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外出自粛が要請されたこの春は、ヨガ業界にも大きな変化をもたらした。第一線で活動する人気ヨガ講師3名に、オンラインレッスンの進展、リアルプレイスとしてのヨガスタジオの意義、ヨガがこれから日本社会で果たす役割など思うところを語り合ってもらった。

ヨガのオンライン化が一気に進んだ

onyourmark(以下:OYM)外出自粛を受けて、ヨガ界隈が一気にオンライン化した印象があります。Juriさんはその中でも、インスタライブでのセッションで連日1000人を超える参加者を集めるなど、積極的な活動ぶりが伺えました。

Juri Edwards(以下:Juri)「ビデオに撮って教えたり、オンラインでヨガクラスを持つことについてもともとは賛成派ではありませんでした。しかしスタジオ(イグナイト ヨガ)をクローズすることになり、何かアクションを起こさないと会員さんが離れてしまう。それで一番クイックにできることがインスタライブでした。私たちがスジタオで一番大切にしているのが『ヨガを習慣づける』ことです。そのために毎日同じ時間、毎朝8:00にやることにしました。

会員さんにヨガを続けてもらいたい、という気持ちだったので、やり始めたときにはこんなに多くの人に見てもらえるとは思いもしなかったです。最初の1週間でフィードバックや感謝の声をたくさんいただきました。今だからこそヨガに救われる、という人が大勢いるのだから、途切れさせてはいけない。正直なところ、そこでオンラインという方法を選ばざるを得なかったという感じです」。

野村賢吾(以下:賢吾)「海外のメディアで世界の状況を追っていたのもあり、日本が自粛期間に入る前から(更科)有哉くんやJuriに『これ家から出れなくなるね』と連絡していました。ヨガのインストラクターとしてもう16〜17年やっていて、昨年は法人化もしました。もう10年以上週末に地方でワークショップをやるという生活が続いていて、この何年かは働き過ぎていると感じていた。2018年のお正月かな? Juriに今年の目標を聞かれたときに、『もうそろそろ労働時間を減らして収益を最大化したい』、と答えたくらいです(笑)。

それで昨年の夏にはオンライン化に向けて、オンデマンドのコンテンツを作りを始めていました。撮影や音楽に時間がかかりましたが、リリースがこのコロナのタイミングと重なりました。3月4月にはヨガ業界がオンラインレッスンへと移行していきましたが、予め録画した高いクオリティのコンテンツをオンデマンド対応でリリースできたのは、状況に対してアジャストできたと感じています。

こないだ有哉くんとも話をしましたが、オンラインのレッスンは今後増えることはあっても減ることはない、と。逆に今までリアルでやっていたイベントなどは、数ヶ月も前からの準備もありますし開催は難しくなっていくと感じています。この数ヶ月は、自分のオンラインコンテンツの準備を進めるとともに、いろんな人のヨガレッスンをオンラインで受けていました。全国でリアルレッスンの割合が減る中で、どうオンラインでレッスンしていくのかを考えていました。どうやって伝えていくのが良いのだろうと」。

アシュタンガとオンラインの親和性

OYM:更科さんはアシュタンガヨガを専門にされていますが、自粛期間にオンラインとどう向き合いましたか?

更科有哉(以下:更科)「僕がやっているアシュタンガヨガは、毎朝みんなで顔を合わせて、先生が触りながらそれぞれの練習を指導する(マイソールクラス)、ということを基本にしていますが、それができなくなりました。ただアシュタンガヨガにはもうひとつ、レッドクラスという方法があります。これは先生がカウントをして、それぞれが動いていくというやり方です。アシュタンガヨガはシークエンスが決まっているので、このレッドクラスがすごくオンラインとフィットしたんです。なのでオンラインでの参加やセッションも行いました

6月に入ってからは少しずつ自由になってきて、今は僕も自分の先生のところに通い始めました。5:45からの朝の早い時間組とその練習後に来る遅い組と分けて時間の間隔を開けるようにしています。先生はマスク着用の上、できるだけ触らないように、など工夫がされています。それでも朝だけで40人が練習しています。

賢吾くんには先週、『これからはオンラインが主流になる』と言われたけど、今、僕はそれを受け入れられないところもあって。アシュタンガヨガをなんとかしないといけないと考えています。

ただ、『オンラインだからいいところ』もなんとなくつかめてきました。僕の場合は、オンラインのクラスは20人くらいまでにしています。画面で一度に表示できる人数でないと、どうしてもみんなを平等に見ることができず、僕がやっていることは意味が薄れちゃうので。その人数の制約など考えたりしつつやっています。

6月に入ってもオンラインのクラスは続けていますが、受講数は1/4くらいまで減りました。先週はonyourmarkの松田編集長も参加してくれましたね(笑)。人数が減ったことで、オンライン上の指導自体は『密』になっていると言えるかもしれません。収益という意味でオンラインは厳しいですが、自分の役割であるアシュタンガヨガを普及するための手段として続けていきたいと考えています」。

賢吾:「僕はオンラインに可能性があると感じています。条件が制限されている環境だからこそ革新的に伸びていく部分があると思う。僕もいろんな方のレッスンをオンラインで受けてみましたが、ガイドが下手な人だと途中で退出したいなと思うこともありました(笑)。アシュタンガヨガも受けてみましたが、実際これは快適でした。アジャストこそ受けられないのですが、シークエンスが共有されているということで、スムーズにできました」。

スクリーンから離れるためのオンラインヨガ

賢吾:「僕はこれまで、日本のヨガ業界のトレンドの移り変わりを見てきました。昔はアシュタンガやシヴァナンダなどの伝統的なスタイルをやっている人が多かったですが、今はヨガの先生が自分でシークエンスを組んで提供するというスタイルが8割くらいでしょうか。かくいう自分自身もそのやり方です。僕の提供する『ヨガシークエンスデザイン』は、どうやってシークエンスを自分で組むか、ということに主眼を置いたオンラインレッスンです。その中では音声・オーディオに力を入れています。

仕事ではPCを使い、日常生活でスマホを見続けて、とみんないつもスクリーン越しにストレスにさらされているのに、ヨガをするときにも画面を見るのはどうだろうか、という思いがありました。画面を見ることから離れるのが必要だと思ったんです。自分がオーディオをメインにするのはそのためです。予め音楽やガイドをダウンロードしてもらって、『このポーズのあとにこのポーズがくるよ』とシークエンスも共有しておく。そうするとオンラインだけどなるべく画面を見ないで練習ができる、練習を自立させるというのがコンセプトです。

エクササイズやフィットネスという側面で見ると、ランニングとか筋トレ、ジム通いというのは、自分でやり方を覚えれば自立していくんですね。一方でヨガは、自宅で一人で練習するという意味では自立が難しい。何が難しいかというと、アシュタンガのようにシークエンスが決まっていればできますが、シークエンスが決まっていないヨガの場合は、自分でシークエンスを組むということにすごく技術や経験が必要になるということです。

『ヨガシークエンスデザイン』では、自分でどうシークエンスを組むか、ということに特化して、自宅でも画面を見る回数を減らして、練習を自立させる、ということに重きをおいています。自分が今までやってきたことと、今の時代のオンラインで提供できるサービスというところで、これが着地点だと考えています。

更科:「そうなってくると、参加する方には先生も多そうですね」

賢吾:「そうですね。もちろん先生も多いので、先生向けのものもありますけど、一般の人でも自立した練習ができるようにするのが目的です。レッスン動画はyoutubeに数え切れないないほどありますけど、そこでは『このポーズをどうやってとるか』という議論、つまりアシュタンガならトリコナーサナで2本の指で親指をつかんでください、アイアンガーヨガならここにブロックを置いてください、みたいなポイントの話になるんですね。ひとつのポーズをどうとるかに終始しちゃう。僕は、ひとつのポーズのあとにどのポーズをとるか、という連続性を重視します」。

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Juri Edwards (じゅり・えどわーず)

Juri Edwards (じゅり・えどわーず)

東京都生まれ。高校在学中にアメリカの高校へ転校。カリフォルニア在住中にヨガと出会い、その後移住したハワイでインストラクターとしての活動をスタート。2015年にアスレチックアパレルブランド、ルルレモンの日本立ち上げを任され帰国。2019年4月、独立を機に、念願であった自身のスタジオ「 IGNITE YOGA STUDIO」を原宿にオープン。オンラインスタジオコンテンツ充実のため募った クラウドファンディングでは、目標金額の約900%となる2,600万円超を達成。
@jurikooo

野村賢吾(のむら・けんご)

野村賢吾(のむら・けんご)

ヨガインストラクター、鍼灸師、トラックメーカー
Quiet time / Yoga Sequence Design ディレクター
スケートボードカルチャーの影響を受けながら過ごしたサンフランシスコで怪我をきっかけにヨガと出会う。『ヨガと音楽で心に平和を』がコンセプトのブランドQuiet timeディレクター。楽曲制作も行いヨガ用のアルバム『Quiet beat meditation』をリリース。医療系の専門学校で解剖生理学、東洋医療、鍼灸学を学び、専門機関での解剖実習や臨床経験を生かした安全で効果的なヨガシークエンスが学べる『Yoga Sequence Desing』監修。
quiet-time.jp/about
@kengo_quiet

更科有哉(さらしな・ゆうや)

更科有哉(さらしな・ゆうや)

1977年に生まれ、北海道札幌市で育つ。インド・マイソール KPJAYI にてSharath Joisに師事。その高い技術と集中力から生み出されるAsana(ポーズ)は正に肉体のArtと呼ぶに相応しく、世界最高峰の巨匠 マリオ・テスティノ氏の撮影に同行。ファッション誌 VOGUE・2015年には同氏の写真集『 Sir 』にも掲載される。2009年から2017年まで7度に渡る、車での日本全国縦断 Yogaの旅《 INTO THE MIND TOUR supported by patagonia 》を敢行、大成功を収める。2010年 Sharath 氏より正式指導者資格(Authorization)を与えられ、2011年 Authorization Level 2を与えられる。2017年には宝島社から『 男のヨガ 』を発刊。Ashtanga Yogaで得た、インスピレーションやエネルギーをART活動に注ぎ、『 YUYA SARASHINA YOGA EXHIBITION 』を東京 丸の内で開催。写真や映像、芸術、内側と外側を旅することに重きを置く。2014年 Best of Yogi受賞。by Yoga Journal Japan
18年『 情熱大陸 』に生徒・指導者と出演し、YOGAを始めるきっかけや、入口を広げている。
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@yuya67

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