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実は長い歴史をもつ日本、世界で五指の強国!?

大きなトラブルもなく、無事に大会が終了した上田スカイレース。本大会のディレクターであり、日本スカイランニング協会の代表理事を務める松本大さんに、改めてスカイランニングについて訊いた。

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onyourmark(以下、OYM)
今日のレースに海外の選手も走っていましたが、競技スポーツとしてみたときに、スカイランニングはどんな国で盛んなのでしょうか。

松本
地域でいえばヨーロッパですね。スペインが一番強いと思います。やはりピレネー山脈があり、山登りの文化がある。加えてイタリアやスイス、フランス。標高は低いですがフィヨルドなどで急峻な坂の多いノルウェーなど北欧やイギリスなどの競技レベルも高いんです。あとは…アメリカですね。フィールド含め器の大きい国です。

OYM
日本の競技レベルは世界的にどのあたりなのでしょうか。

松本
日本には「登山競走」という文化が100年以上前からあります(※)。山の国でもある日本は強豪国の一つ。昨年の世界選手権、国別対抗では4位でした。2016年には3位に入っています。個人レベルではまだ世界1位の選手はいませんが、国のレベルで言えば世界で5指に入る、と言えるでしょう。

※編集部注:富士登山駅伝の前身となる富士登山競走は1913年初開催。また、本大会の開催地上田でも、1960年代に太郎山縦走リレーの名で山岳レースが開催されていた。

山遊びをもっと身近に、スカイランニングが目指すもの

OYM
今日のエリートのコースは、スタート前に松本さんから「アジア屈指の難易度のレース」という説明もありました。なぜこの太郎山でレースを開催するのか、またどうやってそのコース取りをしているのでしょうか?

松本
太郎山は上田市民にとっては馴染み深い山で、小学校の遠足で登ったりするシンボル的な山です。そういった意味で上田にスカイランニングを根付かせるためにはやはり太郎山かなと。太郎山の魅力を全国に発信できたらと思っています。

太郎山には古道や石垣が残っているんですね。かつては山の上まで桑畑があり、養蚕が盛んだった。コースの取り方については、昔の人が普段使っていた道をそのままコースにしているというのがポイントです。それでいてレースの難易度は高めに設定していますので、最後の登り返しなどは、最後の最後で『山力』が試されると言っていいでしょう。

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女子エリートのスタート。優勝した高村選手は男子でも2位に相当する快走

OYM
上りだけのバーチカルレース、下りも含むスカイレースと走ってみると辛いながらも非常に楽しめました。このレースに興味のある人は、次はどんな国内のレースに出ればいいでしょうか?

松本
日本スカイランニング協会のHPに公認大会が載っているのでまずは見ていただければと思います。本格的に取り組んでみたい方は、協会への登録と、今は全国各地にスカイランニングのクラブチームが創設され始めていまして、そこから練習やレースに出るのもよいかと思います。首都圏なら丹沢や桐生などにクラブがあります。

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OYM
選手として第一線で活躍されてきた松本さんですが、スカイランニングに惹かれて、広めようという気持ちの原動力はどこにあるのでしょうか?

松本
私は群馬県の嬬恋村出身です。子どもの頃から山に行くことが当たり前で、山は遊び場でした。日本はサッカーや野球などに比べて山のスポーツの知名度は高くありませんが、環境と選手のレベルは高い。ヨーロッパにおける自転車やスキーといったメジャースポーツのレベルに、ここ日本でも到達できる可能性を秘めていると思います。

スカイランニングを誰もが知っている当たり前のスポーツにまで押し上げて、山間部に住む子どもたちが、自分たちの町をいいなと思ったり、誇りにできるような、そういう社会を作っていきたいんです。

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表彰式の最後まで歓声を送る参加者も多かった

(文と写真/小俣雄風太)

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