fbpx
1月22日の愛媛県庁。記者会見のために登壇した中村時広知事の口から、「愛媛県がスポーツ文化を支える人々を応援」することが発表された。なぜ愛媛県が、なぜアスリートではなく縁の下の力持ちに注目するのか。紐解いていくと、“スポーツ立県”が現在進行中の愛媛県の姿が見えてきた。

愛媛県でスポーツというと、しまなみ海道をはじめとしたサイクリング人気がまず思いつく。国内外に広く認知されたしまなみ海道は自転車行政の嚆矢として今も地方自治体からの視察が絶えないという。ちなみにしまなみ海道をこれほどの規模に成長させたキーマンこそ中村知事なのだが、そんな知事がこれから注目していくのが、「スポーツ文化を支える人々」だという。なぜなのか?

majime_ehime
中村時広愛媛県知事

愛媛県はいま、スポーツの機運がこれまでないほどに高まっている。松山市内には、そこかしこに「愛媛マラソン」の大きなバナー。そして言うまでもなく2020年は東京オリンピック・パラリンピックの年であるが、愛媛県では続く9月に日本スポーツマスターズ大会の開催が決定している。マスターズは16市町が会場となるが、これは過去大会で最多の市町数だ。全県を挙げ横断的にイベントを盛り立てる勢いがある。

全県的なスポーツ熱の高まりには、愛媛の県民性があった

こうしたスポーツ熱の高まりは、2017年に愛媛県で開催された国民体育大会(国体)からの流れがある。この大会で県民が多様なスポーツに触れたのはもちろん、手厚いおもてなしに対するアスリートからの感謝の言葉が数多く届いたことで、県民の中でスポーツはやるもの・観るもの・支えるもの、という価値観が生まれた。毎年2月開催の愛媛マラソンでも「おもてなしを含む、参加者の方の満足度がすごく高いんです」と県職員は胸を張る。

majime_ehime

頑張る人々を支えること。自分が主役にならなくても、縁の下の力持ちでいること。こうしたまじめ気質こそ愛媛の県民性だと気付いた県は、昨年より「まじめえひめ」と題して県民にフォーカスを当てた動画プロジェクトを進行中だ。愛媛県にとってスポーツ年となる2020年は、満を持してスポーツに焦点を当てる。この度発表されたそのコンセプトムービーには、ジュニアスポーツの指導者、競技用義肢の製作者、スポーツボランティアの養成者らの思いが表現されている。

ふだんはスポットライトの当たらない愛媛県のスポーツ文化の担い手たちの声を聞くと、スポーツ熱の高まりには、その裏で活躍している人がいることに気付かされる。「アスリート・ファースト」が声高に叫ばれる世論にあって、「サポーター・ファースト」な視点は新鮮だ。公式サイトには彼らの取り組みも紹介されている。

また同時に、「まじめえひめ賞」の創設も発表された。2020年の第一弾として愛媛県のスポーツを裏側から支えている人々を表彰するとしており、自薦・他薦を問わないという。こういった取り組みを経てさらなる縁の下の力持ちが注目されることが期待される。応募期間・方法などは愛媛県まじめ課まじめ係まで。

2020年の先も、スポーツを愛する県として

オリンピック・パラリンピック、そして日本マスターズと2020年の愛媛県はスポーツ花盛りだ。しかし気になるのは、スポーツ立県としての愛媛県の2020年以降の取り組みだ。大規模なスポーツイベントのレガシーをどう活かすことができるのだろうか。中村知事は過去の事例を挙げる。

majime_ehime

「(スポーツイベント後のレガシー活用について)ずいぶん前から考えてきました。2017年の国体の後には障がい者スポーツの全国大会がありました。ここで使用する用具などは、通常は大会後の用途がないとしてレンタルするのが一般的なのですが、愛媛県ではあえて購入いたしました。それは、この大会が終わった後にも県が障がい者スポーツに幅広く取り組んでいくという、メッセージです」

通常はレンタルで済む用具を購入するとなると、相応の予算がかかる。だがそれを国体における施設整備の工夫によって捻出したという。既存施設の改修や再使用を念頭において準備を進めたが、中でも象徴的なのがプールだ。

国体基準となる深さ2mのプールが県内になかったことから新設を決めたが、深さ2mでは競技後の一般利用が見込めない。そこで一般的なグラスファイバーではなく、移転が可能なステンレス素材の成型プールを製作。仮設の松山市内で競技を終えた後、内子町に移され今は町営プールとして活用されているという。深さを1mにすることで国体のレガシーが別の市に生かされた。資源とコストを抑えながらも、競技の記憶は県内に息づいていくことになる。

majime_ehime
「まじめ」な県民性がスポーツイベントのレガシーを受け継いでいく

中村知事は言う。「大きな県として財政力は弱いかもしれませんが、身の丈にあった取り組みの中で知恵を絞り、スポーツに対する情熱を失わずに取り組みを進めていきたいと思います」

すでにサイクリングにおいては世界的な目的地となっている愛媛県。2020年、そしてそれ以降もあらゆるスポーツ好きにとってのディスティネーションとなる可能性を大いに秘めている。

STAY HOME STAY FIT