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アディダスの循環型生産プロジェクト〈FUTURECRAFT.LOOP〉の第2世代において、初めて実際に履かれたランニングシューズが新しいランニングシューズへとリサイクルされた。プロジェクトの現在地と、完全リサイクルに向けた課題を取り上げる。

2019年4月にアディダスが発表した新シューズ〈FUTURECRAFT.LOOP〉は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)を単一素材として使用し、接着剤を使用しないことで100%リサイクル可能を謳った新機軸のランニングシューズだった。

アディダス〈FUTURECRAFT.LOOP:GEN2〉

実際に履かれたランニングシューズが、初めて新しい一足に生まれ変わった

アディダスは2019年5月に、CREATORSと呼ばれる世界中のランナーが実際に走って履き古した〈FUTURECRAFT.LOOP〉を回収。集められたシューズは6月にクリーニングと粉砕処理、溶解処理を経てペレットへと姿を変えた。今回発表された「第二世代」〈FUTURECRAFT.LOOP:GEN2〉の一部にこのペレットが使用され、新しいランニングシューズへと生まれ変わった。

粉砕・溶解されたペレット。もとは第1世代の〈FUTURECRAFT.LOOP〉だ

8月から10月にかけてアッセンブルされた〈FUTURECRAFT.LOOP:GEN2〉の中で、第一世代の〈FUTURECRAFT.LOOP〉の再生素材が使われたのはシューアイレット、タグラベル、アウトソールなどで全体の10%ほどにあたるという。

最終的に目指すは、100%のリサイクル

アディダスジャパンでCSRシニアマネージャーを務めるアンジェラ・オルティス氏は、最終的にシューズの100%リサイクルを目指していることを強調した上で、〈FUTURECRAFT.LOOP:GEN2〉現状の成果を挙げる。

アディダスジャパン CSRシニアマネージャーのアンジェラ・オルティス氏

4月の〈FUTURECRAFT.LOOP〉発表時に目標とされたのは、2021年の一般販売。そのため、今回の〈FUTURECRAFT.LOOP:GEN2〉の発表はそれに向けた進捗報告的な意味合いが濃い。その意味で、ひとつ大きな課題として浮かび上がったのは、テクニカルな問題よりも、シューズの物理的な回収スキームの確立だという。将来的には、一般ユーザーの履き終えた靴を集めなければならないが、今回200足の〈FUTURECRAFT.LOOP〉を回収する段になってそのプロセスの明確化と交通整備の必要性を強く感じたという。

そしてランニングシューズである以上、パフォーマンスを担保するというテクニカルな問題も抱える。アスリートが信頼をおいて使用できるよう、アディダスは製品各部にパフォーマンス・スタンダードを定めているが、〈FUTURECRAFT.LOOP〉のリサイクルTPUを用いたパーツでこの基準をクリアできるのは、前述のアイレットなど、全体の10%ほどにとどまる。この数値を向上させ他の箇所にも使用できるようにし、最終的には100%のリサイクルシューズを目指す。


アディダスが目指す2024年への布石として

〈FUTURECRAFT.LOOP〉は2021年の一般販売を目指すが、アディダスにはより大きな目標がある。それは、2024年に全製品でバージンプラスチックを不使用にすること。そのためにも、TPU100%再生のテクノロジーがその牽引役となるのは想像に難くない。


「スポーツウェアが二度と埋立地に行かないようにしたい」と語るオルティス氏。彼女の言葉で印象的だったのは「イノベーションは使い終わった時から始まる」という意思表明だ。ランニングシューズを数多く履き潰してきたランナーには福音のように聞こえるかもしれない。自分がボロボロにしたシューズが、再び誰かを走らせるのならそこに安堵と喜びを覚えることもあるだろう。

今回のプレゼンテーションを通じて、〈FUTURECRAFT.LOOP:GEN2〉はひとつの成果でありつつも、まだ不完全であることが強調された。このことは、逆説的にイノベーションが現在進行形であることを示している。引き続き、〈FUTURECRAFT.LOOP〉が100%のリサイクルを達成するまでのプロセスに注目していきたい。

アディダスランニングアドバイザーの湯田友美さんは、第1世代の〈FUTURECRAFT.LOOP〉で20km強を実際に走ったという。「暑い日にも蒸れず、不快感なく走れました。ソールはBOOSTフォームで反発力がある一方、アッパーの素材感は他のシューズとは違っていて、今後の進化が楽しみです」とコメント
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