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長野県の飯山市に居を構え、隣町の「国際自然環境アウトドア専門学校」で講師を務める服部正秋さんは、冬はクロスカントリー、夏はトレイルランを通じて全力でアウトドアを満喫している。トレイルランのレースに数多く出るタイプではないが、授業の一環として生徒とともに参加するMadarao Forest Trails50kmでは、初出場した7年前からトップ5を譲ったことはない。そんな服部さんのような力のあるトレイルランナーの山遊びに応えるべく、パタゴニアからトレイルランニングのためのコアなアイテムが生まれた。

短時間で環境が目まぐるしく変化する、トレイルランナーの山のために

足に覚えのあるトレイルランナーが本腰を入れて山を走ると、既存のギアでは想定されていないようなシチュエーションが出てくる。たとえばヨーロッパアルプスでは、麓の町から3000mを超える白い稜線まで駆け上がり、その日のうちにまた麓まで降りてくる、といった具合だ。

パタゴニアがこの春に世界同時発売したハイ・エンデュランス・キットは、熱心かつコアなトレイルランナーのために用意された、ウェアからバックパックまでのトータルコレクションだ。パタゴニアのプロセールス・アスリートである服部正秋さんが発売よりひと足早くテストした。

服部さんが向かった先は、山梨県の乾徳山。2児の父として夕方までには自宅へと戻るべく、仲間のフォトグラファーとは夜明け前の早い時間に集合する約束だ。

開けた稜線上で日の出を臨むべく、ヘッドランプを片手にトレイルヘッドを発つ。Tシャツの上にはミッドレイヤーと、さらにその上にはレインウェアを着こんでいる。ボトムスはショーツのようなタイツのうえに通気性の高いロングパンツをレイヤード。クロスカントリーの実業団選手としても活躍した経験のある服部さんは屈指のスピードランナーだ。1時間ほど快適なペースで進むと、ふいに木々が途切れて、遠く富士山の方角から朱が挿してきた。

クロカンスキーの授業が、やがてトレラン先生になる原点に

服部さんがクロスカントリースキーを始めたのは小学生のころ。飯山市の属する北信地方は日本有数の豪雪地帯であり、「冬の体育の授業といえばクロスカントリースキー」となる。当時は身体が弱かったこともあり、親のアドバイスに従って地元のクラブチームに。それから中学、高校と続けたのは自然な流れだ。高校では1学年の40人がスキー部員であり、部員数は120人にもなる。

「クロスカントリーは究極のエンデュランススポーツだと思っているんです。心肺的に追い込んだシチュエーションが頻繁に訪れます。だから夏場はオフトレーニングとしてストックを手に地元の山を走り回っていたんですよね。思い返せばそのころから山を走るのは好きでした。平地を走るよりよっぽど楽しくって、しょっちゅう走ってましたね」。

大学進学を機に本気で競技に打ち込もうと決め、京都の同志社大学へと進学。一学年上には同じ飯山南高校の先輩であり、のちにスキーアーチェリーで世界選手権を制覇、現在はトレイルランナーとしても活躍する山田琢也さんがいた。

「山田琢也さんとは朝練と称して自分の下宿先に集合して、東山三条とか、比叡山とか、しょっちゅう走りに行ってましたね」。

大学卒業後、社会人として京都の実業団チームに所属するも、不況で企業スポーツが元気をなくしはじめる時期だったため、思うところあってフィンランドへと留学をすることに。競技者と並行して、トレーニング理論や運動生理学なども学んだ。将来的には指導者になることも視野に入れて。

「講義は英語で行われると聞いていたのですが、いざ参加してみると何の前触れもなくフィンランド語で始まって。これにはまいりましたね。だからフィンランド語と英語の辞書と、英和辞書との2つを置いて、必死についていきました。そうそう、フィンランドってオリエンテーリング競技が盛んなんですよ。高い山はないけど、森の中のゆるやかな起伏を駆けられるフィールドには事欠かなくって、それこそ毎週どこかでレースが開催されていました」。

帰国後は地元・長野に戻ることにして、一時はスキーとは関係のない職につくも、やはりアウトドアに身を置き、フィールドに関することを誰かに教えることに興味があり、国際自然環境アウトドア専門学校の講師募集へと応募することに。32歳での転機だった。

「国際自然環境アウトドア専門学校はアウトドアに携わるスペシャリストを養成するための場です。4つの学科があり、たとえば登山ガイドを養成する学科もあれば、広くアウトドアスポーツビジネスを学ぶ学科もあって、授業の7割はフィールドワークです。そのなかでトレイルランニングの大会を体験するという授業があります。地元のクラシックレースに成長したMadarao Forest Trailsには、1年生全員がボランティアスタッフとして参加するんですよ。そこで翌年の優先出場権を得て、2年生になったら今度はレースに。毎年15~20名ほどが50kmのレースを走ります。生徒の中には数年後に信越五岳トレイルランニングレースで3位に入るようなツワモノもいましたけれど、今のところまだ生徒には負けていません。センセイとして面目を保てているかな」。

パタゴニアは長く付き合えるギア

同じく地元で開かれる100mile&110kmレースの信越五岳トレイルランニングレースにも、生徒とともに毎年大会を陰から支えている。両方ともパタゴニアが協賛しているレースであり、服部さんとパタゴニアにはそんな縁もある。

「もともと好きなブランドで、パタゴニアのモノはひとつひとつが長く付き合えるギアだという信頼感があります。高校時代にフリースを購入したのですが、当時は『ちょっと高いなぁ』と思いつつ背伸びして手に入れたのですが、いまだに着れてるので、余裕で元が取れてますよね。長くつきあえるギアだという信頼感があります」。

レイヤリングでより真価を発揮するトータルキット

「暑さが苦手なので、プライベートで山に行くときは2000m以上のハイアルパインなルートへと足が伸びます。基本的には日帰りで行くので、トレイルランのスタイルで。山は旅と同じ感覚なのですが、速いほうが色々なもの見られるし、一日の移動距離が長ければ山容が移り行くさまをダイナミックに楽しめますよね。それってすごく得をした気分というか、超贅沢なことじゃないですか」。

そんなとき、ハイ・エンデュランス・キットはどうだろうか。

「とてもフィットするアイテムという印象です。今日は夜明け前の一日で一番寒い時間帯から行動しましたけれど、この防水シェルを上に着ているだけで対応できましたし、かといって走っても蒸れを感じませんでした。ハイネックで首まで覆ってくれるのもいい。一方でつっぱり感がなく、走りやすいですね。着心地が軽い。これはパンツも同じ印象で、こちらは防水でなく通気素材ですが、やはりもも上げ時のつっぱり感がない。ストレスなく足を動かせます。
ショーツも面白いですね。しっかり感が好ましい厚手生地で、前面のパネル生地をのぞけば穿いてる感覚は完全にタイツですよね。股ズレもなさそうです。実は個人的にもタイツ派なんです。汗に濡れた生地がペタペタ貼りつくのが苦手なので」。

とにかく着脱しやすいレイヤリングシステムというところも服部さんには大きな利点だ。アルプスではひとつひとつの山域が大きく、標高差が大きいため、小まめな脱ぎ着や体温調整が快適なトレイルランをサポートする。

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左上/防水の「メンズ・ストーム・レーサー・ジャケット」はバックパックの上から羽織る。左右の両胸にはジッパーがダイアゴナルに設けられ、開ければパックのフロントポケットへのアクセスが容易に。

右上/ショーツでお馴染みのストライダー・プロ素材を用いた、足さばきのいいテーパードシルエットの「メンズ・ストライダー・プロ・パンツ」。裾はスナップボタンで大きく開閉でき、靴を履いたままの脱ぎ履きが可能。

左中/ソフトフラスクが付属する「スロープ・ランナー・エンデュランス・ベスト」。背面のポケットはパックを下ろさずにアクセス可能。防寒着をサッと取り出せる。
右中/フロントポケットは2重構造で、奥にはフラスクが、手前には行動食などが収まる。

左下/「メンズ・エンドレス・ラン・ショーツ」は両脇に大きなポケットが設けられ、薄手のシェルなら余裕で収納できる。「大判で、かつサッと取り出したいマップ類によさそう。地図ってパックのポケットにしまうといろいろ煩雑なんですよね」。

右下/ミッドレイヤーの「メンズ・エアシェッド・プロ・プルオーバー」は肘から先とフード部の素材をキャプリーン・クール・ライトウェイト素材に切り替えており、すっきりフィットしてバタつかない。もちろん通気性も高い。

バックパックに関してはとにかくフィット感がいいという評価だ。

「あまり気を遣わず適当にパッキングしても、肌に触れる面全体に圧が分散されるからか、荷重のバランスがよくって気になりません。まだ南アルプスの深いところには行ったことがないので、今年はこのキットで行ってみたいですね」。

親しんできたフィールドのために、もっと広く、より深く

「小学生向けのトレイルランニングクラブを主宰していて、その名もラントレイルクラブって言うんですけど。地元にこんなにいいフィールドがあるのに、意外と子どもも親も知らないんですよね。でも、連れてったら子どもたちは本当に喜んで走るんです。クロスカントリーの選手のような子は半分くらいで、トレラン学童のように使ってもらったりもしていますよ。トレイルランを通じて山でのリスクとの付き合い方を学んでもらってますが、子どもの反応が刺激的で、引率している自分たちも面白いんです」。

上/「メンズ・エンドレス・ラン・ショーツ」は、前面の一部は一般的なショーツ生地だが、裾やその他の部分はタイツになっている。
下/岩稜帯のピークで日の出を楽しんだあと、もといた登山口へと標高を下げる。防水シェルとロングパンツはパックの中へ。

さまざまな活動を通じてフィールドを活用させてもらうなかで、トレイルの保全や自然との共生についても何かできることはないか、思案することが多くなった。

「ベアドッグをご存知ですか?軽井沢にあるピッキオというネイチャーツアー等を行う団体なのですが、数年前から学校が連携させてもらいクマの調査をお手伝いしています。北信エリアはクマが多く、最近は過疎化で人が住む領域へクマがおりてくるという事例が頻発しています。ピッキオではフィンランド原産のカレリアンベアドッグを飼育して、クマを森の奥へ追い払う対策を取っている。共生するのための熊追い犬、というわけです。まだアイディアの段階ですが、カレリアンベアドッグを地元でも飼育させてもらい、例えば『犬が守るトレイルランレース』のようなアクションを起こせれば、動物との共生という観点で多くの人に興味を持ってもらえるかもしれません。今はそうした地元のフィールドに貢献できることについて、考えを巡らせているところです」。

服部正秋

1980年長野県飯山市生まれ。同志社大時代はクロスカントリースキーで学生日本一に、社会人時代はフィンランドにてFISレース(国際スキー連盟公認)での優勝経験も。2005年、フィンランド留学中にクロスカントリースキーのプロフェッショナルコーチング資格と共に、ノルディックウォーキングのINWA&JNFAナショナルトレーナー資格を取得。トレイルランニングレース「Madarao Forest Trails50km」では3度の準優勝をはじめ、入賞多数。

【取り扱い店舗】
ハイ・エンデュランス・キットは、下記のプロショップおよびパタゴニア直営店とオンラインストアで限定販売中。

秀岳荘 北大店(北海道)
ナムチェバザール(茨城県)
さかいやスポーツウェア館(東京都)
LaLaさかいや(東京都)
Run boys! Run girls!(東京都)
ATC Store(静岡県)
OUTDOOR SPECIALITY MOOSE(愛知県)
moderate(三重県)
T-mountain(愛媛県)

パタゴニア仙台
パタゴニア東京・丸の内
パタゴニア東京・神田
パタゴニア東京・大崎
パタゴニア横浜・関内
パタゴニア白馬/アウトレット
パタゴニア名古屋
パタゴニア大阪
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