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トライアスロン界の生ける伝説、デイブ・スコット。アイアンマンにおける歴史の創出者であり、このスポーツのあり方を変えた第一人者は体系的なトレーニング理論を駆使する指導者としても知られる。11月中旬に森永製菓トレーニングラボで行われたアスロニア主催のトレーニングイベントのため来日したスコット氏にトライアスロンの現在とその魅力を訊いた。
トライアスロンのトレーニングセッションのため来日したデイブ・スコット

デイブ・スコット氏の筋骨隆々としてぴしっとした佇まいからは、彼の65歳という年齢はうかがえない。1980年にIRONMANで初出場・初優勝、それも過去の記録を圧倒的に塗り替える鮮烈なデビューで、その後は世界選手権を計6度優勝。やはり世界選6勝のマーク・アレンとの熾烈なライバル関係は語り草だ。デイブ・スコットの登場が、IRONMANをチャレンジスポーツからコンペティティブスポーツに変貌させたとも言われる。その快活な受け答えには、このスポーツへの溢れんばかりの愛が溢れていた。

トライアスロン30年で最大の変化はバイク

OYM:デイブさんが第一線で競技をされていた頃(1980年代)と、今とでトライアスロンにおける変化はありますか?

デイブ:一番の変化はバイク(自転車)だね。テクノロジーの進歩で機材は大きく様変わりした。私の時代にもディープリムはあったが、今やバイクはエアロダイナミクスを全体で追求したものになった。ランのタイムはこの30年、それほど大きく変わっていないがバイクではタイムはどんどん更新されている。

私たちの頃はバイクの平均速度は40km/hくらいが最高だったが、今や43km/hというところまで来ている。これは、ロングの180kmにすると4時間半かかっていたのが今は4時間10分を切るまでになっているということ。一方で、ランニングは大きな進化というよりも、全体的に遅くなっている。今年IRONMAN世界選手権で優勝したヤン・フロデノのランは2時間42分強だったが、私たちの頃は2時間40分台だったからね。フロデノはハーフディスタンスの大会でハーフマラソンを1時間6分で走っているから、フル2時間半は出せると思うけれど、まだそこまで行っていないね。

OYM:その時代と現在とで、戦略上の変化は見られますか?

デイブ:私の頃は、バイクパートでは違反しない範囲で距離を保ちながらも先頭グループにいることが重要だった。だが現在はバイクパートでライバルの足を使わせてランを有利に進めようとする戦術もあり、無理して先頭グループにつくとランで大崩れする、なんてことも見られるようになってきているね。先頭パックにいるだけが正解じゃなくなった。

バイクパートの重要性が増している近年のトライアスロンシーン

OYM:いまのレースシーンをあなたが競技者として走るなら、1980年代の現役時代とはトレーニングの内容は変えますか?

デイブ:変わってくるね。だって私が現役の時は、町にトライアスロンをやっている人間なんて私だけだった(笑) ずっとひとりで練習していたんだ。今の環境ならたくさんのアスリートが周りにいるし、一緒にトレーニングするのが自然だよね。そしてその方がずっとトレーニングは効果的なものになる。

トレーニングの仕方も変わる。特にIRONMANを目指す人は、ロングディスタンスのトレーニングをやろうとしがちだが、私はそれを推奨しない。

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デイブ・スコット

デイブ・スコット

1954年生。1980年のIRONMAN世界選手権で初出場・初優勝を大幅なタイム更新とともに果たし、IRONMANを挑戦するスポーツから、競うスポーツへ転換させた。世界選手権は最多タイとなる6勝をあげており、その実績と指導者として理論を駆使する総合性から敬意をもって『THE MAN』の愛称で呼ばれる。現在はオンラインコーチング〈デイブ・スコットトライアスロンクラブ〉を主宰しながら、世界各地でもトレーニングセッションを行なっている。

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