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編集部が実際に体験したものだけをリポートする「mark gear by onyourmark」。今回はサロモンのロードランニングモデル〈SONIC〉コレクションの3代目〈SONIC 3〉をトライ。“A”“B”“C”、見た目は似ていながら走行感覚が異なる3モデルを比較検証します。

スキー・スノーボードに代表されるウインタースポーツ、“冬の遊び”の分野での認知度の高さはもちろん、キリアン・ジョルネの活躍もあり、世界的にトレイルランニング市場でのシェアを獲っているサロモン。そのサロモンが今熱を注ぎ、アップデートのたびに大きなブラッシュアップを見せているのがロードランニングシューズ。トレイルランニングシューズカテゴリーの〈SPEEDCROSS〉、〈SENSE〉のように、覚えやすく、かつアスリートフィーリングを刺激するネーミングセンスも光るサロモンが、ロードランニングを代表するモデルへ着けた名は〈SONIC〉。今回はその3代目にあたる〈SONIC 3〉を編集部、高橋がレビューします。

調べてみるとサロモンがロードランニングカテゴリーに参入したのは2016年とのこと。ローンチ時は「通常のロードラン用というよりは、軽量、フィット、グリップを特徴に、坂道や公園など、街のアップダウンを使って3Dに軽やかに走ろう!」というのがテーマ。その走行ルートを音波(SONIC)に見立てたことから、SONICの名がついたのだとか。

ちなみに〈SENSE〉のネーミングの由来は、2011年、キリアンが〈WESTERN STATES ENDURANCE RUN〉で勝利するため、“キリアンの感覚を研ぎ澄ますシューズ”として開発したことから。

話は逸れましたが、サロモンが、本格的にロードランに力を入れたように感じたのは昨年発売された2代目〈SONIC RA2〉のコレクションからでした。今回の〈SONIC 3〉も“A”“B”“C”とランナーの特性に合わせて3種に分かれているわけですが、土台として〈SONIC RA2〉があるのは間違いありません。スピードを求める〈SONIC RA PRO2〉、スタンダードなトレーニング向けの〈SONIC RA2〉、より長い距離を走るための〈SONIC RA MAX2〉として登場した3モデルは、同時にフォアフット、ミッドフット、ヒールストライクといった着地の仕方、それぞれのランニングスタイルに合わせたモデルでもありました。

サロモンのシューズはトレイルランニングシューズは〈S/LAB WING〉や〈SPEEDCROSS〉などいくつか履いてきましたが、ロードランニングモデルとなると、本格的に履くのはこの〈SONIC 3〉が初めて。〈SONIC RA2〉コレクション発売時期に2度ほど(〈SONIC RA2〉と〈SONIC RA MAX2〉を)試走会で履いたレベルです。引き継がれた部分、アップデートした部分も確認し、〈SONIC RA2〉との比較も交えながら、紹介できればと思います。

サロモンの靴の特徴

「サイズを0.5cm下げた方がいいかもしれません」。

レビューを進めるにあたり、事前にサロモンのマーケティングマネージャー・石田道寛さんから連絡をもらっていたのですが、実際に履いてみると、聞いていた通りややノーズが長めの設計でした。普段サロモンのシューズを履く際は基本27.5cmを選びますが、〈SONIC 3〉はややつま先が余り、27cmでちょうど良い印象です。足入れして感じた特徴はもうひとつ、甲のフィット感が高い。シューズ単体を横から見るとよく分かるのですが、タンに向かってのカーブが緩やか。低めといった方がいいでしょうか。かといってキツく感じるわけではなく、“フィット感”に対して追求している印象を受けます。個人的にサロモンシューズの特徴と感じているポイントとして、“靴紐を解かないと足入れができない”というのがあります。しっかりとしたヒールカップ、くるぶし周りの“あたり”を意識した履き口周りのカッティング、SensiFit*によるアッパーのフィット感。これらの点でサロモンは独特の感触を与えてくれます。この点〈SONIC 3〉は、よりシンプルに前方方向への動きとなるロードランニングモデルとしての追求を図ったことが伺えました。

*アッパーの内側に設計された、甲周りから前足部を包み込むように設計されたサロモンが1994年に開発したテクノロジー。履き心地にこだわり、動きを妨げることなくフィット感とホールド性を実現する。

上から〈Accelerate〉、〈Balance〉、〈Confidence〉。補強材の使用、配置なども3足それぞれに合わせた仕様。ヒールの水色のパーツが〈SONIC 3〉から採用された振動を抑制させるテクノロジー〈Optivibe〉。

さて、今回の〈SONIC 3〉は3モデル、“A”“B”“C”とあります。“A”はAccelerateのA、“B”はBalanceのB、“C”はConfidenceのC。これまで2足の比較検証はしましたが、3足となるとどう比較するのがいいのか。“A”“B”“C”改めて辞書でその意味を調べ直し、考えました。

・Accelerate = 加速
・Balance = 調和
・Confidence = 信頼

この“加速”“調和”“信頼”にはやはり大きな意味があるであろうと反芻するうち、この3モデルを場所、サーフェス、走り方、何かに特化した走り方をするのは、ナンセンスと思うようになり(比較する上で偏りが出ると考え)、今回は“時間”で特徴を探すこととしました。
今回は

・日常生活で使用(歩く)
・60分フリーラン
・120分フリーラン

60分は基本的にjog、120分ではその時の気分で気の向くままにスピードをアレンジ。同じ曜日、同じ体調になるように2週間の間で実施。どんな特徴が見られたのでしょうか。と、その前に3足のスペックの違いを紹介しておきましょう。

Accelerate 223g ドロップ:6mm
Balance 252g ドロップ:8mm
Confidence 268g ドロップ:10mm

どのモデルもエンジニアードメッシュを使用していますが、編み方がそれぞれ異なり強度の部分で差があります。履き口のクッション材の仕様も3種ともに異なり、この差がそのまま重量の差になっているように思います。ドロップはそれぞれ2mmずつの差。注目はアウトソールパターン。接地時間、着地する際のポジションに合わせガイドラインが異なります。この点が実際に走った際にどのような影響を及ぼすのか、その点も気になるところです。

右から〈Accelerate〉、〈Balance〉、〈Confidence〉。ドロップ差とともに、ガイドラインの変化によって、フォアフット、ミッドフット、ヒールストライクと、それぞれに適した走り方を促す。
右から〈Accelerate〉、〈Balance〉、〈Confidence〉。こちらもそれぞれのランニングスタイルに適したヒールカップ(メモリーフォーム)デザイン。
この写真は左から〈Accelerate〉、〈Balance〉、〈Confidence〉の順。並べてみるとアッパーの編み方、生地の厚みが大きく異なるのが分かる。

〈Contagrip〉と〈Optivibe〉

まずは日常生活(ウォーキング)で3日間、1日ずつ感触を確認。履いた順は“B”“C”“A”の順。これはその後のランニングも同様です。まずコレクションのベーシックなモデルとなる“B”を履き、その後安定感のある“C”、最後にスピードが出せる“A”へ。

今回の三足を比較する上で、個人的に、注意して見るべきポイントとして考えていたのは、新たに採用された〈Optivibe〉がどのような反応を示すのか、またトレイルシーンで強く感じている〈Contagrip〉の安心感(グリップ力)はロードシーンでどのような“色”を見せるのか、その2点でした。

Optivibeは、ランニング中に着時に起きる微振動が疲労の原因となるとして、サロモンが独自に研究を続けてきた(ミッドソールに採用していた)、Vibeテクノロジーをアップグレードしたもの。衝撃を緩衝するフォームと推進力に変えるフォームで、スムーズなライド感を保ちながら足の疲れを軽減するとしています。サロモン側からアナウンスされた情報によれば、〈SONIC RA2〉に採用されていたVibeテクノロジーに比べ〈Optivibe〉は衝撃減衰率が15%、衝撃吸収率が8%向上したとのこと。

ホームページを見てみると〈SONIC 3〉(ロードランモデル)の〈Contagrip〉は、表面の摩擦を制御する幅広めのラグを組み合わせてロードラン仕様になっている、とあります。

3日間、“A”“B”“C”をそれぞれ履きましたが、2つのテクノロジーを強く感じることはなく、それ以上にクッション性に意識がいきました。どれもじっくり沈んでいくような感覚で、接地時間の長いウォーキングにおいては特に心地よい印象。話は飛んでしまいますが、このレビューを終えた後も普段履きとしても利用しています。

長時間走行に適したシューズ

60分フリーラン

〈Balance〉

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〈Confidence〉

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〈Accelerate〉

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60分フリーランではどのモデルの回も5’00/kmを目安に走行。第一印象としてまず“B”“C”に関しては重量感を感じたことがひとつ。それからソールの屈曲性の点で硬さを感じました。普段使いで使用した時とは感触が変わり、クッションがあまり感じられず、ソールの硬さにまず意識が持っていかれましたが、これは(アッパーにも言えることですが)ソールの耐久性がとにかく高い為と言えるでしょう。40分、50分と後半になるに連れ、体も温まったタイミングで少しスピードも上げたりしながら、シューズに対しての負荷も与えて、より馴染むようにトライしましたが、足に馴染むまで少し時間が必要な印象を受けました。1回のランで見極めるシューズではないと言えるでしょう。〈Optivibe〉のサポートはどうだったか。こちらも、この段階では見定められませんでした。

変わって最後に履いた“A”は軽さ、アッパーのしなやかさ、クッション、バランスよく、走行の安定性も高い印象。〈Optivibe〉の影響があったかは、こちらもまだ判定するには早い感触でしたが、ソールの硬さは“B”“C”同様でありながら、初回から走り心地の良い感触でした。

ここまでを終えてまず買うなら断然“A”。Accelerateで決まりです。“A”はレースで使用するのも良さそうですが、走り心地が良い。長い距離にフィットする感触です。スピードをどこまで上げるかにもよりますが、レースに限らずロングラン用に使えるシューズの印象。

120分フリーラン

〈Balance〉

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〈Confidence〉

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〈Accelerate〉

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そして120分のフリーラン。正直なことを言えば、60分を走った段階で「“B”“C”で120分走るのは結構タフだな」と感じていました。足に馴染んでいない感覚が抜けるのかどうか。特に1回めの120分となる“B”の回は恐る恐る走り出したのを思い出します。結果“B”も“C”もその予想を覆してくれました。

走り出しの感覚は60分の時と変わりませんが、今回は下りのタイミングを利用し早い段階からややスピードを上げて(5’00/kmを割るペースで)走ってみたところ、ソールの硬さはまだ少し感じましたが、身体がスムーズに動くことを実感します。頭をよぎったのは、着地のインパクトをある程度与えた方が、靴が反応して動いてくれるということ。ソールに対し、ちょっと鞭打つような感じと言えばいいでしょうか。強度がある分、ある程度ハードに地面に当てる方がシューズのポテンシャルを引き出せると踏み、120分走ることは考えず、強度を下げずに走ろうと考えました。仮定の話になりますが、初回からこうして走っていれば印象も違ったかもしれません。走り終えてまず感じたことは疲労感が低いということ。普段120分も走るとそれなりに筋疲労が訪れて後半(100分も過ぎれば)はきついものですが、の感覚が特にありませんでした。どちらかといえばまだ走れる状態で120分を終えた印象。具体的に〈Optivibe〉のサポートを感じた印象はないですが、これこそが〈Optivibe〉の効果なのだと思います。

その「具体的な〈Optivibe〉の効果」は、次に履いた“C”で感じることができました。3足の中でも特に重さを感じたのが“C”であり、逆に普段ばきとしてもっとも心地よく感じたのも“C”でした。5’00/kmを割って走るような時間はほとんどありませんでしたが、“B”同様にペースを落とすことなく後半も気持ちよく走ることができたのは意外な点でした。重さを感じた分後半はペースが落ちるであろう(メンタル的にも疲れるであろう)と予想しましたが、この点いい意味で裏切られました。

なぜ後半になるとペースが落ちるのか。理由はケースバイケースでもあるし、多々あるかと思いますが、疲労からフォームが乱れることは誰しもに言えることかと思います。〈SONIC 3〉の“C”の良い点は疲れてきたときほど、安定した(ブレの少ない)足運び(足の振り戻し)をサポートしてくれるところ。疲れからやはり後半重量感をより感じたのですが、フォームがブレることなく、一歩一歩の接地から蹴り出しまで、より安定性を守って(丁寧に足運びさせて)走らせてくれます。これが〈Optivibe〉の補正効果なのでしょう。

最後の“A”での120分。この頃には特徴をガッチリつかんでいたので、“B”“C”同様に、後半で足に大きな疲労を感じることなく、快適に走ることができました。〈SONIC RA2〉コレクションでは内蔵されていたVibeテクノロジーが、今回の〈SONIC 3〉ではヒール部分に可視化されています。思い込みですが、これはよりヒールストライクで走る人の疲労軽減の助けと受け止っていました。が、どちらかといえばフォアフットを促す“A”の方がより〈Optivibe〉の恩恵を受けるのではないかと感じました。フォアフットで走っているうちに、着地の角度が多少バラついてきたのですが、地面をキャッチしてから蹴り出す足に大きなブレが出ない(イコール、着地の仕方が下手ということなのですが)。これは意外な気づきでした。

3足、フィールドテストを終えて、〈SONIC 3〉はどんなシューズかと聞かれれば、“より長くランニングを楽しめるシューズ”と言えるように思います。3足、どれを選ぶかは悩みどころですが、個人的な感覚として、


“A”はより長い距離をスピードを出して走るときに = 20km〜30km走やレースで
“B”はより長い距離を安定して走れるようになるためのトレーニングを積むときに = 15km〜30km走を普段のジョグよりも早めのペースのトレーニングで
“C”は(重量を負荷としながら)より長い距離への自信を得るために = 10km〜25km走を普段のジョグよりもやや早めのペースで

走るのがフィットする印象。

もちろん長い距離に限定するわけではなく、足馴染みが済めば、普段使いから普段のjogで利用するのも全然ありです。ただ、長い距離を走った方が〈SONIC 3〉の特徴をより捉えることができるように思います。ロングランのお供にぜひ。

ウェットなサーフェス、コンディションの悪いサーフェスで力を発揮

最後にもうひとつインプレッションを。狙ったわけではないのですが、今回のフィールドテストは“A”の60分、“B”“C”の120分を雨上がりでの実施となりました。ウェットなサーフェス下において、〈SONIC 3〉のストロングポイント(ロードランニングモデルにおいての〈Contagrip〉の威力)を確認することができたことを付け加えておきたいと思います。それ以外の、例えば農道、砂利道、排水溝の蓋の上のような場所も、途中から意識して走ってみましたが、トレイルランモデル同様にそのグリップ力は健在。地面をキャッチする能力がすこぶる高いです。ロードランはトレイルランニングに比べれば(急斜面、走りやすい下りは別として)接地時間が短いですが、その短い時間での地面を捉えている感覚は他社の追随を許さないように思います。接地時間にプライオリティを置かないのであればなおのこと、一歩一歩地面を捉え、着地から蹴り出しへ向かうタイミングでのエネルギーリターンがしっかり感じられます。

サロモンのロードモデルは途上の段階ですが、ブランドのアイデンティティ、特徴は崩さず、ロードシーンに根を張ろうと
していることが今回の〈SONIC 3〉の3足からは伺えました。次回作ではどの点をアップデートするのか、〈SONIC 3〉を引き続き履きながら、楽しみに待ちたいと思います。

サロモンストア コールセンター
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