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現代の日本におけるヨガ人口は100万人といわれ、その人口増加に比例して、ヨガを解釈する視野もどんどんと広がりを見せてきました。シークエンスのクオリティ向上やスタイルの多様性は如実ですが、現代のヨガは、他の文化と融合させフレキシブルなスタイルで独自の文化として昇華させていく動きもあるように思います。

そんなことを身を以て感じたのが、先日取材に伺った「寺ヨガvol.5」でした。この日、講師を務めたのは、鎌倉のQuiet timeで『音YOGA』を主宰するkengo先生(以前の『音YOGA』レッスンの記事はこちら)。クリスタルボールの演奏とヴィンヤサスタイルのヨガを融合させた『音YOGA』を龍雲寺の本堂で体験し、心と体が浄化される深い瞑想の世界を覗いてきました。

「五感を研ぎすませココロと体が繋がる瞬間を感じよう」というコンセプトを掲げるbe my selfが主催するこのワークショップではこの日、『音YOGA』だけでなく、座禅の体験や体と地球に優しい酵素玄米を食すというプログラムも。そんな濃密な一日の様子をお伝えしたいと思います。

座禅は人生の句読点(龍雲寺 住職・細川晋輔さん)
清々しい青空が広がり初夏の澄んだ風がそよぐゴールデンウィーク序盤の5月3日。街中の賑わいとはほど遠い、「静」と対峙する時間を与えてくれた「寺ヨガvol.5」は、龍雲寺の凛とした空気のなかでの開催となりました。

音YOGAを始める前に、住職の細川さん手解きのもと10分間の「座禅」を行いました。住職の細川さんからは、座禅について次のようなお話がありました。

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「座禅は何かを得るものではなく、何かを捨てるもの。ストレスや嫌なことを心から取り除くだけでなく、幸せなことや楽しかった思い出さえも捨ててしまおうというのが座禅でございます。そうすることで心に付いている重い鎧のようなものを一枚ずつ剥がしていく。これが座禅の一番の意味になります。文章に大事な句読点、その役目を人生において座禅が果たしてくれるように思います。今日の座禅で皆様の今までの生活に“。(まる)”を打っていただければと思います。」(龍雲寺 住職・細川さん)

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「座禅では、吐く息を数えるというのが第一のルールです。息を吐く度に1から10までゆっくりと数えていきます。そうすることで、頭のなかの雑念がひとつずつ追い出されるというイメージを持って」という細川さんの言葉を、参加者はそれぞれ咀嚼し背筋を伸ばして胡座をかき、厳粛な空気が漂うなかで、10分間の座禅。
静かなるときへと導く、静から動へ打ち寄せる波のようなシークエンス
座禅により、頭と心が軽やかになったのを感じながら、いよいよ『音YOGA』です。以前、受けてみたいヨガレッスンでも2回ご登場いただいているkengo先生は、この日も快く取材に応じてくれました。kengo先生のお話を交えながら、レッスンの様子をお伝えしていきたいと思います。

レッスンでは、まずは呼吸を整えることから身体との会話が始まりました。吸う息と吐く息が身体全体で感じられるようになる頃、優しく緩やかな動きで身体をほぐしていきます。そこから徐々に可動域を広げ、ダイナミックなヴィンヤサへ。心拍と同調するかのようにテンポも上がっていき、全身を支える一本の軸に意識を注ぐと、心と身体がつながっていることに気づきます。静から動へ躍動し内側からの熱を帯びた身体は、じんわりと汗をかいていました。動から、さらなる静、無に向かうようにまた少しずつ呼吸を落ちつかせて、シャバアサナそしてクリスタルボールの演奏に入っていきます。

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“クワイエットタイム=静かなる時間に触れてもらう”というテーマでヨガを表現しているkengo先生にとって、静と動の波を体現していくシークエンスが深い静寂へ導く鍵となっています。

「心の静かな部分を感じてもらうために、徐々に肉体を解放していき、頭も心もリラックスした状態へ着実に持っていく一連の流れがあります。心身共に解放状態になったとき、クリスタルボールの音波はより深く細胞単位で身体全体に染み渡るからです。」(kengo先生)

細胞にダイレクトにアプローチする、クリスタルボールの波動がもたらす心身への作用
kengo先生がレッスン前に「今日は少し長めに演奏します」と言っていたこの日は、約20分間のシャバアサナとクリスタルボールでの演奏が行われました。シャバアサナで心身が解放され静寂が訪れるとき、kengo先生が奏でるクリスタルボールの音色が響き渡ります。鎮静化されていく脳波に同調する水晶の音と波動は、日常で耳にする情報としての音とは別次元。広大に響き渡る音の空間に身体を浸しているような感覚でした。身体からは動のパワーが放出されていくと同時に、内側からは静のエネルギーを吸収していく不思議なコントラストの中を漂っていると時間も忘れてしまい、気づけばレッスン終了。

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演奏が終わり、静かに起き上がると周りの参加者も皆、放心状態。深い眠りに落ちていた人も多く、全身全霊が脱力する時間を思い思いに味わっている様子でした。この日の参加者には『音YOGA』初参加という方も多数で、感想を伺ったところ「無意識に音が体に入ってくる感覚」や「普段のヨガで感じるリラックスの状態を越えて心が洗われた」など異次元の体験に驚きの声。クリスタルボール×ヨガの相乗効果によりもたらされる深いやすらぎを体感されたようでした。「身体の細胞に浸透する」というクリスタルボールの音色は、古来より「宇宙の音」とも称され、その神秘の音に隠された心身への効能には確かな根拠があるそうです。

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「その名の通り、クリスタルボールは水晶からできています。水晶は、地球のなかの鉱物としては最も振動性・音響の安定性が高いと言われているんです。“音”というのは聞こえるものですけど小さな“振動”は耳では聞こえない。音として聞こえていなくても、クリスタルボールの微細な波動は体内に一週間程度残ります。音の電波率は水中のほうが高く、体内にはたくさんの水分があるからです。細かな振動は体内の細胞を揺らし身体のなかの周波数を正常な状態に調整してくれるので、ホルモン系のバランスを整えたり、リラクゼーション作用をもたらします。演奏中に爆睡してしまっても身体にダイレクトにアプローチするので、大丈夫です(笑)」(kengo先生)
色んなカルチャーを含んでひとつの洗練されたカルチャーを作るという流れを、自身のヨガでも表現していきたい(kengo先生)
クリスタルボールの音との融合という新しいヨガの在り方により「自身が表現したかったヨガを具現化することができた」とも言っていたkengo先生。近年、日本のヨガがブームから文化に変化しつつある流れを肌で感じているそうで、次のようにも話してくれました。 

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「10年程前に僕がヨガを始めた頃は、文化の源であるアシュタンガヨガが主流で、インドの教えが絶対という雰囲気がありました。だけど、次第にヴィンヤサスタイルが伝わり、それぞれの表現したいことや個性を持ってシークエンスを組んだりしていくことが可能になったんですよね。僕はストリートカルチャー育ちというのもあって、色んなカルチャーを含んでひとつの洗練されたカルチャーができあがるというものに惹かれるし、自身のヨガにおいても、もちろん伝統に敬意を称しながらそういうものを表現していきたいです。」(kengo先生)

日本の文化、インドの伝統、古来より伝わる神秘の音。異なる文化の交わりの中心には、どこか通じている精神性があるのは確かで、この日、そういったものを理屈ではなく五感で感じ取ることができた気がします。ふと気付くと、最近悩まされていた偏頭痛がいつのまにかすっかり姿を消していて、なんとも爽快なゴールデンウィークの幕開けに相応しい一日となったのでした。


〈お問い合わせ〉
■ 寺ヨガ ワークショップについて
主催:be my self(HP
電話番号:03-6412-8381

■ 音YOGAについて
Quiet timeホームページ