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私たちがスポーツしたり、生活したりするときのエネルギー源となっているのは糖質(炭水化物)と脂質、たんぱく質の三大栄養素。その中でもメインとなるのは糖と脂肪ですが、少ない容積で沢山蓄えられる脂肪と違って、水溶性の糖はかさばるので体内に保存できる量が限られる、という話を以前ご紹介しました(→トレーニング座学03)。

その中で、糖は、肝臓と筋肉にグリコーゲンという形で蓄えられていて、脂肪よりも素早くエネルギーを取り出すことが出来るので、スポーツするときは、とても大事なエネルギー源、でもありました。

フルマラソンやトライアスロンのように長時間に及ぶレースでは、体内に貯蔵しておける糖だけだと、高いパフォーマンスを維持出来なくなる場合があります。そこで、脂肪からのエネルギー供給や、レース中の糖質補給が必要になるのですが、出来ることならレース直前は普段よりも多くのグリコーゲンを体内に蓄えておきたいものです。

そこで考えられたのが、カーボローディング(グリコーゲンローディング)です。これは、レース数日前の、食事のバランスや練習量を調整することで、普段よりも多くのグリコーゲンを筋肉と肝臓に詰め込んでおこう、というアイディアで、マラソンランナーやトライアスリートがレース前に実践している方法です。

カーボローディングの考え方

カーボローディングには、大きく分けて二通りの考え方があります。一つは古典的な方法、もう一つは現在推奨されている新しい方法です。

古典的な方法では、レース1週間前くらいから糖質の摂取量を減らし(低糖質食)、3日前から高糖質食に変えるというやり方でした。それは、一度グリコーゲンが枯渇すると、そのリバウンドで元よりも多くのグリコーゲンを蓄えようとする、という身体の性質を利用したものでしたが、低糖質食にしている間に他の栄養素(ミネラルやビタミンなど)の摂取が不足して免疫力が低下したり、体調を崩しやくなったりと、カーボローディングには成功しても、調整に失敗するということが多く見られたそうです。

その改善策として鍛え直されたものが、4日前までは普通通りのバランス良い食事を摂り、3日前から高糖質食に変え運動量を少なくする、という方法です。これであれば、体調を崩したりするリスクがなく、グリコーゲンを普段よりも多く蓄えておくことが出来ると考えられていて、現在はこの方法が一般的に推奨されています。

エネルギーの総量を変えずに、糖質と脂質のバランスを変える

持久系スポーツをしている人の普段のアスリート食は、摂取するエネルギーの総量の約55〜60%を糖質(炭水化物)から摂取し、残りを脂質とたんぱく質から摂取します。これを、高糖質食に変えるには、摂取するエネルギーの総量は変えずに、糖質と脂質の摂取の割合を変えるのです。具体的には、70%以上を糖質から摂取し、脂質の割合を15%ほどに減らし、たんぱく質の割合はそのままです。

少しの体重増加は気にしない

カーボローディングを行う時期は、テーパーリングで練習量も減っているので、エネルギーの消費が少なく、糖は普段よりも多く筋肉と肝臓に装填されていきます。糖は必ず水と結合して筋肉や肝臓に蓄えられるので、その分体重が増えてしまいます(グリコーゲン1gは約3gの水に溶けるので、400gのグリコーゲンが詰め込めたとすれば、体重は1.6kg重くなる計算です)。しかし、糖が使われれば、溶液としての水は排出されて無くなってしまうので、気にする必要は全くなくて、1〜2kgほどの体重増加はカーボローディングが成功した証明と思いましょう。

【トレーニング座学 アーカイヴ】
#01 運動強度と主観的なきつさ
#02 エネルギー代謝(1)エネルギーの正体
#03 エネルギー代謝(2)糖と脂肪
#04 エネルギー代謝(3)筋肉のタイプ
#05 乳酸とスポーツの関係、LT
#06 LTとOBLA
#07 マラソンとLT
#08 トレーニングの原理と原則
#09 トレーニングの頻度と超回復
#10 トレーニング強度 ベースとエンデュランス
#11 トレーニング強度 スピードトレーニング
#12 トレーニングのデザイン(1)
#13 トレーニングのデザイン(2)線で描くトレーニング・サイクル
#14 トレーニングのデザイン(3)量質転換のプログラム

監修者:肥後徳浩

元自転車競技選手。自転車選手時代にコーチから学んだトレーニング理論をベースに、方法よりも目的を生理学的、力学的に「理解する」ことと、体の反応を「感じる」ことを大切に、日々トレーニングに取り組んでいる。音楽レーベル「Mary Joy Recordings」主宰。
www.maryjoy.net