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(写真 onyourmark / 文 根津貴央 / 協力 salomon

連載の3回目は、ハイキング編。山を自由に楽しむ「TIME TO PLAY」を実践している名古屋のグループを紹介する。名古屋をベースにグラフィックデザイナーとして活躍する中村モトノブさんと、その仲間たちだ。

ハイキング、ロード&トレイルランニング、自転車をはじめ、アウトドア・アクティビティを縦横無尽に楽しむ彼ら。遊びはボーダーレス。楽しいと思ったことをやる、というスタイルで自然を楽しんでいる。

今回集結したのは、中村さんを含む5名(男性3名・女性2名)の仲間たち。向かうは、名古屋からクルマで1時間ほどのところにある鈴鹿山脈。いったいどんな遊び方、楽しみ方をしているのだろうか。

俺たちのホームマウンテン

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「じゃあ、そろそろ行きますかー」
三重県は朝明渓谷の駐車場に到着し、それぞれが準備を終えたタイミングで中村さんが声をかけた。気合いや覚悟、緊張といったものはまったく感じられない、至って普通のトーン。ちょっと近所まで散歩に行ってくるよ、といったノリである。

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これは中村さんたちのスタンスでもあるのだろうが、慣れ親しんだホームマウンテンであることも大きいだろう。中村さんは三重県出身。地元の山ということもあり、すでに数十回(数百回?)と足を運んでいるという。

渓谷沿いの舗装路をしばらく歩き、登山道へと入っていく。樹林帯がメインだが、ところどころで開けた箇所を通る。沢をまたいだりとバリエーションも豊か。しかも地質が特徴的で、このエリアは花崗岩が中心。その白い表面に陽光が反射し、きらびやかな世界が広がっている。勾配もゆるやかで、たしかに散歩気分で楽しめる道なのだ。

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一行は、雑談しながらのんびり歩いていく。途中、他の登山者にも会ったのだが、みんな重装備の人ばかり。その姿は対照的だった。もちろん、どっちがいいというわけではない。山に登る人もいれば、山を歩く人もいる。挑む人もいれば遊ぶ人もいる。中村さんたちは、きっと後者なのだろう。
根ノ平峠(標高803m)を越えると、下り基調。ほどなくして愛知川(えちがわ)にぶつかる。ここがタケ谷出合である。

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「ここがゴールです」と中村さん。
歩きはじめて一時間ちょっと。鈴鹿山脈にはさまざまな山があるので、てっきりどこかの山頂に行くのかと思っていたのだが、そうではなかった。聞けば、ここで過ごす時間こそが最高の贅沢であり、一番の楽しみなのだそうだ。

何よりも「美味しい」が大事

「やっぱり、そうめんでしょ!」
何がやっぱりなのかはわからないが、到着して早々、バックパックからそうめんを取り出し、茹でる準備をはじめた。中村さんは言う。

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「ここは別に展望がいいわけじゃないんです。でも僕たちは絶景を見るために山に来たわけではなくて。何よりも『美味しいこと』が大事なんです(笑)」

茹でる人、冷やす人、薬味を切る人・・・自然と担当が決まり、連携しながら手際良く進めていく。そして、薬味たっぷりそうめんが完成!思ったより美味しいね、などと言いながら舌鼓を打つ。

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食後は、樹林帯の平らなスペース(見るからに最高のテント場!)で自由時間。ハンモックを張って眠る人、ドリップコーヒーを淹れる人、それぞれ思い思いの時間を過ごす。テンカラをしに川を遡上する人もいた。

実は、女性ふたりは、これまでアウトドアに興味がなかったという。でも、このハイキングに参加してから変わったそうである。

「仕事とかで疲れていても、いざここに来てみるとすごくリフレッシュできて。終わってみると、不思議と行って良かったなあってなるんです」
「私は3年くらい前に連れてきてもらったんです。山なんてツラいだけかと思っていたんですが、これなら私も楽しめる!って思いました」

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かれこれ2〜3時間まったりしていただろうか。もはや、行動時間より休憩時間のほうが長くなっている。でも、これこそが彼らならではの山の楽しみ方なのだ。

自由な山遊び

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「僕たちのハイキングは、まったく生産的ではないんですけどね」と中村さんは笑う。

たしかに、痩せるわけでもないし、スキルアップにつながるわけでもないし、達成感が味わえるわけでもない。でも、それがいいのだと思う。

何かにつけて生産性や成果を求めがちな現代において、ただただ『楽しむ』という行為には意味があるし、これこそがアウトドア・アクティビティの本質でもあるはずだ。

「以前は僕も高い山を登りに行っていたんですが、森の中を歩くようになって『これだ!』って思ったんです。そして、気の合う仲間と一緒にこのスタイルで楽しむことが増えました。ソロでも来るのですが、偶然みんなと会うこともあって。沢登りに来た人、テント泊に来た人、走りに来た人が、ここで一緒になったりするんですよ。面白いですよね」

タケ谷出合のお気に入りのスペースで過ごす5人は、とにかく楽しそうだった。それほど、みんなにとって大切な空間なのだろう。それぞれにとっての自分の居場所のひとつ、という感じが伝わってきた。これは、まさしくサードプレイスと言えるのではないだろうか。

中村さんたちを通じて、山の楽しみ方の自由さを教えてもらった気がした。すでに山に登っている人も、これからやってみたい人も、彼らのスタイルを試してみてはいかがだろうか。きっと遊びの幅が広がるはずだ。

※次回は、雪山アクティビティをフィーチャーします。お楽しみに!

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中村モトノブさんとその仲間たち
グラフィックデザイナーである中村モトノブさんを中心としたグループ。名古屋を拠点に、ハイキング、ランニング、自転車をはじめ、さまざまなアクティビティを楽しんでいる。中村さんは「HISAYA MINAMI RUNNING CIRCLE」「TOKAI AIR RUNNERS(TAR)」も主催。アクティビティに関連したTシャツも手がけている。https://motnorm.stores.jp

サロモンのベストギアを紹介

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シューズは、サロモンの「X ULTRA2 GORE-TEX®」。通常のトレッキングシューズよりもさらに軽快なファストハイキングのためのシューズ。スポーティなデザインで足取りの軽さを実現してくれる。

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バックパックは、サロモンの「SKIN PRO 15 SET」。独自のセンシフィット・システムは、伸縮性に加えてストラップの長さを簡単に調節できるため、フィット感と安定性が抜群。15Lの容量があるので、今回はウェア、大型のクッカー、バーナー、コーヒーセット、食材など、多くの荷物があったがすべて収納。しかも行動中もブレが少なく、快適に歩くことができた。