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脳は神経細胞(ニューロン)の集まり。大脳皮質だけでおよそ140億個、脳全体では1000億個以上もの神経細胞がある。神経細胞同士はシナプスという接点を作り、インターネットのような巨大情報ネットワークを築いている。

神経細胞は、二度と細胞分裂しない終末細胞(エンド・セル)の一種。終末細胞以外の細胞は、何らかの原因で壊れるとたちまち細胞が分裂してリペアしてくれるけれど、終末細胞にはこうしたリカバリー機能がない。

ゆえに脳の神経細胞は損傷すると二度と再生しないので、加齢とともに数は減っていくばかりだと長年考えられてきた。この説を最初に唱えたのは、神経科学の基礎を作り、ノーベル生理学・医学賞を受賞したラモン・イ・カハールである。

偉大なカハールの言葉から「脳細胞は1日10万個ずつ減る」という俗説が生まれた。そう聞くと心配になるが、これは「ヒゲは剃るほど濃くなる」「暗いところで本を読むと目が悪くなる」などと同じ医療系都市伝説。

たしかに歳を重ねるごとに神経細胞は減る傾向にあるが、それは自然な老化現象。健康なら、若いうちから決まった数だけ毎日脳の神経細胞が減ることはあり得ない。

それどころか、最近では脳の神経細胞も新たに分裂することがわかっている。脳内には新たに神経細胞に成長する能力を秘めた神経幹細胞が潜んでおり、細胞分裂を繰り返して新たな神経細胞となり、失われた神経細胞の埋め合わせをするのである。

こうした神経細胞の再生をサポートするのが、ランニングなどの有酸素運動。有酸素運動を行うと神経細胞から「脳由来神経栄養因子」という特殊なタンパク質が放出され、神経細胞の成長を助ける。運動はカラダにも脳にも良いのだ。

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