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山とヨガを愛する大和田園子さん。アウトドアメーカーのkarrimor(カリマー)で働く傍ら、ヨガインストラクターとして登山とヨガを同時に行う「山ヨガ」を中心に活動している。働くことと動くこと、家族との時間、どのように両立しているのか、園子さんのワーク・スポーツ・ライフバランスを訊いた。

山頂でのヨガは、スタジオでのヨガとは違う格別な気持ち良さがあった。とある日、陣馬山でハイキングをする園子さんに同行し、山ヨガも体験させていただいた。

山頂で靴下を脱ぎ、裸足で大地を踏みしめる。足の裏全体で山のエネルギーを感じられる、不思議な感覚だ。地面に座り深呼吸をすると、空気が美味しい。澄んだ空気の中、園子さんの穏やかな声がすっと身体に入ってくる。登山で疲れた身体をほぐしていると、視線の先には富士山が見える。幸運にもその日は雲一つない快晴。穏やかな太陽の温かさと、爽やかな風のバランスが心地よい。

今回は、そんな山ヨガを教える園子さんに、働くこと、暮らすこと、ヨガや山との関係を伺った。

陣馬山の山頂からは富士山がくっきり。澄んだ山頂の空気もあって、自然と笑みがこぼれる山ヨガ。

パタゴニアで山に魅了される

onyourmark(以下OYM):はじめに、山との出合いについて教えて下さい。

大和田園子さん:学生の時に南米でバックパッカーの旅をしていて、パタゴニア地方で初めて山を登ったのがきっかけで、山が好きになりました。帰国後も山への熱は冷めず、アウトドアブランドで販売員をしていたこともあります。

OYM:プライベートでは山とどのように関わっているのでしょうか?

園子:アウトドアブランドの販売員をしていた時は、同僚と頻繁に山に行っていましたが、今は月に2、3回、家族と行くことが多いですね。

OYM:初めての登山がパタゴニアだったとのことですが、海外の山に行ったりもするんですか?

園子:パタゴニアの山はダイナミックでとても綺麗で好きですし、ヨガでインドに行く時も山に登ったりします。ただやっぱり日本の山が好きなんです。名峰だけでなく、近くの里山を歩くのも結構好きで、日本の山って奥深いなと思います。それぞれの山にストーリーがあったり、神様がいたり、知れば知るほどその山のことを好きになりますね。四季折々で、表情も見え方もたくさんあって、歩いててすごくおもしろいです。

渡印、そしてヨガインストラクターの道へ

OYM:ヨガを始めたきっかけは何だったのでしょうか?

園子:アーユルヴェーダの講座がきっかけでした。元々ヨガのインストラクターになりたいと思っていた訳ではないんです。アーユルヴェーダの中に、身体と心を整える健康法があり、それがヨガであることを知ってインドへヨガの勉強をしに行きました。アシュラムで3ヶ月間勉強をしましたが、そこでヨガにハマってしまいましたね。

OYM:帰国後、どのようにヨガインストラクターのキャリアをスタートしましたか?

園子:その時は他の仕事があったので、インストラクターとしての活動は少ししかできませんでした。次第にヨガを本格的にやりたいという気持ちが強くなり、ヨガインストラクターとして独立しました。しかし、結婚など将来のことを考えたときに、経済的な安定も必要だと思い、ヨガインストラクターと並行してフルタイムでの仕事も始めました。

OYM:フルタイムで働くことに加えてヨガインストラクターもするのは、すごく大変なように見受けられますが……

園子:その時はクラスもたくさん持っていたので、ワーク・ライフバランスが上手く取れず、身体も辛かったですね。趣味の山登りの時間も、山ヨガのイベント以外ではなかなか確保できなかったです。

OYM:その後、現在の働き方に行き着いたとのことですが……その前に山ヨガを始めたきっかけを聞かせてください。

ヨガのイメージは、自然の中でするものだった

園子:パタゴニア地方で私が初めて登山をした時に、フィッツロイ山が見える湖のほとりでヨガをする家族を見ました。家族3人でヘッドスタンドや瞑想をしていて。その時はヨガのことをよく知らず、後からそれがヨガだったと気付きました。インドでヨガの勉強をして、自然の中でヨガをすることの気持ち良さを知り、日本に帰ったらあの時の家族のように、山の中でヨガを教えたいと思ったんです。

インドの先生に言われた「園子、空気が通って快適な自然の中でヨガをしなさい」という言葉が印象に残っています。身体も自然の一部なので、山の中、自然の中でヨガをしたらエネルギーも身体中に巡ってきて、すごくいいのでは、と思っています。空気も美味しいですしね。

OYM:園子さんが山ヨガを始めたのは、とても自然な流れだったんですね。どんなタイミングで山ヨガを教え始めたのでしょうか?

園子:クラスを持っていたヨガスタジオでのイベントとして開催するところから始めました。朝、集合して山に登り始め、山頂でヨガ、昼食をとって下山する、といったスケジュールが多いですね。

山ヨガでは山頂まで来た疲れを癒すよう、足をほぐすポーズを多く入れるようにしているという。

現在の園子さんのワーク・スポーツ・ライフバランス

OYM:様々な働き方を経て、今はどのように働いたり、体を動かしているのでしょうか?

園子:平日は、アウトドアブランドのkarimmorで正社員として働いていて、週に2回ほど平日の朝にヨガのレッスンをしています。今は、家庭での時間も大切にしています。

OYM:karimmorではどんな業務を担当されていますか?

園子:現在は広告宣伝部でメールマガジンやSNSを通した情報発信をしています。山のウェアを試着したり、山に行く機会も多いので、常に山を身近に感じられます。

OYM:会社員とヨガインストラクターをどのように両立していますか?

園子:ヨガのクラスは平日の朝に担当しています。旦那さんと家事を分担しながら、子育てはやりくりしています。土日は仕事もヨガのレッスンもなく、家族の時間も確保することができています。山に行ったり、キャンプや釣りをしたり。旦那さんもアウトドアが好きなので、外に行くことが多いですね。

OYM:とはいえ、会社員、ヨガインストラクター、家庭を並行するのは、大変だと察します。続けられるポイントはありますか?

園子:ヨガは細々とでもいいので、忙しい時期も合間を縫って続けていたいと思っています。やはり、ヨガを教えることが好きなんです。人生の中で自分のやりたいことをたくさんできる時期と、家庭があるなどして、できない時期があると思いますが、1度辞めてしまうと、再開するのが難しくなってしまうし、身体も心も変わってしまうと思うので、今は無理のない範囲でやっています。

また会社以外にもいろいろな世界を持つことは、視野が広がるので必要だと思っています。そういう意味でも、ヨガの仕事が役に立っています。

ブルックシャ・アーサナ(木のポーズ)

OYM:ヨガを教えるときに、意識していることはありますか?

園子:特に都会で働く人は、心や身体の不調を持っていることが多いと思うんです。ヨガでポーズを練習することにより身体が快適な状態になると、心も快適な状態になり整っていきます。役割や考え感情など変化をするものではなく、自分自身の内側にある変化をしない存在をよく見て欲しいというのを、クラスでもよく話してますね。

OYM:ご自身のライフステージの変化につれて、ヨガを教える際の変化もありますか?

園子:フリーのヨガインストラクターとして、ヨガだけで生計を立てていた時もありましたが、今は家庭での役割が増えて、会社員としての自分もいて。いろんな役割を持ったことで、その役割を持つ人の気持ちを理解できるようになったと思います。

これからの園子さんの働き方、暮らし方について

園子:今は家族で過ごす時間が、自分の中でウェイトが高いので、その時間を有意義に過ごすために、どのように暮らしたらいいのかな、快適な生き方ってなんだろう、と模索してます。コロナで、パートナーも、私自身もリモートワークになるなど働き方も変わってきているので、地方移住など快適なところで暮らすことも考えてみたり。いずれは、農業をしてみたり、生き方自体を変えてみたり、いろんな可能性を考えています。何をするにしても、やはり山の近くというのは外せないですね。

取材を終えて

丁寧で包み込まれるような優しい口調の中に、凛とした芯が垣間見える。様々な経験をして、心地よい働き方、暮らし方を模索してきた園子さんは、しっかりとした眼差しで常に未来を見つめているようだった。

会社員、ヨガインストラクター、母として様々な役割を持つことは、大変なことも多いだろう。しかし、園子さんは役割が増えたからこそ生まれるシナジーや見える景色を楽しんでいるように見えた。

リモートワークが一般化するなど、働き方の多様性が急速に広がりつつある中、副業や移住、ワーケーションなど、暮らすことと働くことにおける選択肢も増えている。何か新しいことを始めてみたい人、働くこと、身体を動かすことのバランスの取り方を模索している人にとって、園子さんのストーリーにヒントが隠れていたのではないだろうか。

園子さんのローカルスポット:北岳
旦那さんと出会った北岳が園子さんにとって一番大切な場所。どんな山に登った時も、北岳がどこにあるのか、つい探してしまうそう。

結婚指輪には、北岳の絵が描かれている。

大和田園子
東京都生まれ。ヨガインストラクター、山ヨガインストラクター。山好き。アウトドアブランド、karrimorで働きながらヨガインストラクターとしての活動も行う。一児の母。
Instagram:@sonokoyoga