クロカンとアルペンの違い
一般的に馴染み深い“スキー”となるとやはりアルペンスキー。ではクロカンとアルペンとでは何がどう違うのか。まずはその違いから教えてもらいました。
「やはり大きな違いは板ですね。見てもらえればわかるのですが、分かりやすくいえばクロカンの板はアルペンに比べて、細くて長い。アルペンはトップとテールが太く、センターがくびれた形状なのに対し、クロカンの板は幅4、5cmほどでトップとテールが細くなっています。
それから重量。クロカンの板は軽いです。物によっては1kg未満。アルペンの板と比べると半分以下です。基本、斜面を降るアルペンと違い、登る動きもあるので、そのため滑走面(底面)にうろこ状にギザギザが刻まれてあり、後ろに滑りにくい仕様になっています。それから中央がしなっていて、浮いた状態になっているのも特徴的ですね。体重をかけたタイミングで引っかかるようになっています」。
ブーツはアルペンに比べひとまわり小さく、がっちりと固定される感覚ではない。アルペンと違って固定されるのはつま先のみで、踵が解放されるので、実際に滑ってみると、アルペンとは違った安定しない怖さがあり、慣れるまでは下り坂はとにかく怖い。ポールはアルペンはもちろん、ハイキングやクライミングで使うポールと全然違って長い。
「クラシカルの場合で大体身長からマイナス30cm、スケーティングの方でマイナス20cmの長さです。アルペンとは違って推進力を得るために長い設計になっているんですよね。その長さを利用して、身体全体を使って移動するので、滑っているうちは長いとは感じないと思います」。
ウェアリングに関しては、
「競技となると全身ぴったりしたウェアを着ますが、基本はトレイルランをするような格好でいいと思います。
ベースレイヤーの上に、保温性が高く汗処理能力の高いミッドレイヤー、その上にウィンドシェル。天候によってはもしくはウィンドシェルではなくレインシェル。3レイヤーが守れていれば問題ないです。
下はタイツの上にウィンドパンツかレインパンツ。グローブもアルペンで使うような分厚いものでなく、トレイルランやハイキングで使うようなポールを扱いやすい感じのもので十分。
止まっていると寒さを感じますが、アルペンと違って降る場面はそれほど多くはありません。フラットもあれば登りが長いところもあります。ハードに動くので、少し動いただけで汗をたくさんかきます。天候にも寄りますが、体を大きく使った動きの連続なので、動きやすさが大事。あまり厚着しないほうが滑りに集中できます」。
クロスカントリースキーの種類
上記した通りクロカンにはクラシカルとスケーティングと二つの滑り方がある。
道具の解説の後、実際にその違いを見せてもらいます。山田さんはトレイルランナーとして『信越五岳トレイルランニングレース』のようなビッグレースでも優勝するほどのランナーである一方、本人が先述した通り、元はクロスカントリースキーの選手(社会人になってスキーアーチェリーに転向し、世界選手権優勝も経験!)。
見ていると教えてもらった通り本当に全身を使って移動するのがわかるのですが、全く力を使っていないように滑らかに滑ります。初心者にはノルディック複合のオリンピアン・渡部暁斗が滑っているのとまったく同じにしか見えません。
さらにはクラシカルで3種(ダイアゴナル、ダブルポーリング、キックダブルポーリング)、スケーティングで3種(クイック、ラピット、スーパースケーティング)の滑り方があることも教えてもらいます。アイススケートのアクセルやサルコウ、ルッツみたいに、滑り方の違いをよく理解した上で、注意深く見ないと意外とその違いには気づかないかも。
以下は滑り方の違いを撮影したもの。
<ダイアゴナル>
「腕の振り上げるタイミングと同時にどちらかの足を前へ滑り出します。その繰り返しがダイアゴナル」。
<ダブルポーリング>
「目線ほどまで拳を振り上げ、爪先より15cmくらいの場所にポールをつきます。腕だけで押さないように、上半身も使うことがポイント」。
<キックダブルポーリング>
「腕の振り上げと同時に片足に加重してキックします。キックダブルポーリングはダブルポーリングとダイアゴナルのハイブリット」。
<クイックスケーティング>
「クイックは上り坂に適したテクニック。1、2、1、2のタイミングで実践してみるとわかると思います」(ラピット、スーパースケーティングも同様)。<1>右スキー雪面接地と同時にポールをつく。<2>左スキー雪面接地のタイミングでポールを押す。(繰り返し)。
<ラピット>
「平地やゆるやかな下りに適したテクニックがラピット」。<1>右スキー雪面接地と同時にポールを前方へ振り上げる。<2>左スキー雪面接地と同時にポールで雪面をつく。(繰り返し)
<スーパースケーティング>
「スーパースケーティングは平地、ゆるかやかな上りに適したテクニック」。<1>右スキー雪面接地と同時にポールをつく。すぐにポールを振り上げる。<2>左スキー雪面接地と同時にポールをつく。(繰り返し)