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2019年が、スポーツにおけるどんな1年だったかを種別ごとに振り返る企画。ラストはア ウトドアアクティビティでありながら、ライフスタイルやカルチャー的な側面でも楽しむ 人の多いトレイルランニング。『mark』でも多くの記事を手掛けてくれたトレイルライターの 礒村真介さんが個人的な視点も込みで10大トピックとして振り返ります。

1:上田瑠偉、スカイランナーワールドシリーズ年間ランキング世界王者!

このトピックスをお伝えできる日がくるなんて。ホームで行われた初戦・粟ケ岳スカイレースを秒差で制すると、世界一の登りを武器に、上田瑠偉(26)が大暴れ。イタリア・リモーネで行われた伝統の最終戦でも逆転勝ちをおさめ、年間王者に。2019年はサロモンが独自のゴールデントレイルシリーズというシリーズ戦を展開していたため、競合揃いのサロモンアスリートとの勝負が少なかったと本人も自覚するところだが、まごうかたなきワールドチャンピオン。オールスター級のメンバーが揃うであろう、2020年7月に行われるスカイランニング世界選手権での一発勝負が今から楽しみだ。

快心の走りでSWS優勝を勝ち取ったゴールシーン。本人にとっても歴史の1ページを刻んだ燦然と輝く瞬間。
Photograph:SHO FUJIMAKI

2:市民ランナー・小原将寿がUTMBで表彰台に

鏑木毅(51)が切り拓いたUTMBへの道。2012年に表彰台に登って以降、アジア人選手はなかなかトップテンに入ることは適わなかった。この長い冬の時代にピリオドを打ったのは、本業はサラリーマンである小原将寿(37)。世界中のプロトレイルランナーとのハイレベルな接戦をサバイブし、23時間で8位に輝いた。精神的な壁を取っ払ってくれた快挙に心からお礼を言いたい。ありがとう&おめでとう!俺たちだってやればできる!

鏑木毅以来のUTMB表彰台。「10位以内は意味がない」と攻め続け、見事念願を叶えた。
Photograph:RITSUKO ICHINOSE

3:鏑木 毅が再びUTMBへと挑むNeverプロジェクト、完結

鏑木毅が、もう一度UTMBへと挑むことを発表したのは今から2年以上も前のこと。その長期プロジェクトがついに完結した。先日よりムービー最終章も公開中だ。パフォーマンス面では下り坂にあるアスリートの挑戦が、全盛期以上に熱心なファンの注目を引きつけ、多くの人の心を揺さぶった。これぞまさに“プロのアウトドアアスリート”ではないだろうか。

順位では表せない充実の表情を見せたゴールシーン。3位になった頃も、今回も、この人の挑戦が、100mileレースであり、UTMBの魅力に引き込まれる人を増加させている。
Photograph:RITSUKO ICHINOSE

4:ファットアダプテーションを試す人が続出

パフォーマンスを上げるために、ただトレーニングでカラダを動かすだけでなく、生活習慣を見直すというアプローチをする人も多い。この一年で話題になったのは“ファットアダプテーション”だ。脂質代謝へとカラダをシフトさせるためのひとつの手段であり、「朝はMCTオイルを溶かしたコーヒーのみ」というトレイルランナーが続出した。なんていうかまぁ、こういうのもトレイルランの楽しみだよね。

Photograph:SHO FUJIMAKI
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5:大瀬和文が本場ヨーロッパの100マイルレースで優勝(4月)

ウルトラトレイル・ワールドツアーへと積極的に参戦している大瀬和文(38)が、クロアチアで行われたツアー対象レース、100マイルズ・オブ・イストリアにて見事優勝。同ツアーのメインカテゴリーレースにおいて日本人初優勝であり、そもそも本場欧州の主要ウルトラトレイル大会で日本人が優勝したのは2012年の山本健一(ウルトラピレネー)以来だ。この流れが同世代のライバルを刺激し、その結果小原将寿のUTMBにつながった。

6:世界初のトレイルランニング漫画『カゼキル』連載スタート(6月)

WEB漫画の主要サイトにて、本橋ユウコ先生による『カゼキル~GREAT TRAILRUNNERS~』が連載開始。仕掛けたのは登山アプリの大手YAMAPによるKZKRプロジェクトだ。富士山の周りをぐるり一周する国際レースにて、ユース世代が都道府県別対抗エキデン!? 熱心なトレイルランナーのあいだでは意表をつく展開という声も挙がっているけれど、カバディやハンドボールなど、WEB漫画をきっかけに知名度を高めたスポーツには枚挙にいとまがなく、素直に応援したい。最新話は無料で読めるので、ぜひ。

Author:YUKO MOTOHASHI Project Cooperation:YAMAP

7:英国人女性ジャスミン・パリスが、モンテイン・スパイン・レースで男女総合優勝

2018年のUTMBにて授乳しながら完走したママさんランナー、ジャスミン・パリス(35歳)がまたまたやってくれた。極寒の地を約431kmもセルフナビゲーションで駆け抜ける英国のスパイン・レースにて、83時間12分23秒と従来の大会記録を12時間も縮める圧勝。2位の男子選手には約16kmも差をつけた。エイドの途中で搾乳まで行っていたというから、どんだけ!?

8:UTMFがまさかの降雪サスペンデッド→レース短縮に(4月)

そんな秋口の台風リスクを考慮して春開催へと戻ったUTMFだけど、今度は季節外れの雪に見舞われてしまう。後半の山場である杓子山が真っ白に覆われ、号砲から約24時間後に、最終到達点のエイドステーションまでの短縮レースとする決定がなされた。12時50分までにA5(勝山)へと到着していたランナー全員が完走扱いとなったことで、たとえばA6(忍野)にて「短縮レースとする決定の前に、自らドロップを宣言した選手」も一転、完走扱いとなるケースがあり、その選手たちは完走ベストを受け取っても素直に喜べなかった模様。

誰もが予想しなかった展開となったUTMF。新たな伝説が生まれた。
(C)all rights reserved, #tap2tap running, 2019. instagram @thegrdd

9:ハセツネが歴史上初の開催中止、21世紀型台風が猛威を振るう(10月)

山という自然をフィールドにするトレイルランは、日本列島を直撃した「猛烈に強い台風」の影響をモロに受けた。倒木等によりトレイルが通行困難になり、各地のレースが開催中止に。なかでもトレイルランの日本選手権的な立ち位置であるハセツネCUP(日本山岳耐久レース)には台風19号が直撃し、27年の歴史上初の開催中止に。多くのランナーが涙をのんだ。–自然には勝てない– を思い知らされたのだ。

自然と向き合うスポーツとして、改めてトレイルを走る意味を考えさせられた出来事だった。
Photograph:RITSUKO ICHINOSE

10:山本健一がついにプロ転向(5月)

山岳系ウルトラトレイルシーンにおける日本のエース、ヤマケンがついにプロの道へ。高校教師の職を辞して、サポートメーカーのひとつフーディニの契約アスリートに。時間的な制約から解き放たれたヤマケンのさらなる活躍に胸を高鳴らせたい。そのひとつとして、2020年は欧州のトレイルランナーなら誰もが憧れる某ロングトレイルにて、皆がアッと驚くようなチャレンジを予定しているとかいないとか…。

Photograph:SHO FUJIMAKI
5月に公開した記事はこちらから。