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「筋肉」の働きに注目し、トップアスリートのパフォーマンス向上からシニア層の健康維持まで指導するコンディショニングトレーナーの有吉与志恵さん。コンディショニングを通じた彼女の持論は、「筋肉が変わると人生が変わる」。その真意とは?

「脳が命令した身体の動きを、実際に動かすのが筋肉です。姿勢や表情は、脳が感じたことを筋肉が表現しているから表に出てくる。私たちの身体の表現者が筋肉なんです」

そう語るのは、コンディショニングトレーナーの有吉与志恵さんだ。「筋肉は人生の履歴書」とは彼女の口癖だ。

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写真:伊藤泰寛(講談社写真部)

リセットとアクティブ、2つのコンディショニング

日本コンディショニング協会の会長として、プロアスリートから一般シニア層まで、コンディショニングを通じた健康と身体づくりを提唱する有吉さん。対象者の筋肉の状態に応じて、2種類のコンディショニングを適宜行なっていくのが有吉流だ。

ひとつめは、“リセットコンディショニング”。これは筋肉をちゃんと動く状態へとリセットする、いわばコンディショニングのウォームアップ。筋肉は通常、ワンペアで関節を支えている。この筋肉は一方が伸び、一方が縮むことで動きを生み出すが、使用する筋肉が片方に偏ることで、使われない方は硬くなってしまう。一方が硬くなった筋肉は、関節の歪み、ひいては姿勢の歪みを引き起こしてしまう。

例えば足の筋肉であれば、使用していない部位を手で動かすことによって、使い方を思い出させてやる。有吉さんはこれを「筋肉の再教育」と呼んでいる。筋肉を元ある状態へ戻し、次に見るアクティブコンディショニングへとつなげていくものだ。

一方の“アクティブコンディショニング”は、「超低強度の筋トレ」だという。私たちの体には使えていない筋肉がたくさん存在しているが、それをひとつひとつトレーニングしていくのだ。

「例えば、私たちはいつも肘を曲げてPCを打ちますが、肘を曲げる筋肉というのは、腕の前側にあります。ここはいつも酷使されていますが、逆に腕の後ろ側の筋肉というのはほとんど日常で使われていません。この使われていない筋肉をトレーニングすることがアクティブコンディショニングです」

使われていない筋肉は、寂しがり

内もも、お腹、振袖(二の腕)といった部位は、脂肪がつきやすいところであるが、これも筋肉が使われていないことが原因なのだという。

「使われていない筋肉は寂しがりなんです。だから、脂肪というお友達を連れてきちゃうんです。極めて低い負荷で、筋肉に『ちゃんと動きなさい』と教えてあげれば、しなやかな体は案外簡単に手に入りますよ」

これを聞くだけでも、使われていない筋肉を使ってあげたくなるではないか。

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健康寿命を伸ばすコンディショニング

体型をシェイプできるというのはコンディショニングの嬉しい作用だ。しかしより大きく見てみると、コンディショニングは健康寿命を伸ばすことにつながっている。そして、「筋肉はいくつになってもトレーニングできる」と有吉さんは保証する。

「身体の動かし方にはひとそれぞれの癖がありますが、それを分析して、コンディショニングしていくことでバランスが良くなります。歳を重ねるほどに差が出るというのは、主宰してもう15年になるジムで高齢の方が歳を重ねても美しい姿勢でいるのを見るとよく思います」。

筋肉は人生の履歴書、とはまさにこのことか。

「リセット・アクティブを繰り替えしていくと日常の姿勢が変わってくるんです。みなさんには座るとき背もたれを使わないで、とお伝えしていますが、筋肉のバランスが取れてくると背もたれがなくてもしっかりと姿勢を保てるようになります。自分が楽な姿勢と、正しい姿勢は違います。日々の姿勢からよい姿勢に、と指導していますが、椅子の前1/3に浅く腰掛けて足を閉じて座っていられるなら、理想的ですね」(TOP絵参照)。

ランナーには伝えたいことが山ほどあります

アスリートのパフォーマンス向上から、健康的な生活を目指す一般シニア層までコンディショニングでケアしてきた有吉さん。興味深いことに、一般の高齢者とトップアスリートに同じプログラムを処方することがあるのだとか。

「両者はできない動きが一緒なんです。一流のアスリートは、とにかく特定の筋肉を激しく使うので消耗が激しい。また、競技特性によって身体の動かし方にクセが出るんです。結果、70過ぎのお爺ちゃんと同じコンディショニングが必要になることがあるんです」

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日本でもランニング人口が増えて久しいが、多くのランナーを見てきた有吉さんはランナーに伝えたいことが山ほどある、と言う。とくに故障を抱えるランナーの多さは気がかりだ。

「走ることで幸せになりたいのよね、あなたたち! って問い詰めたくなります(笑) ランニングブームの時には女子ランナー向けのイベントなども開きましたが、毎月フルマラソンに出る、とか走るのをやめると太ってしまう、という強迫観念にかられているランナーを見るとそう思います。彼女たちが高齢者になったときに、股関節はどうなっちゃうんだろうって。

距離を踏むのは確かに楽しいことです。エンドルフィンが出てわかりにくくなっているけど、とはいえ痛いのを我慢して走るような状況は避けるべきです。一般人が疲労骨折するなんて事態は、やっぱりちょっとおかしいですよね。

筋肉の調子をいつも自分で確かめて動く。それがいい人生につながると私は思います」。

コンディショニングで日本を元気に!

本連載では、各界で活躍されるキーパーソンの言葉から人生100年時代を生きるポジティブな加齢、プロダクティブ・エイジングのあり方を探っている。有吉さんのコンディショニングにはそのヒントがたくさん詰まっているように見える。

筋肉は人生の履歴書だ。アスリートの筋肉には競技特性ゆえの発達と問題が刻まれているし、高齢者のふだんの姿勢には長い人生を見ることができる。コンディショニングはそれを明らかにして、よりバランスよく、より健康な方向へと導いてくれる。

「筋肉が変わると人生が変わる」というのが有吉さんの持論だ。そして、「筋肉はいくつになってもトレーニングできる」とも。誰もがトップアスリートにはなれるわけではないが、誰でもコンディショニングで健やかに歳を重ねることはできる。

このコロナ禍だからこそ、その思いはさらに強くなった。

「今までは何か体に不調を感じたらすぐに病院に行けましたけど、このご時世で、病院はやっていなかったり逼迫していて気軽には行ける場所ではなくなってしまいました。痛くてもじっと自宅で安静にして耐えている人が増えているんです。だからひとりでも多くの方に、コンディショニングを届けたいと心底思います」

有吉与志恵

有吉与志恵

福岡県出身。一般社団法人日本コンディショニング協会 会長。中学・高校時代にスプリンターとして活躍、日本体育大学へ。在学中は故障に悩まされ、怪我のない運動を広めるべく指導者の道へ進む。運動指導者として30年以上のキャリアを積み、筋肉を鍛えるよりも整える事で、体調と体形を劇的に改善できる「コンディショニングメソッド」を確立。高齢者から現役アスリートまで、幅広い層へのセルフコンディショニング指導のほか、学校や企業、地方自治体向けの講演・講習会や指導者の育成にも情熱を注いでいる。
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「ココロとカラダがよろこぶ日曜日。」がテーマのJ-WAVE 『MAKE MY DAY』にて毎週日曜日 AM7:05-7:15にお届けしているヘルスケアプログラム。毎月ひとつのテーマに沿ったヘルスケア情報を、専門家のコメントでご紹介。2020年9月は、コンディショニングトレーナーの有吉与志恵さんを迎えてお届けしています。
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人生100年時代を迎え、より充実した人生を送るためLIFE IS LONG.をメッセージに掲げ、健康の維持に対し明確な科学的根拠を有する食品“ニュートラシューティカル”の提供を通じて、「生まれてから最後の日まで、歳を重ねることに前向きで自分らしい人生を全うできるプロダクティブ・エイジング」の実現を目指すヘルスケア・カンパニー。
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