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登りのパワーと下りの高いテクニックが
必要とされるスカイランニング

ここで改めてスカイランニング、スカイランナーワールドシリーズについて触れておきたい。上田が年間王者を勝ち取ったシリーズ戦は〈スカイランナーワールドシリーズ〉。2003年からスタートしている。

もっともポピュラーな年間シリーズといえば〈UTMB〉や〈WESTERN STATES ENDURANCE RUN〉などのウルトラトレイルを中心に行っている〈UTWT(ウルトラトレイルワールドツアー)〉が思い浮かぶが、SWSはその名の通りスカイランニングの世界一を争うコンペティションだ。

ではスカイランニングとはどういったレースを指すのか?トレイルランニングとは何が違うのか?スカイランニングの周りに身を置いている人は別として、その定義を熟知している人はそう多くはいないように思う。

スカイランニングは“走る”競技というより、いかに速く山を“駆け登り、駆け下る”かを競う競技。端的に言えば“スピード登山”という表現になる。水平移動距離よりも獲得標高、水平移動に対して垂直距離、標高差が重要な要素となる競技だ。国際スカイランニング連盟(以下:ISF)〉の定義では

コース内に傾斜30%を超えるパートを含み、またコースは登攣難易度Ⅱ級 (※三点支持を要するレベル)を超えない範囲で行われること

というのがひとつ大きな条件とされている。コースはトレイル、岩場、鎖場、時には雪渓、スクランブリング、舗装路でもなければ道無き道のようなところも走る。場合によっては(レースによっては)ヘルメットや手袋などの装備が必携とされるし、アイゼンを使うこともある。競技の基準として水平移動の速さはプライオリティが低いことから、標高2000m以上の高山、そして急峻な斜面のある山をコースにしていることが多い。ただ、標高が2000mに達しないコース(その高さの山がない国)でも、最小で平均斜度6%を保って最高標高地点に到達することができればスカイランニングとして認められる。そしてアスファルト率は全体の15%未でなければならない。

トレイルランニングは幅広く使われることが多く、UTMBのようなピークハントを繰り返すレースもあるが、登山道、林道、農道、砂利道などの不整地を走ること全般を指し、スカイランニングのように斜度に重きをおいたものではない。実際スカイランニングのことをトレイルランニングと大きくくくっている人もいるが、定義としてトレイルランニングは陸上競技のひとつであり、世界陸連(WA)傘下の団体が主管。登山から生まれたスカイランニングは山岳競技のひとつで、国際山岳連盟(UIAA)傘下の団体が主管している。競技特性が異なる。スカイランニングはトレイルランニングの枠にとどまらない(枠からはみ出た)エクストリーム中のエクストリームスポーツという表現が当てはまるだろう。

(上)鎖場やガレ場はもちろん、「ここ、本当に走れるの?」というようなパートが必ずコースに組み込まれているのがスカイランニング。(下)壮大な景色の中、レースによっては手を使ってよじ登るような急斜面も。

スカイランニングの競技種目

国際スカイランニング連盟(ISF)が定めるスカイランニングの競技種目は大きく分けて以下の3種。

1 スカイ
距離が20km以上、49kmまで。累積標高差1300m以上。
20km以上のレースをスカイレース、30km以上累積標高差2000m以上(かつ優勝者のタイムが五時間未満)になるレースはスカイマラソンと分けられる。
国内における代表的なレース:〈粟ケ岳スカイレース〉〈北丹沢12時間山岳耐久レース〉〈スカイライントレイル菅平〉など。

2 ウルトラ
距離が50km以上、99kmまで。累積標高差3200m以上(制限時間16時間以内)の長距離レース。このカテゴリーのレースはウルトラスカイマラソンと称される。
国内における代表的なレース:〈ひろしま恐羅漢トレイルin安芸太田〉〈美ヶ原トレイルラン〉〈志賀高原エクストリームトレイル〉など。

3 バーティカル
水平移動距離5km以内で最小平均斜度25%以上(一部は33%以上を含む)のレース。
距離5km以内で垂直方向に1000mUPする大会、バーティカルキロメーター(VK)が一般的となっている。
国内における代表的なレース:〈上田バーティカル〉〈尾瀬岩鞍バーティカルキロメーター〉など。

他、大会としてはスカイスピード(100m以上の獲得標高差を一気に駆け上がるレース。平均斜度33%以上)や、スカイスクレイパー(屋内外問わず階段を使ったレース。平均斜度45%以上)、また、バイクまたはマウンテンバイクと、バーティカルまたはスカイランニングをコンバインドするドゥアスロン競技のスカイバイクと、サイクリングかスキー、もしくはクライミングとスカイランニングのコンバインドをチームで争うスカイレイドもスカイランニングの大会として認められている。

日本では古くは富士登山競走があり、2006年にワールドシリーズ戦として開催されたOSJおんたけスカイレースによって、スカイランニングという概念が広まった。現在は50を超える国と地域にISFに加盟する団体があり、日本では2013年に日本スカイランニング協会(JSA)が設立され、2014年にISFに正式加盟。2015年からシリーズ戦としてスカイランナージャパンシリーズ、またシリーズ戦とは別に日本選手権もスタートしている。世界にはSWSがあり、また2年に一度行われている世界選手権がある。

(上)(下)スカイランニングの大会の中でも随一の熱狂度で知られるゼガマ(イタリア)。コース途中の山岳パート、花道を作り、ランナーを煽り、応援する。写真は2018年大会のもの。

2019 スカイランナーワールドシリーズ スケジュール

今年行われたスカイランナーワールドシリーズのスケジュールは以下の通り。

〈2019 ミグラン・スカイランナーワールドシリーズ〉
<4月>
第1戦 粟ケ岳スカイレース(日本)- 33km(累積標高2400m)
※降雪によりコース短縮(23km(累積標高1600m)

<5月>
第2戦 ヤディンスカイラン(中国)- 32km(累積標高2819m)
第3戦 トランスバルカニアウルトラマラソン(スペイン)★ – 74km(累積標高4350m)
第4戦 スカイレース・デ・マセイシン(フランス)- 27km(累積標高1980m)

<6月>
第5戦 マデイラスカイレース(ポルトガル)- 56km(累積標高4100m)
第6戦 リビーニョスカイマラソン(イタリア)★ – 34km(累積標高2700m)
第7戦 オリンパスマラソン(ギリシャ)- 44km(累積標高3200m)

<7月>
第8戦 バフエピック トレイル(スペイン)★ – 42km(累積標高3325m)
第9戦 ロイヤルウルトラスカイマラソン(イタリア)- 55km(累積標高4141m)
第10戦 スカイレース コマペドローサ(アンドラ)- 21km(累積標高2280m)

<8月>
第11戦 トロムゾ スカイレース(ノルウェー)- 57km(累積標高4700m)
第12戦 マッターホルン ウルトラックス(スイス)★ – 24km(累積標高2800m)

<9月>
第13戦 ザカップスカイレース(イタリア)- 27km(累積標高2650m)
第14戦 ピリンウルトラスカイレース(ブルガリア)- 66km(累積標高4400m)

<10月>
第15戦 スカイピレネー(スペイン)- 37km(累積標高2575m)
最終戦 ザ・スカイマスターズ(イタリア)- 27km(累積標高2600m)

※★印は〈SuperSky Race〉

4レース+最終戦の計5戦のポイントで年間ランキングが決定。最終戦までの15戦は、何レースでも参戦して良いが、獲得したポイントの高い4レースの合計ポイントで争われ、年間ランキングのTOP30が最終戦へ進める。

ほか通常のスカイレースで男女上位3位以内入賞者や、〈SuperSky Race〉で男女上位7位入賞者、各国シリーズ戦の男女年間チャンピオンなども最終戦へ進む権利が与えられる。15戦内にはボーナスレースとして4戦〈SuperSky Race〉があり、そのレースはポイントが倍(2レースまで有効)。最終戦のポイントは2.5倍とされた。

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RUY UEDA

1993年、長野県大町市生まれ。佐久長聖高校出身。度重なる怪我により3年間満足に走れずに卒業。早稲田大学に進学するも競争部には入部せず、「楽しんで走りたい」との想いから陸上競技同好会に所属。「10代最後の思い出づくり」として出場した『柴又100K』でコロンビアスポーツウェアにスカウトされ、トレイルランニングを始める。 2014年の日本山岳耐久レース(ハセツネCUP)で大会新記録で優勝。その記録は未だ破られていない。 2016年からスカイランニングの世界へ。U-23世界選手権で優勝、アジア選手権も制覇。今年悲願にしていたSWSでの総合優勝を勝ち取る。瑠偉の名はサッカー“ドーハの悲劇”があった1993年、10番を背負っていたラモス瑠偉から取ったもの。正式にはは“RUI”だが、ラモスの英語表記がRUYだったことから、レースネームでは“RUY”と表記する。

【上田瑠偉 ブログ】 Don't think, feel

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