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自転車に荷物を積んでライドする〈バイクパッキング〉。バイクバッグが進化したこの数年、新しい自転車の楽しみ方として定着してきた。ロードバイクブームがひと段落して、ただライドするだけでない+αを求めるライダーの需要ともマッチしたと言える。さらに最近トレンドのグラベルバイクとも相性がよく、引き続き人気を集めそうなジャンルだ。
キャンポンドに持ち込んだグラベルロードは〈Rodeo Adventure Labs〉のFlaanimal 4.0

那須を拠点に、全国各地でライドを企画しているRide Experienceが、このバイクパッキングを味わえる2日間のイベント〈キャンポンド〉を開催。お誘いを受けて、組んだばかりのグラベルロードで参加してみた。

〈キャンポンド〉は「Camp」+「Gran Fondo」からとった造語とのことで、名称が意味する通り、キャンプを伴うロングライドイベント。拡がりをみせているバイクパッキングだが、イベントとして開催されることは少ない。主催するRide Experienceはこのイベントのために、普段は走れない国有林道の許可をとってコースに取り入れたという。

前夜祭で同じ旅に出る仲間たちと乾杯

極上のグラベルロードを走れるとなれば、そんな魅力的なことはない。それに、なかなか人と走る機会の少ないバイクパッキングだからこそ、こうしたイベントで多くの同好の士と情報交換ができるというもの。しかもキャンポンドでは前夜祭としてバイクパッキングの第一人者、北澤肯さんによるバイクパッキングトークセッションが開催された。

2017年に〈バイクパッキングBOOK〉を上梓した北澤さんは、日本にバイクパッキングの楽しみと専門のブランドをいくつも紹介して来たシーンの中心人物。バイクパッキングの源流から定義、現在のトレンドまでを網羅したトークに、参加者たちは聞き入っていた。

日本のバイクパッキング文化の第一人者、北澤肯さん

ハイライトは、北澤さんが今回のイベントに持ち込んだ実車から、どれだけの荷物を積んでいたかを公開した時。コンパクトなバイクからは驚くほどのアイテムが飛び出してきた。シュラフやテントといった大物はもちろん、ポイズンリムーバー、あるいはウイスキーの小瓶まで全てに必然性があり、無駄のないチョイス。「ここまでくるのにたくさんの試行錯誤がありました」と本人が語るとおり、一朝一夕では身につくものではなさそうだが、大いに参考になる瞬間だった。

北澤さんのバイクは〈OTSO〉のWaheelaに〈Apidura〉〈Revelate Designs〉のバッグというセットアップ

「この何を入れるか」は、バイクパッキングの難しさと面白さだ。詰める荷物の容量には限りがあるし、かといって本当に必要なものが無いのも困る。取捨選択の感覚を磨くにはやはり経験によるところが大きそうだ。この辺りは登山が好きな人は上手なところだろう。

Ride Experienceの山本さんからコースが説明される。今日のグラベルはおよそ10km

一夜明けて、2日間に渡るキャンポンドがスタート。正式にはCAMPONDO YAMIZOという通り、那須高原をスタートして八溝林道を走るコースがとられている。初日は福島県のキャンプ場まで、約100kmで獲得標高1600mというもの。今日は約10kmのグラベルがあるという。

高原の一足早い秋を感じながら、朝の光に包まれスタート。早速、那須岳がその威容と美しさを見せてくれた。

那須岳に見守られるように出発

参加者のバイクは様々だ。シクロクロスバイクにバイクパッキング用のフロント・フレーム・サドルバッグを取り付けたセットアップが目立つが、キャリアにパニアバッグを装着したヘビーデューティ仕様や、バックパックを背負うスタイルも。一番多かったのは、キャノンデールのグラベルバイクSLATEにバッグを装着したもの。那須のフィールドに適した一台として、Ride Experienceでレンタルしているという。

シクロクロスバイク+バッグのセットアップ

下り基調の気持ちいいルートで荷物の重さも感じないまま爽快に走る。ここは2015年にロードレースの全日本選手権が開催された道で、それを示すブルーラインが側道に残されている。那須町は全国でも屈指の自転車歓迎の地域だ。道を走る車もサイクリストに慣れているのか、十分な距離をとって追い抜いて行ってくれる。気持ちのよい道を気持ちよく走れるのは、なんて幸せなことだろう。


なんて最初から感慨に浸っていると、川沿いのグラベルにぶつかった。キャンポンド最初のグラベルだ。とはいっても至極スムーズで、川沿いのロケーションもあって気持ちのよいスピードで走っていける。もちろん、グラベル用に42Cの太めのブロックタイヤを履いてきたセッティングの効果も抜群だ。

ランニングでもそうだけれど、トレイルや未舗装路に入った途端に楽しくなってくるのはなんでなのだろう。オンロードももちろん好きだけれど、ちょっと道がデコボコしていたり、路面からの振動が激しくなるのに伴って原始的な喜びが湧いてくる。

未舗装路の喜びよ

およそ10kmのグラベルを走り抜けると、いよいよ登りが待ち受ける。ここまでおよそ30km、あまり登っていないことを考えるとこれからは登りと下りがメインのタフな道のりになりそうだ。

……やっぱり登りはハードだった。フレームバッグとサドルバッグ、そしてバックパックも背負っているからなかなか登りで進んでいかない。涼しい秋の気候にも関わらず、汗も止まらない。全重量が重いとこんなにも登りが辛いとは。バイクパッキング仕様なら、自分の想定よりも少し軽い最大ギアを用意した方が良さそうだ。

荷物が多いだけ、上りは大変になるのを実感する……

この日の主要な登りを終えて昼食。やはり那須地域を中心にケータリングで活動する「自転車食堂」が出張してきていて、玉ねぎが丸ごと入った暖かいスープをご馳走になった。下りで汗冷えするこの季節、人の手の入った暖かいものを食べられるのは嬉しい。

自転車乗りのお腹を満たしてくれる「自転車食堂」の昼食

グラベル、登りとひと通り走ってきた参加者にとっては、改めて自身の荷物とバッグのセットアップを考えるよいタイミング。ほかの参加者と一緒に、あれこれと語り合うランチタイムになった。私の感想としては、ギアはもう少し軽い方が良かったのと、ボトルは走行中に飲めるようにメインフレームの中に入れること、あとはなんとしてもバックパックは避ける、ということだ。カメラがあるのでしょうがない部分もあるのだが、例えばコンパクトカメラにしてフロントバッグに入れるとか、対策のしようはある。バイクパッキングにおいてはすべてが便利さと収納場所のせめぎ合いだ。どこかで割り切りは必要になってくる。

追い抜いていくクルマがいわきナンバーなのを見て、もう福島県に入ったことを実感する。ふだん県境を走ることが少ないので、なかなか新鮮な気持ちになる。雪の積もる冬のライドでは除雪の具合で県境を感じることがあるが、汗をかきかき走る今は、追い抜きざまのクルマと、看板の地名がそれを教えてくれるのだった。

DAY1ゴール地点のキャンプ場にはすでにテントが!

ゴールとなるキャンプ場には、すでに何人もの参加者がゴールしていて、テントを張ったりとキャンプの支度を始めていた。テントをレンタルした参加者にはスタッフが張ってくれるというサービスも。私も、ライドアライブに続き今回もレンタルをチョイス。バイクパッキング初心者ということで、まずはテクニックとアイテムの必要が少ない方法を選んだ。つまり、今回のバイクはテントやシュラフ、マットなどを搭載していない「軽量な」バイクパッキング仕様だったわけである。

それでも登りでヒーヒー言っていたのだから、持ち物の量とバッグの選択には改善の余地しかないということころ。これからどんなテントやシュラフを選ぶか、また悩ましく楽しいチョイスになりそうだ……。

続々とみんな初日を終えてキャンプ場へ

夕食までのひと時は、ビールを片手に参加者同士で談義が弾む。共に同じ道を走り抜けた者同士、仲間意識も芽生える楽しいひととき。前夜の北澤さんのトークを聞いて、早速コンビニでウイスキーの小瓶を買ってきたという猛者も。「かさばらずに酔うことができるバイクパッキング向けのアルコール」、という触れ込みは充分に参加者にとっても響くプレゼンだったようだ。

那須地域でサイクリストのためのイベントを多数開催するRide Experienceらしく、サイクリストの食欲についても熟知しているようす。夜ご飯には大量の肉!そしてパスタなど炭水化物が供され、味もボリュームも大満足の夜。テーブルでもやっぱり自転車のことばかり話しているバイクパッカーなのであった。



キャンプの夜は早い。1日走ったのだからなおさらだ。テントに入る前に、明日はグラベルのきつい登りがあるよりハードなコース設定だ、と聞かされた気がするが、もうシュラフの中で気を失いかけていた。ZZZ…

(次ページ)グラベルを堪能し尽くしたDAY2 & キャンポンドに持ち込んだ荷物一覧

RIDE EXPERIENCEが主催するグラベルツアーがこの春開催!
〈キャンポンド八溝〉で充実のグラベル&バイクパッキングツアーをプロデュースしたRIDE EXPERIENCEが、2020年春に新たなグラベルのツアーを企画する。お茶どころ静岡をめぐる1泊2日で、単日での参加も可能。レンタルグラベルバイクやMTBもあるので、オフロードライドが気になる方には見逃せないイベントとなりそうだ。

Gravel Experience Japan – 新茶と古刹の遠州森ステージ
日程:2020年4月25日(土)〜26日(日)
Day1 :(4/25) 滝と山門と新茶コース
Day2:(4/26) 古社と立体茶園と小京都コース
イベント詳細・参加申し込みは公式ページから
ride-experience.com/2647?