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日本のサイクリングウェアメーカーの第一人者、パールイズミ。これまで日本代表ジャージを数多く手がけ、五輪の舞台を選手とともに戦ってきた。来たる東京でも自転車ロードレース競技の代表ジャージを担当するパールイズミに、五輪へ向けてのイノベーションを訊いた。

パールイズミの創業は1950年。日本のロードサイクリストであれば、パールイズミを知らない者はいないというほどの老舗だ。オリンピックに初めて日本代表ウェアをサポートしたのも1968年メキシコシティ五輪からとこちらも歴史が深い。この52年の間にアメリカなど他国の代表ジャージも手がけ、今年満を持して東京を迎える。

近年の自転車ロードレースをめぐる機材の進化は目まぐるしい。ロードバイクは空気抵抗を低減するエアロ化が図られ、ブレーキはオフロードバイクに用いられるディスクブレーキの採用が増えてきた。ウェアに関してもトレンドは年々変化している。

パールイズミ生産部の佐藤充次長は、現代の自転車ロードレースウェアに求められる機能をこう説明する。

佐藤 「薄く軽く、伸びやかに、というのがトレンドです。一昔前は、汗をよく吸いすぐ乾くということが重要視されていましたが、これを達成したうえで、現在のトレンドが出てきました。トップ選手だけでなく、中級レベルのライダーからもこうした要求が増えていますね」

パールイズミで長年開発に関わる佐藤充次長

ロードバイクがエアロ化する中で、ウェアのエアロ化も喫緊の課題となっている。「薄く軽く伸びやか」というトレンドは、タイトフィットなジャージを求める声だと考えて良さそうだ。

佐藤 「トップ選手からは、『とにかくもっと小さく作ってくれ』というリクエストが多いですね。試着見本を作っても、私自身では着れないんですよ、小さすぎて(笑)」

パールイズミが手がける自転車ロードレース日本代表ジャージ

日本代表がレースを戦うためのジャージ

2020年1月に行われたインタビューの時点で、日本代表のジャージキットは完成の手前まで来ているという。ひと口に代表ウェアと言っても、一般的なジャージとビブショーツの上下セパレート型、一体型のエアロスーツ、猛暑用のメッシュジャージなど、同じデザインでも様々なタイプが用意される。個人の好みや当日の天候に応じて、選手が選べるように種類があるのだという。2名の日本人選手が同じレースに出場するとして、一人がエアロスーツを、もう一人がメッシュジャージの代表ウェアを選ぶということもありうるというわけだ。

2020年の自転車ロードレース日本代表エアロスーツ。これは主に個人タイムトライアルで着用される。ヒジや脚の部分の立体感が現在のトレンドを反映している。
トップレベルのロードレースでは監督やチームメイトとの連絡用に無線を使用するため、ビブショーツの背面には無線用のポケットが。背骨に当たらないよう、中心から少し右にずらして配置される。また、バックポケットとも干渉しないように位置が工夫されている。

先のフィット感を追求するトレンドを受けて、日本代表ジャージの型を今回新しくしたという。これまでの代表ウェアと比較すると、その形状の進化ぶりに驚かされる。

リオ五輪の際の日本代表エアロスーツ。現行のものと比較すると立体感が少なく、床に置いても違和感がない

佐藤 「以前はフィット感の大部分を素材の伸びに頼っていたのですが、近年は素材の伸びではなくカットやパターンでフィット感を出すようになっています。選手はペダリングした時の足の付け根周りやジャージの脇のあたりの『シワ感』を気にするのもあって、より立体的な裁断に進化しています」

それだけ立体的なフィット感を実現するのに、見た目には小さくなっても使用する生地の量は以前よりも増えているという。こうした型の開発は、これまでパールイズミが培ってきたノウハウもあり比較的スムーズに完成した。今回の代表ジャージ作成にあたって最もイノベーティブな部分は、新開発の生地にあるという。専務取締役の清水秀和氏はこう話す。

パールイズミ 清水秀和専務取締役(左)

清水 「例えるなら老舗焼き鳥屋の『タレ』ですね。伝統的な財産を、新しいものを継ぎ足しながら増やしていく。パールイズミでは長年サイクリングウェアを作り続けていますので、型に関してはノウハウがあるわけです。ここに継ぎ足す新しいものが、新素材『スピードセンサー®Ⅱ』です」

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