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ランナーに起こりやすいケガについて学ぶ「OYM ランニング障害学習講座」。第2回目は、膝のお皿の下に痛みが生じるジャンパー膝(膝蓋靭帯炎:しつがいじんたいえん)について。その原因と治療法を学んでみよう。

ジャンパー膝(膝蓋靱帯炎)とは?

階段を降りる時、しゃがむ時、ダッシュをする時などに膝のお皿の下あたりに痛みが出る場合、整形外科では「ジャンパー膝」(膝蓋靭帯炎)と診断されます。

ジャンパー膝という呼び名からもわかるように、ランニングに限らず、バスケットボールやバレーボールなどジャンプやダッシュを伴うスポーツでも多く見られる障害で、部活動などで頻繁にスポーツを行う10〜20代に多く見られますが、実はランニング初心者も発症しやすい疾患です。

痛みが生じる原因は?

痛みの原因は2つあります。1つ目が、ジャンプやダッシュといった膝関節の屈伸動作を頻繁に繰り返すことで、膝のお皿(膝蓋骨:しつがいこつ)のすぐ下に位置する膝蓋腱(しつがいけん)にストレスがかかり、腱繊維が損傷するケース。ただし初心者ランナーの場合、この炎症性の痛みが生じることは少なく、2つ目の太もも前側の大腿四頭筋(だいたいしとうきん)のこわばりが原因であることが多いです。

大腿四頭筋がこわばり筋肉が収縮すると、膝蓋骨や膝蓋腱が引っ張られて膝に負荷がかかります。大腿四頭筋がこわばる要因として考えられるのは、地面からの着地衝撃。着地衝撃を吸収するには足の指先、付け根、かかとと、足裏全体を使うことが望ましいとされていますが、無意識に走るとかかとからの着地になり、地面からの突き上げが大きくなります。大腿四頭筋は着地の衝撃を受け止める役割を果たしているため、負荷がかかりやすくなるのです。

さらに初心者ランナーは体幹の上下動作が大きくなるため、カラダの重みと地面からの着地衝撃で膝へのダメージが蓄積されやすいのも特徴です。

ジャンパー膝の治療法

膝蓋腱が損傷する「炎症性」の痛みと、大腿四頭筋がこわばる「筋痛性」では治療法が異なります。オーバーユースが原因である「炎症性」の場合は、アイシングや湿布などの処置を施しながら安静にするのが一般的。症状が重症化している場合は炎症を抑える薬を投与することもありますが、早い段階で休養すれば回復も早くなります。

「筋痛性」の場合は大腿四頭筋のストレッチや温熱療法など、積極的に治療を施していきます。症状にもよりますが、膝蓋腱の深層にある膝蓋下脂肪体(しつがいかしぼうたい)という脂肪組織を緩めるとよくなることがあります。ただしここはセルフケアが難しい場所なので、痛みが長期化しているようでしたら、専門の治療院に足を運ぶことをお勧めします。

ジャンパー膝の予防法

予防のポイントは、大腿四頭筋をこわばらせないこと。そのためにはまず、ストレッチ、セルフマッサージ、フォームローラーなどを使ったケアで大腿四頭筋の柔軟性を高めておく必要があります。

筋肉をニュートラルな状態にした上でもうひとつ取り組みたいのが、膝蓋骨まわりの筋力強化とランニングフォームの改善です。筋力強化としては、スクワットやイラストのように足を前後に開く姿勢をとるランジのような下半身の筋力を鍛える自重トレーニングを。ランニングフォームは、腰を低い位置に保って体幹の上下運動を少なくすること。そして膝や足首の関節を使うのではなく、股関節で走るように意識すると膝への負荷が軽減されます。とはいえ、ランニングフォームを自分でチェックするのは難しいもの。専門のトレーナーやコーチの指導を受けて、少しずつ改善していきましょう。

重症化しにくい疾患ではありますが、階段を降りる時や小走りをした時などちょっとした日常動作で違和感が出るのはストレスになりますよね。早めに対処して、気持ちよくランニングを楽しみましょう!

監修者:古川ぶんと

監修者:古川ぶんと

東京・杉並区にあるランニング障害専門『ソフィア整骨院』院長。2012年の東京マラソンでフルマラソンデビュー。以来ランニングに魅了され、現在までにハーフマラソン、ウルトラマラソン含め30以上のレースを完走。経験を生かした診療で、多くのランナーから支持を得ている。自己ベストは3時間5分。