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編集部が実際に体験したものをリポートする「mark gear by onyourmark」。今回はHOKA ONE ONEのカーボンファイバープレート搭載モデルの新作、CARBON X-SPE。類を見ないクッションと履き心地で一躍人気ブランドとなった同ブランドの、本格アスリート向けシューズ、CARBON Xからのアップデートを紐解きます。

CARBON Xのアップデートモデルとしてこの6月に発売された CARBON X-SPE。昨年アメリカ・カリフォルニア州で開催された「Project CARBON X」でジム・ウォームズレイが着用し、50マイルラン二ング(約80km)の世界記録を樹立したシューズ。「HOKA ONE ONEのテクノロジーを集結させた最高傑作」CARBON Xから、どんなアップデートがなされたのか? 気になる進化を編集部・高橋がフィールドテスト、レポートします。

ブーティアッパーとヒールカップの補強の意味

デザイン、形状に関して、CARBON Xとの大きな違いは2つ。ヒールカップにモールド成型した補強パーツを使っていることと、CARBON Xでは履き口がシュータンタイプだったのに対し、CARBON X-SPEではブーティタイプへ。アッパーはシングルレイヤーのエンジニアードメッシュで変更はありませんが、つま先まで覆うタイプのブーティのため、2枚仕立てに見えるデザインです。

足のずれ、横ぶれをよりなくすために採用されたヒールカップの補強パーツ。
シームレスなフィット感が得られるように、シュータンタイプからブーティとアッパーをセットにした構造に。
CARBON Xではアッパーはエンジニアードメッシュ1枚だったのに対し、CARBON X-SPEではつま先まで包み込む薄いモノメッシュのブーティに、エンジニアードメッシュを重ねる設計に変更。

ソールスペックもCARBON Xからの変更はなく、ヒール32mm、フォアフット27mmのオフセット5mm。重量はヒールの補強パーツの影響からでしょう、片足で9g重くなっています(250g:27cm比)。

CARBON Xの大きな特徴は、ソールユニット内部に組み込まれたカーボンファイバープレートと、クッションがありながらスピードを追求できるようしたミッドソール“PROFLY X*”のセット、それにメタロッカーテクノロジー*を組み合わせることによって生まれる推進力でした。

CARBON X-SPEは、その特徴を生かしたうえで、走行の安定性から得られるエネルギーロスの回避、怪我の防止、こうしたところに焦点を当ててアップデートがなされたとのだろうと推察。では実際のところをチェックしていきましょう。

*PROFLY X = クッション性を高めるための程よい弾力と厚みを持ったヒール部分と、推進力を高めるためにある程度硬度を持たせた前足部によるコンビネーションソール。

*メタロッカーテクノロジー = スムーズな足運びを促すため、ドロップを最小限に、かかと部とつま先部を滑らかに削ぎ落とした独特の形状のことで、HOKA ONE ONEが独自に開発したミッドソールテクノロジー。ロッキンチェアーのようなローリング運動を導き、着地から蹴り出しまで自然で効率的な体重移動を実現する。

今回行なったフィールドテストは

・90分 jog
・120分 jog
・1000mインターバル×5本
・10k ペースラン

の4回。2回のジョグは距離・時間を長めに取り、ランニングフォームが崩れることなく走りきれるか、インターバル、ペース走ではスピードを出して走った時の安定性と脚の疲労感を確認が狙いです。

ソールユニットはCARBON Xと全く同じ仕様。フラットな底面が特徴的で、アウトソールからカーボンファイバープレートをチラリとのぞかせる。

エネルギーロスを減らし、よりロング向きに

実際に履いてみると、柔らかなタッチのブーティと、張りがありながら硬すぎず、柔軟性のあるエンジニアードメッシュのコンビが足になじむようにフィットします。スピードを出して走っても、シューズの中で足がずれ込むことがありません。特に足裏とインソールのフィットに心地よさを感じます。

走りの快適性を求めた結果、見つけた変更点なのでしょう。サイズを間違いさえしなければかなり良いフィット感が得られるはずです。足首周りもシュータンタイプだったCARBON Xに比べ、足首周りをホールドするようなデザインでフィット感をより強化しています。

普段であれば90分、120分と長い距離を走った場合、必ずと言っていいほど大腿四頭筋に疲労を感じ始めますが、走り終えてもまだまだ走れる感覚がありました。ストレスフリーの追求の結果、疲れが出始めるまでの耐久性を高めることに結びつけたものと思われます。ヒールカップの補強による影響を強く感じたわけではありませんが、さりげなく走行の安定性、エネルギーロスの抑制に寄与しているのでしょう。CARBON X以上にロングディスタンス向きのシューズと感じました。

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1〜2割のエネルギーをシューズに委ねる

1,000mインターバル、ペース走はより実戦を意識してのテスト。インターバルでは1km/3’45設定。ペース走はサブ3ペース(4’15/km)を目安に実施しました。

印象として、スピードを上げるほどにクッションが顔を出してきます。 EVO CARBON ROCKETのようにソールも薄く、反発力を強調したモデルとは違い、厚底ならではの柔らかさから、路面への接地時間が長くなる。カーボンが効いて反発は得られるものの、特徴(クッションと反発のバランスによる強度の変化)を掴まないと力任せになり、早めに疲れてしまいそうです。インターバルでは使いこなせず終いでした。

この教訓を生かしペース走ではランニングフォームを意識的にフォアフットに変更。よく言われる、身体の横軸で見た場合に足を真下に着地させること、また普段はミッドフットで着地していますが、それよりも少しフォアフット気味に着地すること(気持ちとしてはより後ろに)を意識。1〜2割の力をシューズのクッションと反発に委ねました。

この考えがフィットし、以降は終始リラックスして完遂。地面から得られるリターンを逃さず、走りに転換できました。おそらくですが、フルマラソンを2時間半以上で走るような、スピードが体に染み付いているランナー、スピードを出せるランニングフォームが身についているランナー(接地時間が短く、回転率を上げるのに慣れているランナー)にとっては、すぐに靴の特徴を掴んでフルマラソンやさらに短いレースでもチョイスできるシューズです。反面スピードに自信がないランナーにとっては、無理にスピードを出そうとすると空回りしてしまう可能性の方が高い。1〜2割、力を抜いて、その分を靴の力に委ねることをオススメします。

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走りを楽しくする安定性と快適性のセット

4回のテストから、CARBON X-SPEは、

・自分の未知の領域の距離へ挑む時に履きたいシューズ
・スピード志向というよりは距離を延ばしていく時のお守りのようなシューズ

というのが最終見解です。ブーティタイプの履きやすさ、フィット感と、このソールユニットによる安定性と快適性のセットはメンタル的に心地よい。エネルギーロスが確実に少ないため、距離への不安を確実に解消してくれるはずです。スピードを出すレース・トレーニングではコツを掴むことが最優先ですが、フォアフット、ミッドフット、リアフット、どの位置で着地しても、スムーズに次の一歩を押し出してくれるため、遅い速いに関係なく走っていて心地よいと感じるでしょう。

体感を大切にするHOKA ONE ONEらしい着眼点、細かな気配りがなされたシューズと感じました。すでにCARBON Xをトライしたことがある人にもぜひ履いてもらいたい一足です。

HOKA ONE ONE オフィシャルサイト www.hokaoneone.jp
CARBON X特設サイト www.hokaoneone.jp/carbon-x/