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沢を登りながら行う渓流でのルアーフィッシング。ターゲットを釣り上げ、安全に川から上がるためには、川を読むことが求められる。渓流魚に詳しいアングラーの小林将大さんが見ているものを探る。

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大学時代はサケ・マスの研究に没頭していたという生粋の渓流魚好きアングラー、小林将大さん。3月のとある日の釣行に同行した。

「前日までに地図を見て、おおよその進むルートや渓流の高低差を想定しておきます。天候に関しては、釣りの当日だけでなく前日のものも確認して当日との気温差をチェック、水量が多いか少ないかというのも推測しておきます」。

現場に着いたら周囲の景色を確認してから川に入り、立てた予測のもと釣りを始める。

「周囲に緑が一切なく、まだまだ冬を引きずっているので、魚は流れの速い瀬ではなく、深場にいるだろうなと予測していました。釣り始めてすぐに一度、ちょっとだけ魚がルアーを追ったんですが、追い方を見ると勢いはない。水温が低く、まだ活発ではないと感じたので、ルアーは少し沈めて、ゆっくりと誘うようなかたちで展開していきました」。

本格的に釣り始め、30分もしないうちに見事にイワナを釣り上げた小林さん。イワナの身体からも、さまざまな情報が読み取れるという。

「背中に白い斑があり、体側に着色斑がある、分類学上的にはニッコウイワナなのですが、濃い橙色の斑が多く、おそらく秩父イワナと呼ばれるこの地域の固有種だと思われます。身体は少し細いので、まだ水温が低く、餌を積極的に追ってはいないのだろうなと思います。また川が全体的に白いのに対して、イワナは黒い。イワナは周囲に同化しようとするので、定位していた場所は、川底付近の暗いところ、岩陰、落ち葉が腐葉土のようになって底が黒くなっているところだろうなと考えられます」。

川を読んで魚を釣り、魚からまた川を知る。渓流釣りはかくも奥深いものなのだ。

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小林さんが釣り上げたイワナ。橙色の班が特徴の秩父イワナと呼ばれる種だと思われる。

STUDY 01 気圧を意識する

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急な天候の変化、特に短時間で大雨が降るような場合は、増水、土砂崩れの危険性が増す。想定していたルートを辿れなくなる、来た道を引き返せなくなる可能性もあるため、渓流釣りでは、気圧の変化にも気をつける必要がある。

「夕立が多い夏場は、気圧が急激に下がるとアラームで知らせてくれる腕時計を身に着けることが多いですね。夕立といっても山の中では14時ぐらいに降ることが多いので、なるべく午前中で釣りを終えるようにしていますし、気圧が下がったら調子よく釣れていたとしても下山の準備を整えるようにしています」。

STUDY 02 植物を見る

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場所によって異なるが多くの渓流で釣りが解禁になるのは3月から。魚がアクティブになり、渓流でのルアーフィッシングが最も盛り上がるのは夏場のこと。渓流に暖かい季節が到来しているかを教えてくれるのが、植物だ。

「たとえば、山の麓では咲いていた桜が、山に入るとまだ蕾だったりすることがあります。植物を見ると麓との季節のギャップがわかるんです。一般的な天気予報は、麓のものなので、そのギャップから渓流の季節を推測することはありますね。また、フキノトウが出ていれば春がやってきているとわかりますし、山中の景色がまだ冬を引きずっているようなら、魚はまだおとなしく、緩い流れのところをよたよたと泳いでいる感じかなと予測できます」。

川の周囲の景色も釣り人にさまざまなことを教えてくれる。魚を釣るためには、魚以外にも目を向ける必要があるのだ。

STUDY 03 増水のサイン

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川でのアクティビティや、川近くでのキャンプを楽しむ場合、気をつけなくてはならないのが、川の増水。渓流釣りの際、増水の可能性には常に気を配っていると小林さんは言う。

「山の中の天候は崩れやすいですし、たとえ自分がいる場所で降っていなくても、上流で雨が降れば、川の水は増水します。増水すると、さっきまで渡れた場所が渡れなくなるということが起きるので、注意が必要です。事前に天気予報を確認して備えておくことももちろん重要なのですが、僕は基本的に川に入るのは膝下の高さまでと決めています。仮に少し増水したとしても膝下が膝上になる程度であれば、大きな問題にはならないからです」。

雨が降っていなければ増水しないというわけでもない。雪解けのあるシーズンは、天気が良かったとしても増水に気をつける必要がある。

「春はまだまだ山に雪が残っている場合があります。午後、気温の上昇とともに雪代によって川が増水することも珍しくありません。雪代による増水は、川の水温を下げますし、白濁することがあり、朝は見えていた川底が見えなくなるなんてことも起こります。川底が見えない状況は、たとえ水深が浅かったとしても川を渡る行為自体が危険になります。雪代がありそうだと予想できる場合は、沢をジグザグに登るようなことは避け、常に戻るルートを想定しながら釣りをしていますね」。

※2020/4/15発売「mark13号 “FACING THE CLIMATE CHANGE 生きるためのアウトドア”」転載記事

小林将大(トラウトフィッシングアドバイザー)
1986年生まれ。東京都出身。DAIWA フィールドスタッフ(ネイティブトラウト)。キャスティング八王子店スタッフ。子どもの頃にイワナやヤマメの美しさに魅了される。北里大学海洋生命科学部時代は、サケ・マスの研究に明け暮れた。渓流でのルアーフィッシングが中心。

MONTHLY ISSUE Aug. 扉の向こうはアウトドア - OUTDOORNEARYOU