。

あ、サイクリストだったあの人がトレラン始めてる! とか、
あの人ランナーだったはずなのに自転車乗ってる! 

なんて嬉しい発見も、Stravaを通じてのものでした。2020年は多くの人が新しいアクティビティにチャレンジした、というトレンドも自分の肌感覚で理解できたんです。

さて、ここでは収録後記として羽田さんとのお話をさらに深掘りしつつ振り返ってみたいと思います。「データ」というと、その日走った距離や心拍数といったお馴染みのものから、FTP(持続可能体力値)やTSS(トレーニングストレススコア)といったよりテクニカルなものまでその射程は広範です。

Strava
ポッドキャスト収録風景。onyourmark Radioで時間管理術を教えてくれた羽田さん(右)

羽田さんのトレーニング時間管理術

羽田さんのお話でまず印象的だったのは、時間を練習ボリュームの管理指標としていたこと。エンデュランスランニングやサイクリングの世界では、月300kmとか、月1500kmなんて距離がある種の指標として話題に上りますが、それを「呪縛」と羽田さんは呼んでいました。これに関しては常々私も思うところがあり、サイクリングでも平坦メインのルートを1500km走るのと、山がちなルートを1000km走るのとではその性質は大きく違うはずです。最近はバーチャルサイクリングの振興もあり、また短時間・高強度のトレーニング理論の発展もあり、ますます「距離」という指標はある種の目安にとどまっている印象があります。

一方で、運動時間はある程度定量的に捉えられます。羽田さんのユニークなところは、1週間単位で自分の可処分時間を算出し、予めトレーニングに充てる時間を決めていること。一週間が168時間、睡眠と仕事がそれぞれ8時間ずつで96時間、ご飯を食べる時間は1日3時間で21時間、となると一週間で自由な時間は51時間という計算が成り立ちます。そう考えると、案外に時間というのもは無いなぁと改めて思わされます。

その中で、ランニングは1週間10時間という目安を羽田さんは課していました。おそらくonyourmark読者のみなさんの多くは、それよりも長い時間をフィットネスに充てていると思いますが、改めて時間で考えてみることで他の日常生活と効率よく、アクティビティを楽しむことができるかもしれません。ただし、1週間で10時間は物足りないのも事実。休日に1日丸々遊んでしまえば、すぐに消化してしまう時間ではあります。翻って、サブ3も間近だという羽田さんのトレーニングが密度よく、また定期的であることの証でしょう。

「データはモチベーション」実践編

データはモチベーション。1秒でも速く、というセグメントリーダーボード機能は面白くも辛くもありますが、これだけ多くのユーザーをStravaが抱えるにあたって(なんといっても世界で8200万人!)、KOM(キング・オブ・ザ・マウンテン)なんて遠い異国の、いやあるいは宇宙の話……は、完全に他人事です。

そうしたユーザーが増えたことに対応して、Stravaでは2020年に「ローカルレジェンド」機能をローンチ。これはセグメントの速さではなく、頻度を競うもので、速くなくてもコツコツと続けていればリーダーになれるというもの。これはいい! と自転車乗りには有名な近所の激坂のローカルレジェンドを目指して走るようになりました。

最大勾配28%の子の権現は、地元のルートであってもゲストがいるときにしか登りたくない魔の山。それでも、ローカルレジェンドになるんだ、という強い意志を持つと一人でも足が向くのだから不思議です(そして毎回登坂の最中に後悔する)。過去90日間のセグメントの通過回数で競われるローカルレジェンド。短期間で3回走り、よしこれでリーダーだ。こんな激坂を何度も走る物好きはいまいとタカをくくっていたら……。

Strava
過去90日間で303人がこの激坂を走った

このセグメントは過去90日間で338人が走ったとのこと。
1回走ったのは303人のアスリート。
2回走ったのは26人。
3回走ったのは自分と他4人。
4回走ったのは2人。
5回走ったのは1人。

Strava
私は3回で4位タイ。他に4人も同じだけ走っていたという事実を知る

そしてローカルレジェンドは……
10回!

Strava
圧巻の10回。断トツで、走りこまれている。脱帽。

上には上がいる、という結果になったわけですが、それでも、もう少し走りたいと思えたのでした。とりあえずあと3回走れば単独2位には躍り出るわけで……。そうするとローカルレジェンドも射程に入るかもしれない……完全にStravaの思う壺、走るモチベーションになってしまいました。

とはいえ、あの激坂を短期間に10回も走っているリーダーにはただ脱帽。強烈な難易度であることを自身も走って知っているからこそ、純粋な賛辞を送りたくなります。実際にはお会いしたことのない方ですが、同じ道を走る仲間。そんな風にも、ローカルレジェンドを通じて思えるのでした。

羽田さんの距離に対する時間、ローカルレジェンドの速度に対する頻度。一般的なトレーニングやパフォーマンスの指標をずらすことによって、「たくさん走らなきゃいけない」「速くなきゃいけない」という固定観念を転換できることに、そしてそれにStravaは有用なツールであることに改めて気づかされました。

例えばローカルレジェンドは基本機能は無料でも利用できますが、全体リーダーボードを閲覧できるのはサブスクリプション会員のみ。有料へと踏み切るための心理的な障壁は低くありませんが、収録で羽田さんがしてくれた面白い計算はその壁を軽々と乗り越えるものでした。サブスクは年間6300円。これを12ケ月で割り、さらに30日で割ると1日あたりの使用料は16円! それで毎日の走るモチベーションや、リーダー入れ替わりの喜怒哀楽を楽しめるのであれば、正直安いと思えるのでした。数字のマジック!

Strava
1日16円なら……ねぇ?

昨年からビジネスモデルをサブスクリプションへと舵を切ったStravaにとって、ユーザーをモチベートし続けるためのさらなる機能拡充は必須。それと同時に、そのデータへのタッチポイントであるUI/UX方面での改善も進行中とのこと。先日はモバイルアプリのメニュー画面を刷新しています。StravaのCPXO(最高製品・エクスペリエンス責任者)には元GoProでのキャリアをもつメーガン・ラフィー氏がチームに加わったとのことで、早くもその成果が現れているようです。

シリアスなトレーニングでなくてもいい。毎回のログ確認を楽しんだり、頻度を競ったり、あるいは誰が同じエリアを走っているのかをチェックしたり。Stravaが提供しているデータは、確かに次に動くためのモチベーションになっているのでした。

Strava "Workout With Data" 〜データを使ってワークアウト〜
データは怖くない、難しくないを合言葉にStrava上のあらゆるデータ活用術をフィーチャー。5月中は、Strava Japan Clubにて週1〜2回ペースでストーリーを更新予定。

  1.データでランニングをマネージする
  2.アクティビティ分析で見る自分の総合点