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今年2月にブラジルのリオデジャネイロで行われたナイキのプレスツアーでは、ふたつの大きな発表があった。ひとつは、先日の#01で掲載したネイマール選手による2013年のサッカーブラジル代表ユニフォームのお披露目イベントだ。そしてもうひとつが、NIKE FOOTBALLのニューコレクション「FC247」が3月28日に発売されるというニュース。

「FC247」は、フットサルやインドアゲーム、ストリートフットボールなどをプレーする読者には注目のシューズで、様々なコートのサーフェイスやプレースタイルに合わせてデザインされたフットウェアコレクション。“フットボールをいつでもどこでも楽しもう”というのがコレクションのコンセプトで、リオデジャネイロで行われたプレスツアーでは、まさにこのコンセプトを体験させてもらったので紹介したい。

世界各国から集まったプレス関係者は3日間リオに滞在した。到着初日、ホテルのミーティングルームに集合すると、今回のツアー主旨とスケジュールの説明があった。ナイキチームからプレス関係者に紙袋のプレゼントが手渡されたのは、そのすぐ後のこと。中を覗いて見るとフットボールウェアとシューズが入っている。「では、みなさん! そのウェアに着替えて30分後にロビーに集合してください!」。この突然の提案にはプレス関係者も驚いた。もちろん、世界中のサッカーメディアなので、サッカー愛好家ばかり。しかし、さすがに長時間に及ぶフライトのすぐ後に、ブラジルの地で自分たちがサッカーをできるなんて想像もしていなかった。

国民の80%以上がクリスチャンであるブラジル。ビーチ近くの公園にもキリストとマリアの像があった。

コパカバーナのビーチ沿いにあるラン・バイク用ロード。スケートで走り抜ける人も多い。

各国のプレススタッフたちと
毎日ボールを蹴って駆け回った
その意図とは?

着替えてロビーに向かうと、赤、緑、青、黒のユニフォームを着たプレス関係者たちが既に集まっている。さっきまではシャツにパンツ姿だったのに、お互いのフットボールウェア姿を見ては照れ笑い。“似合いますね”なんて会話も生まれている。一行はバスでMorro dos Prazeresに向かった。コパカパーナビーチから1時間弱ほどの高台にあるその街からはリオの街が一望できる。まるで天空のフットサルコートのような素晴らしいロケーションで、ゲームはスタート。配られたウェアの色でチーム分けがされていて、国境を越えたメンバーたちはフットボールを通じてコミュニケーションを行った。

もともとファベーラで、“喜びの丘”という意味をもつMorro dos Prazeresから見たリオの景色。

スモールサイドコートでフットボールをしていると、街の子供たちがあっという間に集まってくる。

山と空を感じる中でフットボールができるのが、Morro dos Prazeresのコートの魅力。

世界各国から集まったプレススタッフのリオ到着数時間後の姿。

夜はみんなでブラジルの代表的な肉料理シュラスコを食べて、それぞれホテルの部屋へ。すると、ベッドの上にはまた紙袋が置かれていた。中には、昼間とは異なる色のフットボールウェアと、新しいシューズが入っている。メッセージカードはないけれど、「明日もゲームがありますからね!」というナイキスタッフからの伝言だ。

翌日、ネイマールが出演した代表ユニフォームの発表イベント取材後、プレスメンバーたちは再びフットボールウェアに着替えた。向かったのは、レブロンにあるフットサルコート。前日は人口芝の広めのコートだったが、この日はスモール(小さな)ハードコート。新しく用意されたシューズがハードコート用だったことに納得しながらコートに入ると、華麗なリフティングさばきを見せる現地のプレーヤーがふたりいた。聞くと、ひとりはプロのフットサル選手で、この日は彼らと一緒にプレーすることになっているようだ。スモールコートでは、ひとりひとりのボールタッチが増えるので、プロ選手と対峙するチャンスも多くなる。また、より素早い判断とテクニックが求められるコートなので、プロの技術をしっかりと体感することができた。

コート環境でスタイルも変われば
身に付く技術も異なる

レブロン地区にあるスモールサイドコート。人工芝のコートの手前にはハードコートがあった。

3月28日に発売された、NIKE FOOTBALLのニューコレクション「FC247」。

「FC247」の開発者コリンさんは、スライドと実際のアイテムを見せながらプレゼンを行った。

プレゼン会場で説明を受けるスタッフとプレス関係者。次のゲームのため、みなウエアで参加。 

翌日、コパカパーナビーチに特設されたフットサルコートのミーティングルームで、ナイキの新作フットウェアコレクション「FC247」が発表された。開発者のコリンさんは、「みなさんには2日間、タイプの異なるスモールサイドコートでプレーしていただきました。いま、世界の都市では、多くのスモールサイド(コートを小さくして少人数で行うゲーム。サッカーのトレーニングに効果的に取り入れられている)用のピッチが増設されています」とプレゼンを始めました。

「小さなスペースでもできるスモールサイドゲームは、人口の多い都市部でもフットボールを気軽に楽しめるため、人気が高まっています。シューズとボールさえあれば楽しめる。スモールサイドゲームは、世界中の働く人々に、いつでもどこでもフットボールを楽しむチャンスを与えてくれます」。
 
また、世界のプロサッカーシーンにおいても、スモールサイドゲームは大きな意義を持っている、とコリンさんは続ける。「ネイマールやルーニー、イニエスタ、ロナウドなど、世界の多くのトッププロたちは、スモールサイドゲームによって、彼らの成長の糧となる技術を身につけてきました。タイトなスペースでのボールコントロールやスピードを活かしたプレー。そして1on1で負けないという自分への信頼が、プロのピッチで5人の選手を前にしても抜き去ることができるという自信に繋がっているのです」。

15歳になるまでのサッカーと
フットサルの両方を経験しながら育つ

ブラジルの子供たちは普通、15歳になるまでは11人制のサッカーとフットサルの両方を経験しながら育つそうだ。プロのフットサルプレーヤーとして活躍するシミさんと、元プロ選手のレニシオさんは「両方を経験することで、より完璧な選手が育つ」と話す。

元プロフットサルプレーヤーのレニシオ(左)さんと、現役選手のシミさん。

「11人制サッカーとフットサルはゴールもルールも違うけれど、フットボールという点では同じです。フットサルを通じて身に付く一番重要な能力はスピードです。決断力が早くなるんですよね。よく言われるのは、ボールが来る前に次のプレーを決めないと間に合わないということ。そして、ボールコントロールを活かしたドリブルです。ロナウジーニョもロビーニョもネイマールも、彼らのドリブルの基礎はフットサルで身に付いたものです。僕自身も15歳までサッカーとフットサルの両方をやっていましたが、個人技と戦術の両方を身につけることは、どちらのプロ選手にとっても有意義なことだと思っています」(シミ)

では、トップアスリートたちはスモールサイドゲーム用のシューズに何を求めるのでしょうか。コリンさんは、「FC247」を開発するにあたって、アスリートからのフィードバックも参考にしたという。

「インドアフットサルシューズ「エラスティコ フィナーレ Ⅱ」で追求したのは、裸足に近い感覚でプレーできること。皮膚のように薄くて軽い素材「NIKE SKIN」をアッパーに使うことでボールタッチの感覚をしっかりと伝え、屈曲性に優れたアウトソールによって、グリップ性と足裏でのボールコントロール性を高めました。次に、レザーの感触が好きだという人のために開発したのが「ルナ ガト Ⅱ」です。しなやかで柔らかい山羊のレザーをアッパーに使い、足とボールのなじみを良くしました。ミッドソールには無重力の月の上を歩くときのイメージで作られたクッション材「ルナロン」が使われているので衝撃吸収性が高く、素早くダイナミックなゲームを楽しむことができます。そして、最後に紹介するのが屋外のマルチなコートで抜群のグリップ性を発揮する「ボンバ フィナーレⅡ」。オールコンディションズコントロール(ACC)技術を採用しているため、雨で濡れたコートでも、高いボールコントロール力を発揮することができます」

プレゼン中、各国のメディアスタッフは真剣な表情でPCやノートに情報を書き留めていた。コリンさんはその様子を満足そうに眺めながら、プレゼンの最後に笑顔でみんなにこう言った。「昨日、ネイマールが登場した特設コートで、これからみなさんにプレーしてもらおうと思っています。準備はいいですか?」。

空の色にブラジル国旗の緑と黄色が栄える。

空の色にブラジル国旗の緑と黄色が栄える。

プレーを終えて、各国のプレスチームと記念撮影。この数時間後、それぞれの国に帰って行った。

ボールとシューズさえあれば、24時間、7日間、いつでも、どこでもプレーできるというのが今回のキャンペーンのメッセージ。仕事モードでリオに集まったプレススタッフたちは、3日間の滞在中、仕事の合間に、毎日、フットボールを楽しんだ。世界の都市にスモールサイドゲームのコートが増えているこれからの時代。仕事とスポーツの関係は、こんな風により密接になっていくのだと思う。普段からバッグの中にシューズを1足入れておく。たったそれだけのことで、仕事の効率がいつもより上がるのかもしれない。

『sports travelling ブラジル リオデジャネイロ #01 国民を支えるスポーツの存在』

(文 松尾仁 / 写真 阿部健)