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ASICS(アシックス)が世界的にSTAY HOMEが叫ばれた4月1日から5月31日までの期間を対象に意識調査を実施。すでに運動を行なっている人はもちろん、この機会に身体を動かし始めた人たちはランニングやエクササイズにどんなメリットを見出したのか? 健康心理学者のインタビューとともにお届けする。

【調査概要】
・調査期間:2020年4月1日~5月31日
・調査対象:定期的にエクササイズを行っている世界12カ国の男女
・回答者数:14,000人
・調査方法:インターネット
※1週間に1回以上エクササイズを行っている18歳から64歳までの男女。地域は日本、中国、インド、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、ロシア、オーストラリア、ブラジル、イギリス、米国。回答者は1地域1,000人(イギリスおよび米国は2,000人)

STAY HOME以後、世界的に運動する人が増加

今回の調査結果によると、実に10人に8人(世界で81%、日本で84%)が、ランニングは頭をスッキリさせるのに重要な役割を果たしていると回答。また、3分の2(世界で67%、日本で41%)が、現在のような困難な状況において、問題に対処する際に、ランニングやエクササイズなどの運動が精神面を安定させるのに役立ったと答えている。

更に興味深いデータとして、定期的にエクササイズを実施していると回答した人の36%(世界で36%、日本で25%)が、STAY HOME以前より現在の方がより活発にエクササイズをしていることが分かった。

また、アシックスが提供しているフィットネス・トラッキング・アプリ「ASICS Runkeeper」のデータでは週に一度以上ランニングをする人が世界で62%増加(日本では118%増加)したことが判明。アプリ利用者においても、2020年4月の登録者数が昨年の同時期と比べて世界で252%増加(日本では373%増)し、月間アクティブユーザーは44%も増加(日本では63%増)。あらゆるレベルのランナーが、より頻繁に、より長い距離を走っていることも明らかにされた。

#RunToFeel意識調査データ

改めて“人は有事になると走る”のは何故なのだろうか?この結果を受けて、onyourmarkはサイエンスヘルプ(科学の研究を一般に説明すること)の第一人者として知られ、日本でも『スタンフォードのストレスを力に変える教科書(だいわ文庫)』『スタンフォード式 人生を変える運動の科学(大和書房)』などの書籍を刊行している、ケリー・マクゴニガル医師にインタビューを敢行。「ランニングがもたらすメリット」を主に話を聞いた。

ケリー医師がTED Talks(様々な分野に関する講演が無料で見れる動画サービス)で行なった講演「How to Make Stress Your Friend」。再生回数は2,300万回を超える。

「人間は本来運動を通じて、肉体と精神のつながりを強化するようにできている」

onyourmark(以下OYM):今回の調査結果を受けて率直にどのような印象を受けましたか?

Kelly McGonigal(以下Kelly):「人間は核心的欲求によって動く。つまり、こういった究極の事態にあっても本能的に自分自身が求めている行動をとるのだと、改めて感じました。言い換えれば今回のような緊急事態に陥るほど、より本能的な行動をとることが分かったと言えるかもしれません。

人間はいかなる時も、自ら次にどう行動するかを常に選択し、自分自身に対してコミットしていると感じていたい生き物なのです。同様に自由を愛しています。自由を感じることは、必然的に自分をコントロールすることに繋がり、自由な状況からどのような選択をするか本能的に想像を膨らませます。その自由が外部の出来事によって制約された場合、自由である感覚を維持するため、目的と未来への希望を維持するために行動することが証明されたと言えます」。

OYM:心理学の観点からランニングがもたらすメリットをどのように分析されますか?

Kelly:「ランニングがもたらす効果には、気分の向上、エネルギーレベルの向上、ストレスや不安の軽減などを実感することなどが挙げられます。メリットを理解するのに、速く走ったり、経験を積む必要はありません。 20分程度のジョギングをするだけで、どんなレベルのランナーでも、希望と勇気を生み出す神経の化学反応を起こすことができます。定期的な運動は脳の物理的な構造を変え、ストレスへの耐性を高めていきます。これが、人間らしくあることであり、ストレスを緩和することであり、生活を豊かにすることであり、助けになることであると、多くのランナーが言っています。このような感情を抱くということが、ランナーがランニングを続けている動機のひとつであることは間違いないでしょう。技術的な要素を必要とせず、手軽に人間らしさを維持できる。これからの時代は競技としてでは無い部分でランニングが注目されていくかもしれませんね。ランニングは誰にでもすぐにできることなのです」。

OYM:ストレスの軽減のお話がありましたが、具体的にランニングはどのようにストレスを緩和しているのでしょうか?

Kelly:「理由はいくつかありますが、最も重要な点として脳との相性があります。ランニング中は、エンドカンナビノイドの脳内レベルが上昇します。エンドカンナビノイドは、ストレスや心配事、不安を生み出す脳の領域の活動を抑制する作用があるのです。また、幸福感や個人的なパワーを高める効果もある。もうひとつ理由を挙げるならば、走る場所が関係しているといえるでしょう。屋外での運動は、自然(木、草、空、太陽や風、鳥の鳴き声、土の道など)に 触れる環境で行うと、心に独特の効果をもたらします。マインドフルネスの状態に向かう効果がある。新しい可能性を熟考するための自由な感覚を目覚めさせるのです。研究によると、屋外で運動した後、生活の中での何かしらの問題に対し、処理する能力、自信が高まっていることが証明されています。脳機能イメージングの研究では、屋外でのランニングは瞑想の効果と似ていて、平穏と幸福感を感じることが多いことも報告されています」。

OYM:「人は有事になると走る」と言われています。この点はどうお考えですか?今回もランニングをする人が世界的に急激に増えたわけですが、ランニングに限らず身体を動かすこととメンタルの安定の因果関係をあなたはどのように分析しますか?

Kelly:「まず、運動はストレスを管理するためにできる最も効果的な行動の1つであるということです。ランニングに限らずいかなるトレーニングも同じことが言えます。例えば運動をする日。それまでにストレスを溜め込んでいたのなら、運動によってそのストレスは少なからず解消されますし、負担は軽減されます。また“アクティブであること”は、ポジティブな感情とモチベーションを高めることをサポートします。人間は本来運動を通じて、肉体と精神のつながりを強化するようにできていますが、この点に関しては現代では軽視されてきたかもしれません。今回の事態によってそれが明るみになったわけですが、本来フィジカルとメンタルのバランスは運動によって保たれるようにできているのです。

ランニングに限った話をするならば、閉じ込められている、または行き詰まっていると感じるような、多くの人々が行動を制限された今回のようなケースにおいてランニングは、直接身体的、心理的な解放体験を提供します。走ると、文字通り、自分が選択した方向に向かって、人生を前進していると感じます。ランニングはまた、私たちの周りのストレス、孤立、24時間のニュースから心を逃す方法を私たちに与えます。人が走るとき、心は、心配事から離れ、可能性に向かって、よりポジティブな方向に向かう傾向があるとされています。今回のような事態でランニングを始めた人はこの点が大きいでしょう。走り終えると達成感とともに自分が再生したような感情を覚えるからです。今回の調査結果からも、私たちはランニングがもたらすメリットを再認識する時期にあるのかもしれません。

いずれにせよ身体を動かすことは人間としてごく普通のことなのです。“有事になると、人は人間らしさに気づく”。ランニングはその最も身近な運動といえるのではないでしょうか」。

今回の調査結果とケリー医師の分析は、適度な運動やランニングはフィジカル以上に、メンタルコンディションへ良い影響を及ぼすということを示している。“withコロナ”をきっかけにランニングは、タイムを縮めるという自分との闘いに魅了される人や、ダイエットやフィジカルコンディションを整えるために取り入れる人に加え、マインドフルネスを求めて走る人を増やしていきそうだ。

Kelly Mcgonigal(ケリー マクゴニガル)

Kelly Mcgonigal(ケリー マクゴニガル)

健康心理学者。スタンフォード 大学CCARE (Center for Compassion and Altruism Research and Education 思いやりと利他心の研究教育センター)講師。心理学と神経科学からの洞察を生かしたサイエンス・ヘルプ分野のパイオニア。多数の著書を執筆するベストセラー作家としての一面も。

【information】
アシックスは今回の意識調査から、世界中のランナーが継続的にエクササイズが行えるようなサポート型の取り組みを開始。「#RunToFeel」をキーワードに、特設サイトにて随時コンテンツを紹介する。

特設サイトURL:www.asics.com/jp/ja-jp/mk/run-to-feel