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年末恒例となった、Strava(ストラバ)による、ビッグデータを解析した一年間のスポーツトレンド。全世界の、そして日本のスポーツの潮流がわかる興味深いプレゼンテーションだが、今年データとなって可視化されたのは、やはり新型コロナウイルスの感染拡大に伴う社会情勢の変化だった。

Stravaのユーザーは、今年全世界で7300万人を突破。月間の平均で200万人ずつ伸びているというから、サービスの伸長をフィットネス人口の増加が後押ししているのだろう。発表されたいくつもの注目すべきデータトレンドから、onyourmark読者の関心にマッチしそうなものをピックアップし、考察を加えていきたい。

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2020年、最も増加したアクティビティは「ウォーキング」

Stravaではランとライド(自転車)が二大ポピュラースポーツとのことだが、2020年に最も実践者が増えたアクティビティはウォーキングで、その増加率は世界で実に3倍となった。また、日本でも約2倍の増加が認められたとのこと。その他のスポーツも軒並み倍増している中で、ウォーキングは増え方が際立っているとデータは語る。

<考察>
何と言っても、「最も手間と準備のかからない」アクティビティというところだろう。家を出れば、そこからすぐに始められる(これは道具さえ揃っていれば、ランも自転車も同じだけれど)。また、ロックダウン下の諸外国でも、家の近所に限っての散歩(犬の散歩含む)が認められたところもあったため、できる外出アクティビティがウォーキングだった、という側面もありそうだ。いずれにせよ、心身の健康が危機に瀕したタイミングで、人間にとって根源的な運動である「歩くこと」が伸長したことは興味深い。人は動かずにはいられない生き物だということか。

ランナーはサイクリングを始めた サイクリストは自転車を降りない

2020年は、自分の専門スポーツに留まらず、新しいスポーツにチャレンジする好機にもなった模様。世界的な第一波と捉えられる4〜6月の間に、サイクリストとランナーが初めてアップロードしたアクティビティ種目を調べてみると、サイクリストはウォーキングが8.5%、ランニングが5.6%という結果なのに対し、ランナーはサイクリングが11.2%、ウォーキングが10.8%という高い数値を示した。

<考察>
ランナーのみなさんの、新しいことへチャレンジしようとする柔軟な姿勢が如実にデータに出たのではないだろうか。機材スポーツであるサイクリングは必然的に敷居が高くなるが、それでも手軽なウォーキングよりも高い数値が出ていることに、ランナーが身体を動かすことへ高い関心を持っていることがわかる。また、自転車通勤を始めたランナーの増加もこの数値に一役買っていそうだ。すでに自転車通勤をしているサイクリストに比べ、ランナー自転車通勤のために乗り始めた側面は無視できない。また、日常的にランニングをやっている人は、学生時代に運動部だったりして、何らかの形で身体を動かすことに抵抗がない人たちかもしれない。ウォーキングも10.8%増と、動くことに対してとことん前向きな人たちだ。

一方のサイクリストだが、これは実感ベースでも自転車乗りは自転車以外まで手を伸ばさない、という印象がある。学生時代にばりばり運動部だったというよりは、社会人になってから自転車を始めてハマるパターンが財力的な面でもあり、またスポーツというより「自転車」というジャンルとして実践している人が多いのではないだろうか。ツーリングや旅などには、パフォーマンス向上のスポーツというニュアンスは薄い。個人的にはサイクリストは優れた心肺機能と、新しい景色を見たいという好奇心が旺盛な人たちなのだから、ぜひ新しいスポーツジャンルにも挑戦してみて欲しい、とは思う。

屋外アクティビティ量に、各国の政策が見える

パンデミックと一口に言っても、各国の対応は様々だった。罰金ありの厳格な外出制限を敷いた国もあれば、比較的外出に寛容だった国もあった。3〜4月のStravaデータはそれをはっきりと示している。スペイン、イタリア、フランスといった西ヨーロッパの国ではこの時期の屋外アクティビティが最大で67%減少。一方でアメリカやドイツといった国ではそれぞれ28%、45%増。イギリスとアイルランドに至っては、82%増という驚異的な増加率を示している。日本は14%増。

<考察>
改めて、各国の政策がかくも違うものかを知らせてくれるデータ。3〜4月に減少した国々も、その直後に激増していることから、人間は本質的に動くことを希求する生き物だということがうかがえる。しかし、これだけ極端に各国間の差が出ると、つくづくグローバルなプロスポーツが成立しない年だったなと思わされる。仮に東京五輪が開催されていたとしても、全ての国の選手がトップコンディションで臨むことなど、とうていあり得なかっただろう。

女性・若年層がたくさん動いた年になった

河野さんとバイクロアを走ったCF01。コースに合わせてグラベルロード仕様になっていました

全世界的に2020年は、前年に比べて人々のアクティビティ数が増えた一年になった。全体では13.3%の増加。昨年100回のアクティビティをしていた人が113回に増えていると考えれば、かなりの増加だろう。その中でもとりわけ、女性の18〜29歳層は45.2%増と圧倒的な伸び率を記録。女性は全年代層で20%以上増加しており、女性がたくさんアクティビティを行った年となった。また、男性の若年層(18〜29歳)も27.3%増と高い数値を示しているところは見逃せない。若い世代がより動いた年になったと言えるだろう。

一方で日本は……
世界と異なる傾向を示したのが日本。世界では最もボリュームを増やした29歳以下の男女は、日本ではむしろ減少。その他の世代は増えてはいるが、世界の同年代と比較すると微増に留まっている。最も高い伸び率を見せたのは40歳台の女性の9.5%増。

<考察>
全世界で各年代の女性の運動率が上昇したことは素晴らしい変化だと言える。その理由までは突き詰められなかったが、これが2020年という奇異な1年がゆえの結果であるなら、パンデミックがもたらしたポジティブな側面だ。一方で、日本では若年層が減少している点が気がかり。特に若年層女性の少なさは世界的な傾向と逆になっている点は看過できない。

ランニング フルマラソンを一人で走る

ワールドマラソンメジャーズを始め多くのマラソン大会が中止になったことを受け、Stravaにシェアされた42.195kmのランニングアクティビティ数も減少。しかし、そのソロ率は昨年の14%から44%まで上昇した。大会はなくとも、42.195kmを走ろうという意欲を持って一人で走り切ったランナーが多かったことがわかる。

<考察>
onyourmark読者の中には、該当する人も多いのでは? 2020年、ひとりで42.195km走ったランナーに、賛辞を。

サイクリング エベレスティングのブーム

フルマラソンの42.195kmのような明確な数字目標がないサイクリングだが、『エベレスティング』のブームがこれに該当した。エベレストの標高にあたる獲得標高8848mを一度で走り切るというチャレンジで、コアなサイクリストが楽しむカルト的な遊びであったものが、レースのないプロ選手まで参加するブームに。各国の足自慢のサイクリストがタイムを競うとともに、難関チャレンジとして2020年夏の目標に据えた人も多かった。ちなみに、Strava上の達成データでは、男性平均で16時間47分40秒、女性平均で17時間13分48秒。

<考察>
4〜6月ごろまでサイクリングの世界で話題となったエベレスティング。達成の難易度はかなり高く、いくつものチャレンジ宣言と失敗とがSNSを賑わせた。世界では現役プロ・元プロ選手・ハイアマチュアが入り乱れての熾烈な記録更新合戦となり盛り上がりを見せた。肉体的・地形的な要求が大きく、また北半球が夏に突入してプロレースが再開されると次第に熱狂は落ち着いていった。これが来年以降も春先の挑戦行事として定着するかは注目したい。なお、現在の世界記録はアメリカのショーン・ガードナーが記録した6時間59分38秒。先の10月の達成ということで、どうやらエヴェレスティングに情熱を傾ける人々はまだまだいるということだ。

最もアクティブだった5月17日、最も静かだった1月14日

日本では、最も多くアクティビティが記録されたのは5月17日(日)だった。ちなみにランニングに限っても5月17日で、サイクリングは8月2日(日)だった。一方で、最もアクティビティの少なかったのは1月14日(火)。成人の日の3連休明けの平日だ。ランニングに限っては、4月13日(月)だったとのこと。

<考察>
5月17日は、緊急事態宣言期間の最終盤の日曜日。ずっと外出を控えていた人たちが運動を求めたタイミングだったのだろう。一方で4月13日(月)に最もランニングが少なかったのは、緊急事態宣言直後の雨の日ということで、多くの人たちが緊張感をもって家に篭っていたということだろう。改めて4月上旬の異様な状況が思い出されるとともに、私たちの今の生活は言葉を選ばずに言えば「緩んで」きていると感じられる。2021年は、成人の日明けの「最もアクティビティが少ないデー」にぜひとも体を動かして、この不名誉な1日を救ってあげようではないか。

数値でみる2020年まとめ

Strava全体統計
アスリート総数  7,300万人
今年のアクティビティ数 11億1650万1051
投稿された写真の数 3億8674万8853枚

ランニング合計(世界)
合計距離 30億km
合計標高 288億m
平均ランニング距離 6.3km
 男性 6.6km
 女性 5.5km
平均ランニング時間 38分48秒
 男性 39分32秒
 女性 37分33秒

ランニング合計(日本)
合計距離 4930万km
合計標高 5.04億m
平均ランニング距離 6.9km
 男性 7.0km
 女性 6.1km
平均ランニング時間 40分38秒
 男性 40分46秒
 女性 40分54秒

サイクリング合計(世界)
合計距離 130億km
合計標高 1219億m
平均ランニング距離 25.4km
 男性 26.7km
 女性 19.8km
平均ランニング時間 1時間15分49秒
 男性 1時間17分23秒
 女性 1時間8分11秒

サイクリング合計(日本)
合計距離 2.3億km
合計標高 21億m
平均ランニング距離 21.6km
 男性 22km
 女性 19.4km
平均ランニング時間 56分44秒
 男性 57分01秒
 女性 59分08秒