fbpx
アスリート、デザイナー、エンジニアが三位一体となって創り出すSALOMON(サロモン)のハイパフォーマンスプロダクトレーベル「S/LAB(エスラボ)」から、ロードランニングモデルとして待望のレース向けシューズ「S/LAB PHANTASM(エスラボ ファンタズム)」が登場。開発に携わったトレイルランニングの世界的第一人者、キリアン・ジョルネの声や、インプレッションを交えてその魅力を紐解きます。

トレイルランニングとウィンタースポーツの分野で世界をリードするSALOMONが、近年力を入れているロードランニングカテゴリー。「足の自然な動き」をテーマにしたPREDICTや、ランニングの強度によって“A”、“B”、“C”を履き分けるSONICシリーズを開発することで、着々と知見を積み重ねてきました。そして今回、満を持してロードランニングレース向けシューズ、S/LAB PHANTASMをローンチ。アウトドアスポーツの雄が新風を巻き起こせるのか、その新作シューズをチェックします。

S-LAB PHANTASMの4つの特徴

片足200g切りを実現した超軽量のアッパー

その真っ赤なルックスに目を奪われつつS/LAB PHANTASMに触れると、まず感じるのはその軽さです。トゥ周りをシングルレイヤーにするシューズはよく目にしますが、S/LAB PHANTASMは強度を要するシューホール周りやヒールカップ、ソールとの接合部には補強を加えつつ、全面がシングルレイヤーで仕上げられています。FETHER LIGHT UPPER(フェザーライトアッパー)と名付けられた極薄の素材を採用することで片足200gを切る(27cmで199g)ことに成功しました。

また、スタンダードなランニングシューズは50程度のパーツを要しますが、S/LAB PHANTASMは20余りに抑えられているとのこと。ミニマムかつスマートなデザイン性を追求するブランドの「らしさ」を感じます。

軽さと安定性を両立させたオーソライトメモリーフォーム

これだけ薄く、軽いと安定性に問題はないのでしょうか。SALOMONはサポートアスリートの脚の動きのモニタリング解析から、足首のブレ防止にORTHOLITE MEMORY FORM(オーソライトメモリーフォーム)を配置。エンボス加工したような凸部分がそれに当たりますが、かかと側と両サイドを離している点からも、軽さを求め、余分を取り除いたことが伺えます。

推進力を生む2つのソールテクノロジー

軽さと安定性が高いとはいえ、それがスピードアップに直結するわけではありません。厚底ブームに火がついてからというもの、「エナジーリターン」がホットワードであり続けていますが、各社それぞれ異なるテクノロジーで差別化を図っています。S/LAB PHANTASMは薄底ですが、「エナジーリターン」に関してどのようなテクノロジーを施しているのでしょうか。

S/LAB PHANTASMは着地時の衝撃を次の一歩へスムースに転換する、応答性に優れたENERGY SURGE MIDSOLE(エナジーサージミッドソール)とともに、かかととつま先を反りあがらせたロッキンチェア構造で、中足部からつま先にかけてのスムーズな体重移動を促すREVERSE CAMBER PROFILE(リバースキャンバープロファイル)をセットにしました。

これまでにも、厚底シューズでロッキンチェアの構造を活かしたシューズは他社から多様に発表されていますが、薄底のシューズ、かつレース向けのシューズではこれまで目にしたことがありません。エネルギーリターンとともに疲労軽減の面で他社の厚底シューズと比較した場合に、どういった違いが生まれるのか、興味をそそられます。

アウトドアで培ったテクノロジーをロードランニングへ導入

ここまで紹介した軽さ、安定性、推進力を下支えするのは、SALOMONがアウトドアフィールドで信頼を得ているアウトソール「CONTA GRIP(コンタグリップ)」です。アウトドアシューズと違い、極めてフラットなアウトソールですが、確かなグリップ力で地面をしっかり捉え、安定性を担保してくれるのは間違いないでしょう。ENERGY SURGE MIDSOLE、REVERSE CAMBER PROFILEとのコンビネーションでランニングエコノミーを高めるのに一役買ってくれそうです。

「足の機能性を最大限引き出す」SALOMONの哲学

今回の分析&インプレッションにあたり、開発責任者のブレント・ジェームス氏に独自インタビューも敢行。厚底ブームに流されない理由についても語ってくれました。

「SALOMONのランニングシューズのコンセプトは、ランナーの足の機能性を最大限に引き出すことにあります。足は骨、筋肉、腱、神経といった様々な組織によって複雑に構成されています。また、自然にバランスを保ち、衝撃と振動を減衰させると同時に、『走る』という推進力を生みだすメカニズムを持っています。それらの足の動きや反応を妨げることは、運動効率とパフォーマンスを低減させますし、足下の重量が増してしまえば運動効率とエネルギー消費効率を低減させることが研究で明らかになっています。

そのためS/LAB PHANTASMはより軽く、走る際の足の動きをなるべく邪魔しないように最低限のパーツで構成しました。素材も非常に軽量で耐久性があり、素材自体が汗や雨などの水分を吸収しないため、シューズ性能を常時キープできます。

S/LAB PHANTASMは近年のロードランニング市場に見られる厚底シューズではありません。厚底シューズは、路面と足の間に距離を取ることで振動や衝撃の影響を少なくするところに狙いがあると思います。一方で、先述した足本来のメカニズムによる推進力を損なう恐れがあります。力を路面に伝える能力が低下する可能性が強いのです。

最近ではカーボンプレートや樹脂製のプレートを組み合わせることで、人工的に推進力を生み出す、もしくは増幅する構造が生み出されていますが、サロモンは人間の足本来のメカニズムによって得られる推進力を最大限引き出すことを重視しています。自然な推進力をリセットさせてしまう厚さは必要としていません。よって過度な厚底は採用しないのです」

キリアン・ジョルネが求めたスペック

PHANTASMの開発には、先日400mトラックでの24時間走世界記録にチャレンジするプロジェクト「PHANTASM 24」に参加したキリアン・ジョルネも携わっています。悪天候のため途中棄権する残念な結果に終わりましたが、キリアンは「このシューズでなら世界記録を出せる」と自信を持っていました。S/LAB PHANTASMに彼が求めた要素とは?

「開発から完成まで2年かかりました。現物を手にした率直な感想は、超軽量かつクッション性が高いということ。私のフィールドは主に山岳エリアなのでトレイルランニングシューズを履くことが多いですが、ロードランニングシューズに比べると硬いものです。ロードランニングシューズを作るのであれば、快適と感じるクッションが必要だと思いました。なぜなら同じ動作を繰り返すランニングは、使う筋肉を分散できるトレイルランニングと違い、関節や筋肉に与えるインパクトが大きいためです。

軽く、柔らかく、反応が良いこと。そのイメージを形にするべく、試作を重ねて生まれたのがS/LAB PHANTASMです。

私はトレーニングをすべて記録しています。それは物事が良い方向に進んでいるときと、悪い方向に進みそうなときを理解することが重要と考えているからです。進歩があったか、なぜ怪我をしたのか、体型の変化もそうです。同じようにシューズから得られる感触にも敏感である必要があります。ソールが薄く、反応が良いことは大事なことだと考えています」

編集部インプレッション

足入れしてのファーストインプレッションはソールの硬さでした。最大20mmのソール以上に、足裏と地面が近い感覚です。インソールのアウトラインがせり上がっているのも特徴で、土踏まずのあたりは特に強く、アーチサポートを意識しているかのよう。アッパーはフィットするというよりも、足の形に沿わせるかのように、ストレスを感じません。

走りだすと、ロッカー構造を強く感じることはなく、自分の力を伝えて走らなくてはいけないことに気づきます。軽いため、足の回転はスムーズですが、ゆっくりとしたジョグではシューズ自体が推進力を生んでくれません。「これがレースシューズ?」と率直に感じましたが、走り方をアレンジし反応を試していくうちに、S/LAB PHANTASMの魅力に触れることができました。

良い感覚で走るためのポイントは

・ソールを「転がす」のではなく「弓のようにしならせる」イメージで着地から蹴り出しの瞬間的動作を行うこと
・同時に、その短い接地時間の間に足裏をインソール上で目一杯ストレッチ(屈曲)させるイメージを持つこと
・膝、足首を柔軟に使うこと

この3点を意識することでより高いエネルギーリターンを得られ、無理なくスピードを上げて走ることができました。ルナサンダルやベアフットシューズでトレーニングしている人たち、ブレント・ジェームス氏が話す「足本来のメカニズム」を上手に使える人にフィットするシューズと言えるでしょう。

あくまで玄人向け、ランニングエコノミーが高い人向けの印象ですが、シューズの力に過度に頼らず、自分の身体のポテンシャルを高めたい人にはぜひ試してみてほしいシューズですね。

S/LAB PHANTASM
価格:¥22,000(税込)
サイズ:23cm〜28.5cm(UNISEX)
カラー:RACING RED(1色展開)
重量:199g(27cm)
ドロップ:6mm(ヒール20mm/トゥ14mm)
発売日:2月17日(水)
※スーパースポーツゼビオ東京御茶ノ水本店(03-3233-1861)のみ2月10日(水)から先行して発売中

SALOMONオフィシャルサイト:www.salomon.com/ja-jp