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(写真 田辺信彦 / 文 神津文人 / 協力 ニューバランスジャパン

ニューバランスのレースシューズがNB HANZO V2として12月14日にリリースされる。三村仁司氏がニューバランスとタッグを組んだ、最初のプロダクトとなる。3回にわたり本作を紐解く記事の第2弾として、いよいよ「現代の名工」三村仁司氏にご登場いただこう。

往年の名選手、現役のトップアスリート。「現代の名工」三村仁司氏が作るシューズは、数多くのエリートランナーを支えてきた。三村仁司氏主宰のM.Lab(ミムラボ)は、今年1月にニューバランスとパートナーシップ契約を締結。そして、共同開発によって誕生したレーシングシューズ、NB HANZO V2が12月14日に発売される。

初代NB HANZOと比較して大きく変わったのはラスト(木型)。ニューバランスが3Dスキャンを用いて計測したデータから作り上げたラストと、M.Labが持つ数多くのランナーの足型データを基に、新しいラストを製作した。

その結果、甲周り、アーチ部のフィット性が前作よりも高まり、爪先部の巻き上げを調整したことで、指をしっかり使って乗れる、言い換えれば、“蹴れる”設計になったという。またアキレス腱周辺は緩やかなラウンド形状になり、足あたりが軽減された。既存のラストを使わないところに三村氏の並々ならぬこだわりが感じられる。

「シューズはフィッティングが第一なんです。シューズに求める機能というのは、クッション性、反発性、安定性、軽量性、耐久性、通気性など、いろいろとありますけど、それらをどれだけ向上させても、フィッティングが良くなかったら台無しになってしまうんですよ」

「だからまずはフィッティングを中心にして、そこから最良だと思われるバランスを探していくんです。例えば軽量性と耐久性というものは、どこまでいっても相反するもので、すべてを100%完璧にするというのは無理ですよ。突き詰めていけば、走るコースや気象条件でもベストなシューズというのは違うでしょう。できることは選手が故障しないシューズ、走りやすいシューズとは何なのかを考えて、ベストを目指すということなんです」

ラストと同じくフィッティングに影響するアッパーのマテリアル。通気性と伸縮性に優れた新開発のメッシュ素材は、高速走行時にもブレが少なく、高いサポート性能を発揮する。

「地面を蹴るとき、どうしてもアッパーと足は擦れてしまうもので、アッパーの素材が硬いとマメができやすいんです。できるだけ選手が故障しないようなシューズを作りたいものですから、可能な限り良い素材を作ってもらうということをやらなければいけません」

三村仁司氏と、NB HANZO V2でマラソンを走るプロランナー神野大地選手

前作のミッドソールは、クッション素材と反発素材を組み合わせた2層構造で形成されていたが、NB HANZO V2では、REVLITE(レブライト)のみを採用。1層構造に変更された。

「複数の素材を組み合わせるとノリを使う分だけ重量が増えるし、不自然さが出ていい印象がないんです。バランスの良さ、ナチュラルさを求めると1層になるということですね。十分に反発もありますし、楽に足が前に出るような設計になっています」

ニューバランスとパートナーシップ契約を結んで1年弱、「ランナーのみなさんに喜んでもらえそうなシューズがやっとできて、ホッとしている」という三村氏だが、当然これからもそのチャレンジは続いていく。

「常に現時点でのベストをと思ってやっていますが、同時に次のことも考えないといけない。私もプロですから、現状に満足せずに未来に挑戦しようという思いがありますよ」

三村仁司
1948年、兵庫県生まれ。1966年に国内スポーツブランドに入社しシューズ製造に携わる。1974年からアスリート向けの別注シューズ製造をスタート。2009年に自身の工房であるM.Labを立ち上げた。2004年厚生労働省「現代の名工」表彰、2006年黄綬褒章を受章。

NB HANZO V2 公式オンラインストア