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あのUTMBが開催する中東オマーンの100マイルレース〈OMAN by UTMB〉。気鋭のトレイルランナー宮﨑喜美乃のレースを追ったドキュメンタリー映像が公開された。

エモーショナルでない100マイルレースなんて、無い。どんな100マイルも、走った者にとってはかけがえなく、そして多くの感情を伴う。だからこそ、100マイルレースのフィルムメイキングの難しさを思う。どう撮っても苦難を乗り越えた先の感動が映るのであれば、そこにどんなメッセージを込めるべきか。

本作〈COLOR〉は、THE NORTH FACEアスリート宮﨑喜美乃が中東オマーンで開催された100マイルレース、〈OMAN by UTMB〉に挑んだドキュメンタリーだ。トレイルランニング界に彗星の如く現れ、2015年にはSTYで優勝を遂げ一躍有力ランナーとなった彼女も、100マイルレースへの適応に苦労を強いられてきた。今回のオマーンはランナーとして並々ならぬ決意をもっての参戦だ。

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〈COLOR〉と題されたフィルムだが、画面に映し出される色彩は決してカラフルではない。中東と聞いて私たちが一般に思い浮かべる砂漠地帯の赤茶けた色と、なによりも果てしない岩稜帯の灰色、そして色彩なき夜の闇が映像の大半を占める。そして工程の大部分を覆うこの色彩の乏しさが、類稀なこのレースの過酷さをより際立たせる。

100マイルレースを追ったこの映像を通じて、私たちは宮﨑のいろんな顔を知ることになる。その感情のバリエーションの豊富さは、通常であれば家族や、長年の友情関係でしか見ることのできないものだ。しかし、極限の数十時間にあらゆる感情が表出する、それこそが100マイルレースで起こることであり、優れたドキュメンタリーはそれをキャプチャする。

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「泣き笑い」という言葉が示すように、人間のあらゆる感情は矛盾に満ち、混ぜこぜなものであってそこには強弱のグラデーションがあるだけだ。それは、色彩が無限のグラデーションであることを想起させ、〈COLOR〉というタイトルに帰着する。

本作を、中東オマーンのエキゾチックな光景を舞台とした一人の女性ランナーの挑戦記として観ることはもちろんできる。だが宮崎が最後に見せる表情は、観る者の感情を強く揺さぶり、彼女の走ってきた道筋は、彼女自身の生きる理由へとたどり着いたことを理解する。そしてそれは、多くの人々が自分らしく生きることを自問する今この時だからこそ大きな意味を持つ。

宮﨑 喜美乃

1988年山口県出身。トレイルランニングを始め1年目の2015年9月に〈STY〉にて女子優勝を果たす。現在ミウラ・ドルフィンズで健康運動指導士、低酸素シニアトレーナーとして活動中。2018年〈UTMF〉で8位入賞。2019年〈Oman by UTMB〉で3位入賞。
Instagram: @miyazaki_kimino

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