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生活様式の変化は「免疫」への関心を高めている。そこでキーとなるのは「腸」だという。腸内環境のスペシャリストでありスポーツドクターが説く、免疫力向上のための示唆に満ちた方策は、健やかな加齢まで射程に収めるものだった。

この春、多くの人たちがSTAY HOME、家に留まり日々を過ごした。猛威を振るう未知のウイルスや、変化を強いられた日常が人々の健康意識をかつてないほど高めている。とりわけ、「免疫」に対する関心はその筆頭だろう。

とはいえ、免疫力を上げる、と一口に言っても何をすればいいのだろうか。スポーツドクターにして順天堂大学医学部教授の小林弘幸さんは「腸内環境」と「自律神経」を整えることで、免疫力は向上すると断言する。

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お話を伺った小林弘幸順天堂大学医学部教授

免疫を司る細胞の7割が腸にいる

「免疫力には自律神経が重要な役割を果たします。免疫を司る細胞の7割が腸に存在していますからね。腸を鍛えれば、免疫力が上がるのは周知の事実です」

腸が免疫と密接に関わっているというのは少々意外な気がする。しかし腸が人体においてどんな役割を果たしているかを考えれば、それは文字通り腑に落ちる。小林教授は言う。

「どんなものを食べても、最初に腸から吸収されます。腸の状態が良ければ、いい栄養素をそのまま身体に取り込むことになりますし、逆に悪ければ、体内に毒素をため込むことになります」

腸は人体にとって、ある種のフィルターということだ。ゴミやホコリまみれのフィルター越しにエアコンの空気が出ていると知ったら、誰も深呼吸なんてしないだろう。見えない体内では、しかしそんなことが起こっている可能性があるのだ。

後述する「免疫力を上げる食事」も、腸内環境が整ってこそ効果が上がる。逆に言えば、腸内環境が悪ければどんなにいい栄養素を摂っても身体に吸収されないということだ。こんなにもったいないことはない。

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小林教授は「腸」の大切さを各種講演で伝え続けている

腸の働きを良くする自律神経

一方の自律神経は、この腸を働かせるのに大事な役割を果たしている。

「自律神経が整っていると、血流が良くなります。血流が良ければ、腸の働きが良くなるわけです」

血流の良さは、腸内に多数存在している免疫を司る細胞を活発にする。腸に最大限の仕事をしてもらうこと、それが免疫を上げるポイントだが、そのためにまずできることとして、小林教授は食事の時間にできる2つの方法を挙げる。

免疫力を上げる朝食と夕食の「摂り方」

「免疫を上げるということで一番簡単な方法は『起きてから1時間半以内にしっかりと朝食をとること』『寝る3時間前までに夕食を腹7分目で終えること』です。この2つを守れば、腸内環境が整って免疫力は上がります」

朝食をしっかりと食べることで、細胞内の時計遺伝子にスイッチが入り、身体が夜から朝に切り替わるのだとか。身体が目覚めるということは、腸をはじめとした各器官が動き始めるということだ。

食事の摂り方に気をつけるだけで免疫力が上がるとなれば、存外にお手軽で実践しない手はない。さらに食べるものにもこだわって、より免疫力を高めることができれば完璧だ。免疫力を上げる食品を、小林教授に尋ねてみた。

タンパク質とビタミンが免疫力を上げる

「免疫細胞の働きを高めるのに、一番重要なのはタンパク質です。不足すると、免疫力にいいと言われている他の食材を摂ってもうまく働かないことがある。豆腐、納豆、チーズ、鳥のムネ肉、豚肉、牛肉、魚類などで摂取したいですね。

免疫力向上でもうひとつ重要なのがビタミン。ビタミンCは免疫機能に関わる白血球の機能を高めたり、抵抗力を増す働きがある。パプリカ、ブロッコリー、キウイ、オレンジなどで摂ることができます。干し椎茸、イワシ、サーモン、牛乳に含まれるビタミンDは免疫バランスを整える作用のほか、骨を丈夫にしてくれます。ビタミンAは、鼻や喉の粘膜を保護・強化してくれます。食材としてはほうれん草、人参、カボチャ、うなぎ、レバー、銀だらといったものをお勧めしていますね」

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ベジタブル・ファースト

こうした食材の食べ方にも、免疫力を上げるポイントがある。先にみた食べる時間の2大原則に加え、「食べる順番」に意識を向けてみたい。

「ベジタブル・ファーストです。先に野菜を食べて、その後にメイン食材を食べること。血糖値の急な上昇を防ぎ、血管を傷つけなくて済みます。そうなると血流が豊富になり、免疫細胞が働けるというわけです」

よい栄養素をしっかりと身体に行き渡らせるためにも、ベジタブル・ファーストは常に意識したい。これも、毎日の暮らしの中で無理なくできることだ。

スポーツドクターが見る自律神経

小林教授は、日本体育協会公認スポーツドクターとしての顔も持つ。これまでにラグビー、サッカー、野球、ボクシング、フォーミュラ・ニッポンなど多岐にわたるスポーツの選手たちを診てきた。多くの選手に集中力や自律神経に関してのアドバイスを行う中で、腸内環境と自律神経を整えることがパフォーマンス向上につながることを見出した。

「パフォーマンスを上げるには、血流とその質を良くしないといけない。先ほどもお伝えしたように、血流に関しては自律神経、その質に関しては腸内環境がカギになります」

小林教授によると、腸内環境のよいアスリートは「回復が早い」のだとか。少しでもパフォーマンスを上げたいスポーツ愛好家にとっても、腸内環境を整えるメリットは大きそうだ。先に見た食事のタイミングと質に気をつけることで、2〜3ヶ月で腸は変わっていくという。

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「免疫力が落ちるので追い込んだ練習は控えるように」の実際

スポーツを楽しむonyourmark読者の中には、外出自粛期間に『追い込んだ練習は免疫を下げるので、控えるべき』という議論を目にした方も多いだろう。しかしそれは、平時は身体を壊してもいいので追い込もう、という意味にもとれる。肝心なことは、平時でも免疫を下げずに追い込めるかどうか、だ。それは可能なのだろうか?

「腸内環境さえ整っていれば、免疫を落とさず追い込むことは可能です。腸内環境と睡眠、そして体温を上げておくことが大事です」

健康でいることが、強度の高い運動を可能にする。そのためのアドバイスとして、小林教授は1日6〜7時間の規則正しい睡眠を挙げる。特に寝入りの90分が重要なので、寝る一時間前にはPCやスマホをオフに。そして体温を上げることで睡眠の質を高めること。夕食後に、熱すぎないお湯で半身浴をするのがお勧めとのこと。

「お風呂に入り、深部体温を上げることで血流が良くなります。私たちの体内に37兆個ある細胞に栄養素と酸素が行き渡り、免疫機能を持つ白血球を活発にします。お風呂は42℃では熱すぎです。39〜41℃で15〜20分の半身浴がオススメです。これにより深部体温を高いまま安定させることができるでしょう」

しっかりと質の高い睡眠をとることで自律神経は安定する。そしてもうひとつ、積極的に自律神経を整える方法がある。それは、呼吸だ。

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1対2の呼吸で、自律神経を整える

「呼吸は重要ですね。いい呼吸をすると自律神経が整い、消化管の血流と動きがよくなります。いい呼吸とは、『1対2の呼吸』。例えば、3秒で吸って6秒をかけて吐くという呼吸です。1日に3回、朝昼夜にできるといいですね。一回のセットは3分間ぐらいが目安です」

意識的な呼吸、それもゆっくりと呼吸すること。日々のせわしない暮らしの中では、1対2の呼吸をする3分間は必然的に静かな、心まで整う時間になりそうだ。ヨガにも通じるところがある。

「そうですね、ヨガとか太極拳は近いですね」

いい加齢は、免疫力を高めることに近い

人生100年時代、いかに健康に生きるかは社会的な課題でもある。本連載では、前向きに歳を重ねていく『プロダクティブ・エイジング』のあり方を識者に伺っているが、小林教授にとっての加齢とはどんなことなのだろう。

「加齢は自然現象ですが、コントロールできます。老けようと思えば簡単に悪い老け方をしますし、逆によい加齢もできます。そのために一番重要なのは、生活習慣ではないでしょうか。運動と食事、そして睡眠の3つで整えましょう」

この3つの要素は、免疫力の向上に大切なことと重なる。腸内環境と自律神経を整え、免疫力を上げるということ。それは、いまこの時期だけではなく、先の未来まで健やかにいることと同義なのだ。

健やかに歳を重ねていくために、今こそ免疫力を上げる生活を。

J-WAVE NOMON YOUR WELLNESS on Onyourmark
vol.1『プロダクティブ・エイジング “もっと自分らしく歳を重ねるための戦略” 吉川千明
vol.2『免疫力を上げるには、何よりも腸から スポーツドクター 小林弘幸』

小林弘幸(こばやし ひろゆき)

小林弘幸(こばやし ひろゆき)

1987年、順天堂大学医学部卒業。1992年、同大学院医学研究科博士課程修了。アイルランド国立病院外科、順天堂大学小児外科講師・助教授を経て現在は順天堂大学医学部教授。著書は「医者が考案した『長生きみそ汁』」他多数。日本スポーツ協会公認スポーツドクターとしての顔も持ち、テレビをはじめとしたメディアにて、腸と健康のあり方を紹介すること多々。

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「ココロとカラダがよろこぶ日曜日。」がテーマのJ-WAVE 『MAKE MY DAY』にて毎週日曜日 AM7:05-7:15にお届けしているヘルスケアプログラム。毎月ひとつのテーマに沿ったヘルスケア情報を、専門家のコメントでご紹介。2020年6月は、順天堂大学医学部教授の小林弘幸さんを迎えてお届けしています。
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人生100年時代を迎え、より充実した人生を送るためLIFE IS LONG.をメッセージに掲げ、健康の維持に対し明確な科学的根拠を有する食品“ニュートラシューティカル”の提供を通じて、「生まれてから最後の日まで、歳を重ねることに前向きで自分らしい人生を全うできるプロダクティブ・エイジング」の実現を目指すヘルスケア・カンパニー。
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