fbpx

縁もゆかりもない福岡へ
純子さんダンカンさん夫妻は昨年の震災後に移住した

純子さんは10年前までフライトアテンダントとして世界中を飛び回っていましたが、心身のバランスの不調からヨガを始め、ヨガにはまり、インストラクターをしていました。美しいヨガの先生はだいぶ説得力があります。その上、教え方も非常にうまく、出す"気"(!?)も良いと評判で、毎回たくさんの生徒が駆け付けてヨガマットが重なる程人気でした。

ダンカンさんはカリフォルニア生まれの中国系アメリカ人。父親が俳優、母親はエコロジストという特殊な環境の中、アメリカ、アジアなど色んな国を転々と暮らしていました。父親の影響からマーシャルアーツを始め様々な武道を習得し、エキサイティングな幼少期を送ります。現在はヨギックアーツ※の創始者であり、ヨーロッパやアジアを中心に世界各国でワークショップを行っています。

震災後、福岡への移住

2年前、ふたりは結婚し、ダンカンさんは京都から、純子さんは神奈川から鎌倉山に住み始めます。しかし、昨年の妊娠中に起こった震災により、子どものことを考えて福岡に引っ越すことに。

「震災後は一時的に福岡のウィークリーマンションを借りましたが、犬がいるのでそこからまた神奈川に戻り、福岡でも2度引っ越したりと、妊娠中に4、5回引っ越しを繰り返しました。しかも、ダンカンが海外出張中だったため、ほとんどひとりで。妊婦さんは安静にしてた方がいいとお医者さんに言われたけど、私はものすごくアクティブな妊婦だったかも」

ダンカンさんは仕事で海外へ行くことが多く、空港が市内にあるという利便性を重視して福岡へ。親戚や友達はほとんどいなく、身重な体の上、全く見知らぬ土地で不便なことばかりでしたが、昨年7月には双子の男の子が誕生しました。

「ヨガのインストラクターや経験者は、好き嫌いはともかく(笑)ダンカンのことを知っている人が多いので、好意的な人たちは福岡の情報を提供してくれたり、ワークショップに参加してくれたり、街でも公園でもよく声をかけてくれます。だから、ヨガをきっかけに知り合うことが多いですね。最近はそれに加えて双子の赤ん坊と一緒に出歩くので、声をかけられる確率が高く、それは福岡という土地柄からか、子どものお陰か、ダンカンの影響かわからないけど、友達の輪はまだ浅いけど広がってきました。出産した大学病院でもヨガに興味のある先生や、スリアの広告を見て話しかけてくれる方がいたり、ヨガが私たちは何者かを伝えてくれるんだと思いました」

※ヨギックアーツ ヨギックアーツとは、呼吸と動作を同調させるビンヤサシステム(アシュタンガヨガがベース)とマーシャルアーツと呼ばれる武道、更にタイ式マッサージ(ボディワーク)の要素を組み合わせて、ダンカン・ウォンが考案したメソッド。クライアントにはマドンナやスティング、ビョークなど数多くのセレブリティに支持されている。

ヨガでつながったコミュニティ

「福岡に来てから、まず外国人でもOKな物件をジヴァムクティ公式指導者のヒキパーク先生に紹介してもらいました。ヨギックアーツのつながりだと、ダンカンが不定期のワークショップを開催させてもらっているヨガスタジオのUNIVAや、yogalimt※代表のシホちゃん。yogalimtのスタジオもかっこ良くて、同じ母親同士なので主に環境に対するディープなトークを交わしています。他にも色々ありますが、ヨガをきっかけに福岡での生活はだんだん心強くなってきました」

ヨガによるコミュニケーションは
国を超えても本質的な部分は変わらない。

「ダンカンの仕事でドイツ、イタリアなど欧州へ行った時に感じたのは、言葉がうまく伝わらなくてもヨガを一緒に受けると同じ達成感を共有できるせいか、距離が縮まる気がします。文化や人によって違いはありますけどね。
カリフォルニア在住のダンカンのお姉さん、カマラさんがKIDOという子ども向けのヨガを教えているのですが、パペットを使いながら英語のライム(韻、言葉)に合わせて気持ち良く身体を動かすので、楽しくてとても人気があるんですよ。日本では東京、京都、福岡でもワークショップをしています。
福岡で出来たママ友たちは、身体を動かしたかったり、ストレス発散としてヨガに興味があるみたいで、しかも子どもと一緒に出来ると尚更だから、私も怒濤の育児ピークが落ち着いたら、ベビーヨガや親子ヨガを自分の出来る範囲でやっていきたいですね。今後どこに行っても、どんな移住先でも自分のいる場所でヨガを教えられたら嬉しいです」

※yogalimt 福岡市中央区赤坂にあるヨガスタジオ。
http://www.limt.jp/yogalimt/top.html

改めてヨガの魅力は何ですか?

「私は今回、妊娠と育児で体の変化があって、しんどい時が多くて、まだ育児真っ最中だけど、だいぶヨガに助けられています。ヨガで身体を元に戻すと、呼吸も深まって精神的な安定感が増すんです。以前はいつもいっつもヨガをして健康だったので、その先のスピリチュアルなことが魅力だと感じられたけど、今では最低限のコンディションに心身を整えてくれるツールとして役立っています」

近い将来、ダンカンさんが長年住んでいた京都か、海も近く自然あふれる糸島※(さびれた田舎ではなくて、イカした田舎だったそう)への移住も考えているそうです。

「これから、子ども達には、世界には色んな国があって、色んな人種、様々な生活があることを知らせたいし、自然の叡智を学んで身につけて欲しいから、環境に恵まれた土地で過ごしたいと思っています。
バケーションには家族みんなでキャンピングカーの旅をしたり。ヨガ、呼吸法をおばあちゃんになるまで教えていけるといいな」

※糸島 福岡県西端にある市。サーフスポットもあり、カフェや工房が点在するエリア。様々なアーティストも在住している。

プロフィール
Junko Saito 齋藤純子
ヨガとの出会いは20代後半。ヨガアーツレベル1ティーチャートレーニングを修了し、International Yoga Allianceの認定ヨガ講師。ヨガウェアブランドsuriaなどのモデルも務める。以前はハタヨガを指導していたが、現在は猛烈育児中!!

Duncan Wong ダンカン・ウォン
10代の頃にヨガと出会い、以後20年以上に渡り自己鍛錬とインストラクターとしてティーチングスキルを磨き、独自のヨガであるヨギックアーツを生み出した。いまや世界中で実践され、アメリカやヨーロッパ、アジアを中心に、自らワークショップやティーチャーズトレーニングを開催している。

2012年1月から関西各所でワークショップツアー。1月28日(土)東京・祐天寺、1月29日(日)埼玉にて新年ワークショップツアーを開催。
duncan-wong.com www.yogicars.jp

(撮影 末石直義/文 藤岡茜)