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月まで走る! ランニングチャレンジが盛況

OYM:いくつかあるStravaチャレンジの中で、これはユニークだなとか驚かされたものはありますか?

ジェームズ:非常にクリエイティブで素晴らしいパートナーの方々から本当に面白いアイディアを頂いている。長い距離を走る、とかあるいは獲得標高を稼ぐ、とか様々な面白い企画があるが、最近のチャレンジですごく面白いと感じたのは、アメリカ限定だったけれども、アポロ11号月面着陸50周年記念の『レース・トゥ・ザ・ムーン(月までのレース)という50日間で50マイル走るというチャレンジだね。非常に参加率が高い人気のチャレンジだった。

自分では思いつかないような素晴らしいチャレンジのアイディアが毎月出てきて、それに挑むことができるのはStravaならではだね。RaphaがやっているFestive500 チャレンジも毎年非常に人気だし、競争するあるいは挑戦するということが世界中のアスリートをモチベートしていることがわかる。

Strava_CEO

Image:(c)Strava

日本からは100日毎日マラソン! ストーリーを語る場としてのStrava

OYM:Stravaのブログコンテンツも写真や文章の質が高いと感じます。コンテンツの選び方や作り方はどういう風に行っているのでしょうか?

ジェームズ:Stravaには社内の素晴らしいマーケティングチームと、そして4100万人というアスリートのコミュニティがあるので、この人のストーリーを伝えたいと思える個人を見つけたら、UTMFや参加するレースやイベントで彼らをフォローするんだ。その際に、ストーリーをよりしっかりと伝えるためレースにフォトグラファーを連れて行ったりすることもあるけど、レースは見ているだけでも面白いからとフォトグラファーも喜んで行きたがるね。

Strava_CEO

Image:(c)Strava from UTMF 2019

チームとしては少人数だけれども、日本では三島(Strava Japanカントリーマネージャー)がコミュニティの素晴らしいストーリーを発掘するという、素晴らしい仕事をしてくれている。上山光広さんという100日間毎日フルマラソンの距離を走り切るという偉業を達成された方のストーリーを取り上げたが、これは日本から上がってきた話がアメリカとヨーロッパでグローバルに共有され、記事になった例だね。Stravaとしては、誰かスーパースター的な有名人を取り上げるというよりも、日々並外れたことに取り組む方にスポットを当てていくというのがコンテンツ上の趣旨だ。

Stravaは「フィニッシュの瞬間を祝うだけじゃない」

OYM:Stravaのマーケティングチームのスタッフはどういう人たちの集まりなんでしょうか?

ジェームズ:私たちが擁しているチームはプロのマーケッターであったりあるいはライター、ジャーナリストとしての経験を有する人々なんだ。スポーツブランドで働いた経験のある人間もいる。ブランドの原則を、様々なコミュニケーションチャンネルを通してどう伝えるかということに長けた人間が揃っているのは、チームの強みだね。そしてアスリートに対して共感することができる人々を雇用している。セミプロレベルの競技経験を有する人もいる。

我々は自身のフィルターを通し、自身のキュレーションでストーリーを伝えていくわけだけど、単純に何かを達成したという終了地点だけを伝えるのではなく、そのゴール達成までの道のり、どんなことを経たのかという経過も伝えるということが我々のモットーだ。Stravaが祝うのはフィニッシュラインの瞬間だけじゃないんだ。

ローカライズの問題意識「グローバルなプロダクトは存在しない」

OYM:日本でもStravaの認知が上がりユーザーが増えていると思います。ローカライゼーションが成功していることの証だと思いますが、その難しさや重要さを教えてください。

ジェームズ:ローカライゼーションは非常に重要だと考えている。シンプルかつ正しく言葉を翻訳をするというのは、まずはもちろん大事なんだけど、それに加えてローカルなストーリーテリングをしていくことを大切にしている。その結果として、Stravaを日本におけるブランドとして確立できていると思う。我々は2人(ジェームズ、三島)とも以前はInstagramで働いていて、そのときにも感じたのは、グローバルなプロダクトというものは存在しないということ。あくまでローカルなプロダクトが各地にあると考えている。

だからそれぞれローカルなマーケットに対して適切で正しい投資、マーケティングを行っていくというスタンスをとっている。カントリーマネージャーとしてスタッフをこれまでブラジル・フランス・ドイツ・イギリスに置いてきたけれど、今回アジアで初めてのカントリーマネージャーとして、三島に日本を担当してもらっている。日本のコミュニティ活性化のために素晴らしく力を尽くしてくれている。

Strava_CEO

データ化するスポーツと自由の関係について

OYM:Stravaを使い始めてログを取るようになると、最初はアクティビティの記録がすごく楽しくて、走る時には欠かさずログを取るようになりました。ただ、たまにガーミンの電源が切れたり、そもそも忘れてしまったりすると、200kmとか頑張って走った1日が、無かったことのようになる悲しい気持ちになることが増えました。

自転車を始めとしてスポーツはデータ管理という側面が年々増えていますが、もともとスポーツって肉体的・精神的に自由になれる良さがあったはずなのに、だんだんとデータとか数字とかに囚われてるというジレンマがあります。こういったスポーツの自由と、数字やデータやログというものが、どうやったらうまく共存できるのかご意見を聞かせてください。

ジェームズ:我々が一番大切にしている、核の部分に関わってくる問題だ。我々の思いとしては、テクノロジーあるいはデバイスがスポーツをする際の妨げになってはならない。それらは、スポーツの楽しみを促進し、助けるものでなくてはならないと考えている。最近では、世界中のアスリートがどこからともなく口をそろえて “If it’s not on Strava, it didn’t happen”(Stravaに無いなら、それは起こらなかった)というフレーズを使うようにまでなりましたが、少なくともアクティビティをしている間は、そこに全力を注いでほしいと考えています。

日本のユーザーはグローバルの2倍、動いている

ジェームズ:我々自身もスポーツに関する記録を取るということを掲げているわけで、気持ちは理解できる。けれども、我々としてはコンピュータやスマートフォン、GPSといったデバイスは置いておいて、まずはアクティビティを一番に楽しんでほしいと思っているんだ。

グローバルな統計としては、Stravaアプリの滞在時間1分につきアスリートが運動をしている時間が50分というデータがあるのだけど、日本に関して見るとアプリの滞在時間1分に対して運動の時間が115分で世界平均の約2倍になっている。我々としてはアプリの滞在時間を最大化するというところではなく、あくまでもより長くスポーツをして、楽しんで欲しいという意図をもって活動しているので、日本のアスリートの傾向は嬉しい結果を示しているね。