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オンラインにおけるライブ or アーカイブ問題

Juri:「おかげさまで2,700万円近く集まりました。クラウドファンディングの応援コメントを見ると涙が出てきます。『毎朝母と受けています! 母は10数年ぶりに運動を再開しました』とか。ヨガのいいところは、マット1枚あればできるということ。これから辛い時代になっていくかもしれない中で、身体を毎日動かすことでマインドがヘルシーになっていくということ。それを伝えるのが、私の役目です。

オンラインスタジオをオープンすることでより多くの人たちにその価値を提供でき、もっと多くの人たちに喜んでもらえるのならいいなと思っています」

OYM:オンラインスタジオのコンテンツはどのようなものになる予定ですか?

Juri:「ローンチの際には撮り溜めた映像を出すのと、ライブを毎日やるのが目標です」。

OYM:インスタライブでのセッションがアーカイブされるのは嬉しい反面、ライブじゃないと見返してまで自分でやらないな、とも思いました。

Juri:「そうなんですよ! でも『セッションを残して欲しい』というリクエストも多いんです。『音楽流さなくていいのでアーカイブしてください』って。とはいえ、オンラインでもあの一緒にやっているときの感じが、いいですよね」。

OYM:オンラインでのレッスンもライブでやるのか、それともアーカイブされたものを見るのか、というところで感じ方も変わってきそうですね。

更科:「自分が参加する側なら、もう終わったものには参加しようとは思わないですよね。セッションって生き物じゃないですか」。

賢吾:「ライブがいいのは間違いないです。オンラインでアーカイブを残す・残さない、というのは顧客満足度という点ではひとつフックになると思います。が、基本的にはあまり見ないですね。やっぱりオンラインでもライブでコミュニケーションが取りたいし、レギュラーレッスンはライブが面白い。一方で、哲学の話や解剖学、抑えなきゃいけないポイントのようなライブのエネルギー、グルーブ感を作らなくてもいいものは教材ビデオのように、アーカイブにしていくことで需要を満たせるとも考えています。みんながライブでやりたがるのは、グルーブを感じたいということじゃないでしょうか」

後進の育成について

OYM:オンラインやスタジオなど選択肢も多数ある中でヨガ人口も増えていくと、ヨガを教える側の役割も大きく、また変化していくと思います。後進を育てることについて、どうお考えでしょうか。

Juri:「スタジオ立ち上げにあたって、イグナイトヨガのインストラクターになるためには、私の5日間のワークショップを必須にしました。スタジオとして、同じメソッドで教えていくことを大切にしたいんです。今回のインスタライブをやったインストラクターは私を含めて3人だったのですが、私の時だけ視聴者が多いということはありませんでした。他のインストラクターの時でも1500人の方が参加してくださりました。ちゃんとした形でインストラクターを育成できれば、ちゃんと伝わるなと感じているところです。

後進の育成というところでは、来年はIGNITEとして、ティーチャートレーニングを開催する予定です。やろうと思ったきっかけは、色んなスタイルのヨガがある中で、自分らしいスタイルを伝えられるインストラクターを育てていきたいと思ったから。みんなにそれぞれのスタイルがありその良さがあると思いますが、ヨガは最初に受けるクラス、最初にどんな体験をしたかで今後の感じ方も変わってきちゃうので、ちゃんとヨガの良さを伝えられる人を増やしたいなと」。

『教えること』がマインドと身体にいい

賢吾:「これからヨガの裾野がさらに広がっていくと思います。いま、スポーツクラブも入れて日本のヨガ人口は700万人。数年前までは、英語が始めたい習い事の第一位だったんですが、2年くらい前にヨガがとって変わったんですね。ヨガ人口が増え続けているのに。ヨガを習いたい人は潜在的にまだまだいるということです。ありがたいことです。

今は副業としてヨガを捉えている人もいますよね。ヨガって教えることができちゃうんです。高い専門性を持つスタイルある先生がいる一方で、小さいコミュニティで友達の間で教える、ということもあるわけです。もちろん教わってやるのはいいんですが、ヨガがマインドや身体にいいのって実は『教えること』なんです。

人前で話をして、それが受容されるという体験、体を動かし終わった後に『先生、気持ちよかったです』って言われるのは、自分の発言や行動が肯定されたということです。それが脳の働き的にもいい作用をもたらす。多くの人がヨガを教えたいと思うのはそこにあると思います。自分たちも教える側としてワークショップをやってみて思うのですが、終わった後はアドレナリンが出て眠れなくなるほどですから。こういう体験はこれから重要になってくるのではないかと。

さっきも言いましたが、これからは社会的に役割の無い人が増えていく。ベーシックインカムがどうなるかはわかりませんけど、社会的に今までのように詰めて仕事をしなくてもいい方向になっていくのではないかと考えています。そうなってくると、自分の健康を保つためにヨガをやるのはもちろん、週に一回ぐらいヨガを『教える』という体験は、お金を稼げる稼げない以上の意味が出てくるのではないでしょうか。小さなコミュニティの中で、自分の名前を冠して『〇〇ヨガ』みたいにやられている方も多いと思いますが、これからの社会の中でこれはすごく重要になってくると思います。

なので、自分でワークショップをやるときにも生徒さんに喋らせるようにしています。最初は話すのが苦手な人も多いですが、その体験自体に意味があるわけです。SNSでもそうですよね。みんな自分のメディアを持って発言するようになった「いいね!」はそれが受容された証です。

ただ、それが過度になるとSNS疲れ、なんてことにもなりますけど。ヨガの場合は実際に動いて汗をかいて、人と比べないという哲学的にポジティブなものがあります。これからヨガを教えたい、という人が増えていくと思いますが、本質を見失わず、伝統や歴史に敬意を持ちながら現代的な表現をしていく方向性になるでしょう。

この有哉くんとJuriちゃんが示している通りですよね。ヨガの本質や熱いものを知りながら今の時代に合う表現している。自分が習う側ならこういう先生のもとで習いたいし、この世代は面白い先生が多いですよ。そこから下の世代をどう育てていくかは、自分たちの役割ですね。

有哉くん、アシュタンガは指導者の育成というのはシステム的にできないの?」

アシュタンガヨガのブレなさ

更科:「できないんです。アシュタンガは、師匠から覚えてきたものをアレンジもしちゃいけない。そのまま伝えなきゃいけない。それがいいところだということはわかっています。だから、自分のアシスタントや弟子もインドに連れて行かないといけない。そういうシンプルなところがあります」。

OYM:世界的なヨガの流行と、そこから多くのバリエーションが派生していますが、そういった流れに関してはどう感じてますか?

更科:「アシュタンガは世間で広がっているヨガと結構違うと思います。日本の専門誌でも、アシュタンガヨガとそれ以外、という構成になっていたりします。その意味で、周りのヨガがどういうものかということは僕自身わかっていないんです。逆に、アシュタンガヨガに入っていくと、そこに夢中になって他が見えないくらい集中するということでもあります。

僕もそうでしたが、そこまで入っていったのは、やるべきことがわかりやすいというアシュタンガヨガのシステマチックさにあります。アシュタンガじゃないヨガの場合、賢吾くんのように自分でシークエンスを組み立てられないと、練習するときにそれが合っているのか合っていないのか、混乱しちゃうと思います。でもアシュタンガはやることが決まっています。迷いがない。それ以外の哲学的な部分や規律もはっきりしているので、本を読んだり日常生活で実践できるわかりやすさがあります」。

まとめ:これからのヨガ

OYM:これからのみなさんのヨガについて、考えていることを教えてください。

Juri:「オンラインだからこそスタジオへ行くハードルが下がり、ヨガの良さが伝わったと思います。スタジオでヨガをするのが恥ずかしかった男性も、奥様と一緒に家でやっていますというように、ヨガをやっている人は増えたと感じています。ヨガの先生が増えるということはヨガを受ける人も増やさないといけない。いままで『ヨガはちょっと』『身体が硬いから』『ヨガって女性がやるものでしょ』と言っていた人たちが、オンラインで自分のペースでヨガをする環境を整えることで、人口を増やしていければと。先生が増えるよりも早いペースでヨガ人口を増やすことができれば、それは業界的にもいいし、社会のマインド的にもいいのではないかと思います。この自粛期間に感じたヨガのパワーを、引き続きもっともっと広めていきたいです」。

更科:「僕はやっぱり会いたいですね(笑)。元も子もないことを言うわけではないですが、そこを見据えて良い準備をしておきたい。ちゃんと人と面と面で向かい合って会える日が来たときに、それでヨガのフェスティバルができたときにはすごい盛り上がりをみせると思います。それまでに何をしておくかというの大事だと思います」。

賢吾:「ひと昔前は『ヨガの先生はこうでないといけない』という考えが強かったと思います。僕もアシュタンガをやり始めたときに、ケン・ハラクマ先生と一緒に食事をする機会がありまして。そこで出てきたコロッケに牛肉が入っていることを知ると、先生は食べなかった。そのやりとりを目にして、次の日から僕、ベジタリアンになりましたからね(笑)。続きませんでしたけど。

いまの状況の中で、みんなストレスをケアするツールを探していますよね。山の中を歩くとか。でも都会に住んでいる人はなかなかできない。ヨガをするか、ランをするのか? そんな選択肢に入るぐらいにヨガに触れる機会は増えていると思います。

さっきのいきなりベジタリアンになった、という話もそうですけど、自分のライフスタイルにヨガを定着させるのに、10年ぐらいかかるという気がしています。食事なども含めて。いきなりベジタリアンは、自分がうまくアジャストできなかったということだと思います。一時期はメディテーションに傾倒していて、毎日1時間座るとか、共同生活をしながら1週間会話をしないヴィパッサナー瞑想に行ったりもしましたけど、今メディテーションが続いてるかというとそうでもなくて……。

そうしていろいろやってきた中での自分の着地地点としては、僕はヨガの行者というより、ヨガのカルチャーが好きなんだなということでした。東京のヨガのカルチャーが好きで、どんな先生がいるのかを知って、いろんなレッスンを受けながら自分の役割や練習の仕方を見つけてきたという感じです。最初はみんな、いろいろ落ち着かないことはあると思いますけど、時間をかけて馴染ませていけば自分のヨガが見つかるかと思います。

いまヨガの間口を広げる努力をみんながしてくれていて、そこからストイックにやりたい人は有哉くんのところに行くとか、フィジカル的なことだけでなくマインド的なところを学びたい人は哲学の先生につくとか、選択肢がある。だからそれぞれが掘り下げていって、ヨガを深めていってもらえればいいなと」。

Juri Edwards (じゅり・えどわーず)

Juri Edwards (じゅり・えどわーず)

東京都生まれ。高校在学中にアメリカの高校へ転校。カリフォルニア在住中にヨガと出会い、その後移住したハワイでインストラクターとしての活動をスタート。2015年にアスレチックアパレルブランド、ルルレモンの日本立ち上げを任され帰国。2019年4月、独立を機に、念願であった自身のスタジオ「 IGNITE YOGA STUDIO」を原宿にオープン。オンラインスタジオコンテンツ充実のため募った クラウドファンディングでは、目標金額の約900%となる2,600万円超を達成。
@jurikooo

野村賢吾(のむら・けんご)

野村賢吾(のむら・けんご)

ヨガインストラクター、鍼灸師、トラックメーカー
Quiet time / Yoga Sequence Design ディレクター
スケートボードカルチャーの影響を受けながら過ごしたサンフランシスコで怪我をきっかけにヨガと出会う。『ヨガと音楽で心に平和を』がコンセプトのブランドQuiet timeディレクター。楽曲制作も行いヨガ用のアルバム『Quiet beat meditation』をリリース。医療系の専門学校で解剖生理学、東洋医療、鍼灸学を学び、専門機関での解剖実習や臨床経験を生かした安全で効果的なヨガシークエンスが学べる『Yoga Sequence Desing』監修。
quiet-time.jp/about
@kengo_quiet

更科有哉(さらしな・ゆうや)

更科有哉(さらしな・ゆうや)

1977年に生まれ、北海道札幌市で育つ。インド・マイソール KPJAYI にてSharath Joisに師事。その高い技術と集中力から生み出されるAsana(ポーズ)は正に肉体のArtと呼ぶに相応しく、世界最高峰の巨匠 マリオ・テスティノ氏の撮影に同行。ファッション誌 VOGUE・2015年には同氏の写真集『 Sir 』にも掲載される。2009年から2017年まで7度に渡る、車での日本全国縦断 Yogaの旅《 INTO THE MIND TOUR supported by patagonia 》を敢行、大成功を収める。2010年 Sharath 氏より正式指導者資格(Authorization)を与えられ、2011年 Authorization Level 2を与えられる。2017年には宝島社から『 男のヨガ 』を発刊。Ashtanga Yogaで得た、インスピレーションやエネルギーをART活動に注ぎ、『 YUYA SARASHINA YOGA EXHIBITION 』を東京 丸の内で開催。写真や映像、芸術、内側と外側を旅することに重きを置く。2014年 Best of Yogi受賞。by Yoga Journal Japan
18年『 情熱大陸 』に生徒・指導者と出演し、YOGAを始めるきっかけや、入口を広げている。
mosh.jp/yuyasarashina/home
@yuya67

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