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突如の不調、そして復活劇

 しかし、4年生になった中村は、ハードスケジュールの疲労が蓄積したのか、思わぬ不調に陥る。本来の走りとは程遠く、トラックシーズンでは思うような結果を残せなかった。そして、不調のままに学生最後の夏を迎えている。

「中村君は夏前まで苦しんでいて、8月中旬に野尻湖の合宿に撮影に行った時には、中村君の姿を見かけませんでした。その後、駒澤は1週間後に菅平に移動、また1週間後に野尻湖に帰ってくるというスケジュールなんですが、8月の終わりの野尻湖には中村くんも合流していました。同級生に迎えられ、それまでよりも表情に柔らかさが見えました。安定感の塊のような中村君が4年生になって調子を落としていて、チームメイトも中村君を支えようとしていたし、たぶん、中村君もそれを感じていたんだと思います。もちろん僕が見ているのは一部分に過ぎませんが、表情が明るかったですね。中村君はあまり感情を表に出さないし“孤高の人”のような印象がありましたが、でも実際は、周りからも愛され、同時に中村くんはチームを第一に考えながら動いていたことに気づかされました」。

8月下旬、野尻湖にて。前半戦は不調に喘いだが、ようやくチームに合流

 出雲駅伝はエントリーメンバーからはずれたが(結局、台風で中止)、全日本大学駅伝では4区区間賞の活躍でチームの4連覇に貢献。最後の箱根駅伝では2年連続で1区を担った。何度も先頭集団から遅れそうになりながら、驚異の粘りを見せ、最後は青山学院大の久保田和真(現:九電工)との接戦を制して区間賞。チームは優勝候補の大本命に挙げられながら、総合優勝を逃したが、中村は最後まで主将を務め上げた。

6区の西澤佳洋に声援を送る。「当たり前だけど、すごく応援していることに、ベタに感動した」と水上氏。声援を送ったあとは、いつものクールな中村に戻ったそう
箱根駅伝のゴール後、大手町にて。涙を流す4年生も多いなか、中村は毅然とした態度を貫いた。だが「その表情にはなんとも言えない感情が出ていた」(水上)『HEROS』には収録されていないが、水上さんのお気に入りの1枚

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