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日本選手権の5000mで早くも火花を散らしたMGC選手たち

OYM──6月、7月のトラックレースやハーフマラソンにはMGCに出場する選手がけっこう出ていましたね。

西本 日本選手権の5000mにもMGC組が出ているんですよ。

ジェニファー 5000mでも速いんですか?

西本 マラソン練習をずっとしていくと、距離に対する耐性ができる代わりに、ラストスパートでの瞬発的なスピードがどうしても落ちてしまう。日本選手権の5000mを使って、距離に対する耐性だけでなく、スピード持久力をミックスさせる。なかでも注目したのは設楽悠太選手と井上選手の2人。

桃澤 あの2人、めちゃくちゃ面白いですね。

西本 日本選手権の5000mに出場している選手の目標はそこで優勝するだけでなく、ドーハの世界陸上の標準記録を突破すること。ハイペースで推移するはずのレースなのに、選手たちはお互いに牽制し合って、なかなかペースがあがらない。途中で1人飛び出した選手がいたのに、それを後続の選手が追わなかったんです。それに対して、怒りながら前に出た選手がいまして、それが井上選手。“前を追えよ”って、怒りながら前に出る。

ジェニファー そのレース見たかったな。

西本 「日本選手権 2019 5000m」と検索すれば出てくると思う。映像ではうつっていないんだけど、ぼくの目の前でそういうシーンがあったんです。

桃澤 根はいい奴ですよ。

西本 面白いなと思ったのが、残り3周でもう1人出たんですよ。

桃澤 読めてきたぞ。

西本 もう1人は設楽悠太選手。ラスト3周で、全員、きつい顔をしているんですけど、設楽選手は笑顔で集団から飛び出してトップを走り出した。最後は抜かれるんですけど、彼はそこで勝つことが目的じゃないし、自分でレースを動かして、自分でスパートをかけられるっていうのを確認しているような走りだったなあ。日本選手権に出場できるレベルのトラックの選手をぶっちぎるぐらいのロングスパートですからね。

桃澤 MGCだけじゃなくて、東京オリンピックも見据えているんだなっていうのが、すごく分かるようなレースでしたね。MGCだけを目指しているなら、ホクレン・ディスタンス・チャレンジだけにしてもよかったはずなんですよ。そこで日本選手権に出てきたっていうのは、やっぱりMGCだけじゃないんだなって感じましたね。

西本 自分のイニシアチブでどれだけ走れるっていうのを試したのが、この2人。彼らは、MGCを勝つことだけでなく、東京オリンピックでどういうレースをしたいのか? ということも見据えている選手。

桃澤 井上選手と設楽選手、あと大迫傑選手も、6月、7月にしっかり結果を出しているので、他の選手は彼らを意識しますよね。それはでかいですよ。意識されていると、自分がレースを動かせるんですよ。集団で走るときにも、自然と自分の走りやすい位置で走れるんです。マークされていない選手が先頭に出ても、“あいつはどうせタレてくるだろうな”って追わないと思うんですけど、井上や設楽選手が仕掛けたらそのままいってしまうから、他の選手は付いていくしかないんですよね。レースを動かすっていう点でも、こうやってMGCの前に結果を出しておいたのは大きかったと思います。

西本 彼らが調整をかねて走ったトラック・レースの結果が他の選手にプレッシャーや牽制として働くこともあるからね。

桃澤 暑くなるからスローペースだろ、と思いきや、そうはならない可能性もある。7月に10000mでタイムが出ていますから、意外と、前半からハイペースになるのもあるんじゃないか、と。9月はまだ暑いんですけど、気温の上下動があるので、気温が下がっている上に雨が降ったら、もしかしたら気温が20度前後っていうこともある。そしたらハイペースになるかもしれない。そこへの対応力を考えると、井上、設楽選手、大迫選手は経験ももちろんある。

西本 設楽悠太選手は、5月の延岡(「ゴールデンゲームズinのべおか」)で10000m27分台で走っているんですよね。走り終わったあとの場内インタビューで「ゴールドコーストでフル走ります」と宣言。

ジェニファー えー! MGCの前なのに!

西本 MGCが9月なのに、7月にフルを走った。

ジェニファー そういえば、記事を見ました。

桃澤 自分もゴールドコーストに行ったんですけど、設楽選手はめちゃくちゃ強かったですよ。ゴールドコーストは、今年は異常気象で、そもそも雨が降らないはずなのに雨が降ったんですよ。気温も、例年なら13度から10度くらいなんですけど、今年は18度もあった。暑かったんですよ。で、ラスト5㎞はめっちゃ向かい風が吹いていたんです。そのなかで、設楽選手はしっかり他の選手に勝ってきた。

西本 そこで2時間7分台で走っているんですよね。

桃澤 あれより2〜3分は速く走れるんじゃないかと思いました。正直、そんなタイムで走るとは、みんな想像していなかったと思います。レース前、“コンディションが悪いし、タイムを狙うのは厳しい”みたいな雰囲気に全体的になっていたんです。優勝タイムは2時間8分台から9分台かなって。そしたら、設楽選手は7分台ですからね。スタート前に見た設楽選手は、日体大記録会とかで見るのと同じ雰囲気だったんです。たぶん今日勝つなと思いましたね。で、そのあとのホクレンで、10000mも28分台前半ですからね。

ジェニファー じゃあ、暑さにも強いんですか!

西本 なんかブレがないんだよ。

桃澤 脂肪のある選手は熱を溜め込むけど、筋肉量の多い選手って、熱を逃せるので暑いのも得意ですよね。大迫選手もそういう印象があります。設楽選手と大迫選手のように細い選手って、今回は面白いのかな。井上はちょっとごついですけど、去年のアジア大会で、暑いレースを経験しているので、うまくできるのかなと思いますね。

OYM──設楽選手はこれまで、マラソンを走った後は、大きなダメージを受けていた印象がありますが、ゴールドコーストから短いスパンで大丈夫ですかね。

西本 確かにでかかったですよね。でも、その分、昨年は休んでいますもんね。1年間、開店休業みたいな感じで、しっかり疲労を抜いてきたんだと思います。

桃澤 休むって大事ですよね。

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