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2012年のスポーツはこれから始まるといっても良いでしょう。いまや正月の風物詩となっている駅伝競走。元旦の全日本実業団ニューイヤー駅伝に始まり、2日、3日の箱根駅伝、そして15日には女子、22日には男子の都道府県対抗駅伝と続きます。

なかでも注目したいのは箱根駅伝。正式には、第88回東京箱根間往復大学駅伝競走といって、東京丸の内をスタートして箱根の芦ノ湖までの往復10区間217.9kmを、大学生ランナーが母校の伝統とプライドをかけてタスキを繋ぎ走り抜きます。出場できるのは前回大会でシード権を獲得した10校と予選会を通過した9校、そして関東学連選抜の計20チーム。いずれも関東の学生トップレベルの選手たちです。

<箱根の醍醐味>

箱根駅伝とともに大学三大駅伝と呼ばれる出雲駅伝(6区間44.5km)や全日本大学駅伝(8区間106.8km)に比べると、箱根の総走行距離は217.9km、1区間の平均距離が20km以上と長く、往路と復路の2日間で争われるのもこの大会だけ。また小田原から芦ノ湖まで標高差864mを駆け上がる5区23.4kmの山登りは、この駅伝の最大の山場であり、数多くの名勝負が生まれてきました。山登りに強いスペシャリストを擁するチームはこの区間で他のライバル校を圧倒し、そうでないチームはタイム差を最小限に抑えるのに必死です。それが多くのファンを魅了して止まない箱根駅伝の醍醐味です。

今回の出場校の中では、東洋大、駒沢大、早稲田大の三校の実力が突出していると言われています。しかし他の出場校にチャンスが無いわけではありません。先月発表された各チームの区間エントリー表を見ながら、今大会の見所を幾つか挙げてみたいと思います。

<三強による優勝争いの行方?>

早稲田大学
前回大会の覇者であり、昨シーズンは三大駅伝全てを制した王者=早稲田大ですが、今シーズンは主力に故障者が続出してしまいました。その結果出雲と全日本の両駅伝では精彩を欠き、ともに3位。渡辺監督の描いた二年連続三冠の夢は潰え、今シーズンはいまだ無冠です。しかし主力の八木や志方が復帰し急ピッチで調整を続けていることから、チームは全体的に調子を上げてきていると言えるでしょう。箱根連覇を狙う早大の作戦は、先手必勝で序盤から主導権を掴み、他のライバルにプレッシャーをかけること。1区に2年生エースの大迫傑を投入し、最初からトップに出る狙いです。さらに2区に平賀、3区に矢澤とエース格を序盤に固め、前半から攻撃的な走りが見られそうです。それでも昨シーズンよりもはるかに強力になった東洋大、駒大を抑えて連覇するためには、やはり故障上がりの主力が本番までにどれだけ調子を上げてくるかがカギとなりそうです。

東洋大学
前回は早大との壮絶なデッドヒートの末、わずか21秒に涙した東洋大。今季のスローガン「その1秒をけずりだせ」という言葉からは、一人一人があと1秒速く走れば勝てる!というチーム全員の優勝への執念が感じられます。今シーズンは出雲駅伝を制し、全日本は2位。今大会の最注目選手である「新・山の神」柏原竜二は今回も5区で、4大会連続の区間賞獲得と、自身の持つ区間新記録に挑みます。さらにチームは1区に宇野、2区に設楽兄弟の兄・啓太を配し、柏原にトップでタスキを渡すことを目標に掲げているので、彼らの勝ちパターンがはまれば往路も総合もどちらも圧勝の可能性があり、三強の中でも優勝候補筆頭と言えるでしょう。

駒沢大学
今回の参加チーム中、選手の持ちタイムが最も速く史上最速のスピード軍団と言われる駒澤大学は、今季の全日本大学駅伝の覇者です。出雲、全日本の両大会を見ても、今シーズン最も勢いがあるチームであり、ロードでの勝負強さも持っています。全員がエース級と言われる選手層の厚さを誇る中、2区にはルーキーの村山謙太を大抜擢。これには大八木監督の期待の高さが伺えます。1区と3区にはともにロンドンオリンピック参加標準記録Bを切る大エース=撹上と由布を布陣。さらに、故障で一時戦線離脱していた井上と千葉が復帰し、前回同様5区と6区にエントリーされています。6区で2年連続区間賞、前回は区間新記録を樹立している千葉の下りが駒大に追い風を吹かせるか、あるいは不安要素になるのか、山の5区・6区の走りが気になります。また、今シーズン大活躍している窪田忍や、久我、高瀬といった主力を補欠に温存している駒大は復路に強いと見られ、往路で東洋大との差を2分以内に出来れば逆転優勝の可能性があります。名将・大八木監督の采配にも注目したいところです。

序盤から攻撃をしかけ先行逃げ切りを計りたい早大、山登りで大差をつけ往路を圧勝で終えたい東洋大、往路でライバルとの差を最小限に抑え、復路での逆転優勝に繋げたい駒沢。やはり三強の総合優勝争いには目が離せません。

<三強の一角を崩すには絶対エースの存在が不可欠>

東海大学
早大、駒大、東洋大の三強の一角を崩せるとしたら……。やはり村澤明伸を擁する東海大の存在にも注目したいです。同校を率いる両角監督は、2008年に全国高校駅伝を制した強豪校、長野・佐久長聖高校の監督として、東海大の村澤や早大の大迫、駒大の千葉らを育ててきた名監督。2011年度からは東海大の箱根初Vという使命を託され、自分の教え子がエースを務める同校の監督に招聘されました。前回2区を走り17人抜きで区間賞、金栗杯(最優秀選手賞)を獲得したエース村澤は、今回も2区を任されています。そして5区にはもう一人のエース、早川をエントリー。村澤、早川の強力な二枚看板で、三つ巴の戦いに割って入れるか? エースの走りに注目です。

明治大学
東海大の村澤と同様、絶対エースとしてチームを引っ張る鎧坂哲哉は、明治大学のキャプテン。今大会のエントリー選手の中では最速のタイムを持ち、ロンドンオリンピックでの活躍が期待されるなど、学生陸上界きってのスター選手なだけに注目も集まります。しかし全日本大学駅伝では腰痛のため区間4位と不調、そのためチームも8位と不本意な結果に終わってしまいました。今回も本調子ではないのか区間エントリーではなく補欠に回っています。チームは、強心臓のルーキー=大六野選手を1区、山の5区には前回3位の実績を持つ大江選手を配置しており、総合力では三強に次ぐ実力と見られています。箱根駅伝のルールでは往路、復路で合計4人まで、当日朝に選手交代が可能となっているので、鎧坂がエース区間の2区に出てくるのか、それとも他の区を走るのか、絶対エースの動向が気になります。

青山学院大学
エースの存在と言えば今シーズン大爆発しているのが青山学院大の出岐雄大です。全日本大学駅伝のエース区間2区では明大の鎧坂や早大の大迫を抑えて区間賞を獲得、ユニバーシアード・ハーフマラソンでは6位に入るなど春から絶好調の走りをみせています。青学大は、その出岐をエース区間の2区に投入し、前半から流れに乗る作戦に出ます。上位に食い込む条件は、若いパワーの爆発とエース出岐のデキ次第。

<後輩へタスキを繋ぐ、熾烈なシード権争い>

優勝争いと同じく例年ファンを盛り上げさせるのがシード権争い。総合10位以内のチームは、翌シーズンの予選会を免れ本戦に出場することが出来るので、来シーズンの出場を確実なものとするためにも、後輩たちにタスキを繋ぐためにも、何が何でも獲得したいというもの。しかし、各校の実力が拮抗している今大会では三強以外の全てのチームにこのシード権争いに巻き込まれる可能性があり、中央大や日体大といった強豪校であっても決して油断は出来ません。

前回大会では大手町のゴール手前500mまで日体大、青山学院大、国学院大、城西大の4校が8位争いを繰り広げ、先にスパートを仕掛けた国学院大の寺田がゴール直前でまさかのコースアウト。このハプニングに騒然となりましたが(ある意味で、大興奮)、ゴール直前に国学院大が城西大をかわして悲願のシード権を獲得。そのとき10位の国学院大と11位の城西大の差はわずかに3秒でした。その3秒が二校の明暗を分けたのです。

城西大学
前回11位でシード権を失った城西大学は、その雪辱を果たすために予選会に参加。7位に入り箱根本戦への切符を手にしました。今回は2区にエースの橋本、5区にはキャプテンの田村と実力のある選手を配し、シード権を奪還する意気込みは十分です。また1区には、駒大のスーパールーキー村山謙太の双子の弟、村山鉱太をエントリー。ともに宮城・明成高出身の兄弟の夢は「いつかエース区間で対決すること」。そんな弟・鉱太(城西大1区)と、兄・謙太(駒大2区)の走りにも注目したいです。

国学院大学
一方前回は劇的なラストの末に初のシード権を獲得した国学院大は、前回はアンカーを走った寺田が5区を走ります。前大会ではもっとも印象的なシーンを作った選手なだけに、彼の走りには色んな意味で注目が集まりそうです。チームとしては、エースの荻野が2区でうまく流れを作れれば、2年連続のシード権獲得も狙えそうです。

上武大学
前回大会では19位と振るわなかった上武大は、箱根の予選会をトップ通過。今季の全日本大学駅伝でも明大、東海大を抑えて6位に入り初のシード権を獲得するなど予選からの出場校の中では最も勢いに乗っているチームです。好指導、名采配で知られる花田勝彦監督のもと、総合力をつけてきた上武大は、1区に佐藤、2区にエース氏原、4区に倉田とスピードランナーを前半に固めてきました。往路で上位に食い込む走りが出来れば、総合でも大躍進の可能性があります。

今シーズンの箱根の予選会では、名門の日本大が予選落ちするという大波乱がありました。また専修大、法政大、大東大といった箱根の常連校が次々と落選し、本戦出場を果たすことが出来ませんでした。年々、各校の実力が上がりレベルが拮抗しているので、いかに名門とは言え箱根駅伝に出場することの難しさを表しています。

<関東学連選抜の意地>

予選会落選校のエース選手が集まって結成された関東学連選抜。母校が本戦出場を果たせなかった彼らにとっては、個人としてもチームとしても意地を見せるチャンスです。いま最速の市民ランナーと言われ、ロンドンオリンピック・マラソン代表を目指す埼玉県庁の川内雄輝さんも、学習院大時代にはこの学連選抜で箱根を二度走った経験があるので、ここから将来のスターが生まれるかも知れません。チームは1区に田村、2区に佐藤の日大コンビを投入し、ロケットスタートの準備OK。また4年連続で学連選抜に選ばれた松蔭大のエース梶原も力のある選手なので、どこまで上位をかき回せるかに注目したいです。ちなみに関東学連選抜が10位以内に入れば来シーズンのシード校が9校に減り、予選会からの出場校が1校増えるので、来シーズンに望みを繋ぐためにも総合10位以内に入ることが選抜メンバーの使命です。

例年になく各校の実力が拮抗し、ハイレベルで白熱した戦いになることが予想される第88回箱根駅伝。みなさんは応援している大学や、応援している選手は居ますか? テレビで応援しても良し、沿道で選手達に声援を送るのも良し。学生ランナー達の熱い走りを見て感動を共有し、彼らのタスキがみなさんのスポーツするモチベーションに繋がるように。そしてスポーツを通して最高の一年を送れることを願います。

(文 肥後徳浩 / イラスト 鈴木仁)

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