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故障をせずにトレーニングを継続しなければならない

そんなわけで体質改善の効果もあり体調面は上々だったが、2月半ばから足に違和感が出るようになっていた。陸上経験がなく、誰からも「走り方」というものを教わったことがないわたしに、ガタがこないわけがない。でも、コーチから与えられるメニューを順調に熟すには、常に調子が良くなければならない。

トレイルランニングを始めて腸脛靭帯炎や足底筋膜炎などを経てきたが、直近数年は走れなくなるほどの故障はなかった。それが、コーチングが始まってから「このままだと故障しちゃう!」と背筋が凍るシーンが何度かあった。ランニングフォームの荒さ、負荷が上がることによる筋肉への負担。一体どうすればいいのか、試行錯誤の日々が始まった。

5つの習慣でアプローチするデイリーコンディショニング

わたしは、日々のコンディショニングを徹底することにした。具体的には、ストレッチ、筋膜リリース、歪みや左右差を治すリハビリ、筋トレ、入浴の5つ。Tomo’s Pitのメニューには担当トレーナーによる2ヶ月に1回のコンディショニング講座が含まれており、主に左右バランスなどを治すための指示を受けた。15分ほどのデイリーメニューが組まれたが、あくまでそれはリハビリ。それだけでは到底回復は追いつかず、どんどん疲れは溜まっていく。意気揚々とスタートした頃の勢いが徐々に失われていった。常に不安と隣り合わせ。自分で、なんとかせねば。

まずは朝夜に30分〜1時間のストレッチと筋膜リリースグッズを使ったケアを加えた。ドラマや映画を見ながら、時間さえあればボールやローラーを転がす。大好きな銭湯とサウナは疲労回復とストレス解消に絶大な効果を発揮していたが、ウイルス感染拡大の影響で通えなくなり、止むを得ず自宅での入浴を続けた。筋トレに関しては、数年前から石井道場というパーソナルトレーニングジムに週1回通っていて、そこでトレーナーの石井さんに1時間いじめ抜かれている。目標に対して必要な筋肉・体の動きを考え、補強していくというスタイルで、わたしの過去の挑戦を支えてくれた存在だ。家でもできるトレーニングメニューも作ってもらっていて、最近はそれも地道にやるようになった。1日たった30分〜1時間で簡単に取り入れられることが成長に繋がるなら、やらない手はない。そんなのは今に始まったことじゃないし、できていればとっくにムキムキなはずだったけれど、今年はなにがなんでもやると決めたのだ。本気で走りはじめて5ヶ月、いまのところトレーニングを止めなければならないような故障はない。違和感が故障になる前に回避しながら練習量は増え続けているから、きっと間違っていないと信じている。

わたしのモチベーションをへし折ろうとしてくる奴がいる

もうひとつ、わたしは自分の身体と向き合わなければならない重大な問題に頭を抱えている。練習を終えて、「確実に成長しているね!」「次回からは〇秒を目指そう!」そんな風にコーチに褒められると嬉しくて、普通ならモチベーションが上がるはずなのに、重い気持ちになる時がある。

「よしよし、やっといい感じになってきた気がする!」

ステップアップしようとする度に、邪魔をしに来る奴がいるのだ。なんどもなんどもやってきて、わたしのやる気を削ぐ。真面目に練習をして、懸命にケアをして、なんとかして変わろうと努力をしているのに。それなのに、わたしの身体を問答無用で使いものにならなくする。

生理だ。

わたしのトレーニング計画は4週間サイクルで、week1、week2、week3と徐々に負荷が高くなり、待ちに待ったweek4はリカバリーでトレーニング負荷を落として回復するという方法だ。WEEK4が生理時期になるようにメニューを組んでもらっていて、最初はこれが順調に思えた。だけど異変は3ヶ月目から起きていた。

1年365日のうち168日しかパフォーマンスが出ない

3月は生理前の症状が酷かった。月経前症候群(PMS)というやつだ。レースが立て続いた影響かもしれない。仕事も忙しかった。シューズが履けないくらいまで浮腫み、お腹が張り、体重が増え、片頭痛になる。走ると息が切れて心拍数も高い。ストレスで無意味に食べ続けていないと落ち着かず、せっかく絞った身体が台無しだった。

周期もかなり乱れてしまった。数日後ろにズレたことで負荷の高い週に生理が当たってしまった。これには参った。こうなると4週サイクルの考え方は完全に破たんする。パフォーマンスを上げるべき週に本来出るはずの力が出ない。月経周期をコントロールして生理痛も抑える「低用量ピル」を飲む選択肢もあるけれど、10代からの片頭痛で何度も検討しては諦めてきた。

4月は生理の影響で3週間も体調が悪かった。「調子が悪ければコーチに伝えてメニューを変更する」約束だったけれど、それでは1ヶ月ずーっとジョグをすることになる。調子が悪いんじゃない! 生理が悪いんだ! せっかく頑張っているのに、と毎日練習終わりにため息が出た。

5月、今度は気配がない。無月経ともなればもっと深刻だ。正直なところ「プロアスリートや実業団、陸上部ほどの練習でもなければ、厳しい減量もしていないのに!」という気持ちが拭えない。婦人科で診てもらっても、病気は見られない。なのに、なぜ?頑張ろうとする度に、足をひっかけられているような気分だ。PMSと生理で約2週間。これが毎月だ。1年365日もあるのに168日しか良いパフォーマンスが出ないなんて。

ゆるい趣味の範ちゅうを超えていなかったいままでは、この苦しさをわかっていなかったのかもしれない。自分ごとになってより一層、学生やアスリート達の痛切な想いを感じている。女性にとって、自分の生活をかけてスポーツに必死で取り組めば取り組むほど、必ずついて回る問題なのだと思う。

モチベーションを保つために必要なことは何か

わたしはメンタルが強いと言われることが多い。でもトレーニングにおいては、どちらかというと根性論よりも加点式で考えるようにしている。だから、無我夢中でただ走りまくるよりも、多角的に取り組んで身体ごと変えるほうが、なりたい姿への近道だと思っている。

練習がはかどらない時、思うように走力が伸びない時、やる気が出ない時、
「モチベーションの問題でしょ」
って、人は簡単に言うかもしれない。走ることが好きである限り、モチベーションはあるって言える自信がある。でも生理の問題については、道半ばにしてすでに心が折れそうだ。今、最優先で取り組むべき課題なのかもしれない。

わたしはここから、どうすれば心と身体がバラバラにならず、「速くなること」にモチベーションを注ぎ続けられるのだろうか。

episode4へ続く。

中島英摩

中島英摩

京都府生まれ、東京都在住。登山やトレイルランニングの取材・執筆をメインとするアウトドアライター。テント泊縦走から雪山登山まで1年を通じて山に通うほどこよなく山を愛する。トレイルランニングではUTMBやUTMF、トルデジアンなどのメジャーレースでの完走経験を持つ。昨年11月、つくばマラソンを3時間27分40秒で完走、今年1月の勝田全国マラソンで3時間10分27秒に大幅更新。翌週奄美大島で行われた100kmレース「奄美ハナハナウルトララン」で優勝するなど、目下絶好調。