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青山学院大学の連覇が途絶えた今年の箱根駅伝。 「東海がくる」「東洋が王座奪還を虎視眈々と狙っている」と、前情報でヒートアップしながら、終わってみれば王者の貫禄を見せて4連覇を達成した昨年同様、「今年も最後には青学」という予想が多かったなかでの敗北は、大きなサプライズだった。 神野大地に変わる新たな山の神としての期待を背負いながら、ブレイクする走りを見せることができずに終わった竹石尚人。 今年はもちろんのこと、足が攣りながらもクレバーな対応で4連覇を引き寄せた2018年の走りですら「個人としては不完全燃焼」と語る。箱根ではまだ納得の走りはできていない。ラストイヤーとなる2020年の箱根へ、彼は何を思って過ごしているのか。合宿シーズンへ入る前に、その思いを少しだけ聞くことができた。

『大事なレースで結果を出すために』

アスリートというよりも“シティボーイ”というフレーズがしっくりくる爽やかなルックス。笑った顔はまさに少年そのもので、女性陣から人気があるのは想像に難しくない。絵に描いたような好青年。しかし、“走ること”について話が及ぶと、その目には鋭さが現れる。「改めて今年の箱根駅伝を振り返ってほしい」。その質問に彼は言葉を選ぶように答えてくれた。

「自分の責任。それしか頭の中にはなかったです。普通の走り、自分の走りができていれば、展開は違うものになっていた。そう思っています。流れを引き寄せる走りができなかった。時間が少しずつ傷を癒してくれて、走る喜びを取り戻すことはできました。それでも、ひとつ上の先輩たちへの申し訳なさは消えません。この感情は多分これから先、一生消えないものなんだろうと思います」

周知の通り、青山学院は3区で一度トップに立ちながら、4区、5区で順位を落とした。彼が言うように、“普通の走り”ができていれば、少なくとも優勝争いに絡む展開へ持っていくことはできただろう。その悔しさを消化していくなかで、彼のハートに「大事なレースで結果を出せる選手へ」というメッセージが刻まれた。

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<1月>
・天皇盃第24回全国男子駅伝(7区・13km)区間16位 TIME:38:24

<2月>
・第41回神奈川マラソン ハーフマラソンの部 35位 TIME:1:06:07
・第102回日本陸上競技選手権大会クロスカントリー競走 シニア男子10km 27位
TIME:30:46

<3月>
・第22回 日本学生ハーフマラソン選手権 58位 TIME:1:04:20

<4月>
・第35回 日本平桜マラソン(22.8km)優勝 TIME:1:10:38
・2019 上海国際ハーフマラソン 9位 TIME:1:04:56

<5月>
・第98回関東学生陸上競技対校選手権(ハーフマラソンの部)8位 TIME:1:05:56

<6月>
・2019日本学生陸上競技個人選手権(5000m)TIME:14:37:58 2組18位

<7月>
・第187回 東海大学長距離競技回(5000m)TIME:14:18:66 12組 3位

このリザルトは彼が箱根駅伝以降、出走したものだ。
トラックレースは6月と7月に5000mを1本ずつ。対して20km以上のレースはそれ以前にすでに5本。焦点は駅伝シーズンなのだろう。シーズン前半から駅伝をイメージした、長い距離へのこだわりが見える。

「安定感を求めた半年間でした。20km以上の距離で失敗しない、安定した走りをする。大事なレースで結果を出すのが当たり前になるように。それはコンディショニング含めて特に意識して取り組んだことです。これまでも、ロードを中心に取り組ませてもらってきましたが、箱根での結果を受けて、改めて自分自身に対して導き出した課題です。
関東インカレ(関東学生陸上競技対校選手権)で表彰台を狙っていたので、物足りなさは感じていますが、これまで5本、大崩れすることなく走れました。ハーフでの自己ベストはまだ出せていませんが、自信を取り戻すことができましたし、秋に向けての土台を作れたと思っています。ここからどれだけ上げていけるかですね」

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『青学のプライド』

青山学院陸上部の夏合宿は、例年通り約2週間の合宿が1回と、10日前後の合宿が2回、40日ある夏休みのほとんどを走り倒すことになった。中には運動強度を高くキープしたまま、月間走行距離が800kmにも及ぶメンバーも出るという。どの大学もそうだが、この時期は秋から始まる3大駅伝へ向けての本格的な追い込み期だ。ライバルと目される大学には学生界を代表するエースがいる。トラックシーズンの成績を見れば、今年は厳しい戦いとなると見るのが一般的だ。挑戦者としてのメンタリティをもう一度育めるか、夏の合宿期間でどれだけ総合力を引き上げられたか、青山学院のキーはそこになる。竹石もそのことはよく理解している。

「今年から、寮長をやらせてもらっています。キャプテンに比べれば仕事量は多くありませんが、この立場を与えられたことは僕にとって大きなものでした。最上級生になったことで、責任や自覚が芽生えるのは普通のことでしたが、他の選手たちの生活を見守る立場になって、視野が広がりました。常に余裕を持った振る舞いをしなければいけなくなったこともいい意味で自分を成長させてくれています。

高校時代の記録、成績でいえば、僕は全国ランキングでも100位圏外です。全国駅伝に出られるだけで満足していたレベル。青山学院を選んだのはレベルの高い選手たちと切磋琢磨したい思いからでした。意識の高さ、プライド、考えて判断する力、メンタルコントロール、人としてどうすれば強くあれるか。ここにはそれが全てあった。寮生活を通して監督や先輩から多くのことを学びました。この環境にいれば強い意識が自然に芽生えてきます。1年生の夏から2年生の夏まで、僕は怪我で棒に振っているんです。その頃の支えとなったのは先輩たちのたち振る舞いであり、与えてくれるアドバイスでした。それがあったからくさることなく、復活することができた。僕も4年生になり、その振る舞いを見せなくてはいけない。僕がそうであったように、下級生たちが、その姿を見て成長して、青学のプライドを引き継いでいってもらえるように」

『あの1日のためなら頑張れる』

取材したタイミングは就職活動真っ只中。進路について尋ねると「ほぼ決まりました」と一言。進路先、そして陸上を続けるかどうかについては、「もう少し待ってください」とだけ。真意は分からないが、将来のことよりも今、仲間とともに走る時間に費やしたいという思いが伝わってきた。

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「チームとしての目標は言うまでもなく箱根駅伝での総合優勝。もう一度返り咲くために、みんなと一丸となって過ごしていきます。その時間を大切にしたい。競技に注いできた時間を振り返って見た時に、すべてが今後社会に出ていくうえでの糧になっていると思うことがありました。その考えが浮かんだあたりから、最終年は、一日一日、後悔のない、やりきったと言える時間を送りたいという思いが生まれました。何の悔いもない一年として終えたい。たとえ満足のいく結果がでなかったとしても」

「個人的なことをいえば、今年は3大駅伝全てを走り、結果を残したいと思っています。昨年は全日本大学駅伝も走れませんでしたから。出雲、全日本で結果を残した上で、自信を持って箱根へのぞむ。それが僕が描く理想です。これまで2度箱根を走らせてもらい、誰もが経験できない興奮と感動を味あわせてもらいました。メディアの数もそうですが、20kmを超える道のりをほぼ絶え間無く観客が、自分の名前を大声で呼び、応援してくれる。ときに苦しすぎて投げ出しそうになるとことも実際あります。でもあの景色を想像すると頑張る力が湧いてくる。あの一日のためを思えば頑張れるんです。今年も走れることが確約されているわけではありません。大学内で出走する権利を勝ち取らないといけない。それでも僕は必ず走るものとして準備していきます」

『4年間で、最も多く履いたシューズ』

「大学生活で一番履いたシューズです」。そう語るシューズは〈アディゼロ ボストン〉。1秒でも早いベストタイムを目指して走るランナーに向け、軽量性と安定性をバランスよく備えた、今回で8代目になるアディダスを代表するモデルだ。「普段のjogを中心に大体の練習をこれで走ってきました。レースで履くのは〈アディゼロタクミ〉、距離走の時は〈アディゼロ ジャパン〉ですが、ボストンはホールド感とクッション、バランスが良くて気に入っていますね。アップデートされるごとにその実感が増しています。基本はjog用として使っていますが、例えば1キロを3分40秒、3分30秒くらいまで上げても、違和感がありません。怪我をする恐れなく走れる。もし〈アディゼロ ジャパン〉を練習に忘れたとしても、ボストンで十分対応できます。僕にとってなくてはならないシューズです」

アディゼロボストン8 ¥13,200

問い合わせ先アディダスグループお客様窓口 0570-033-033
https://shop.adidas.jp

竹石尚人

1997年7月1日生まれ。大分県出身。
【自己ベストタイム】

5000m:14分05秒40
10000m: 29分22秒79
ハーフマラソン:1時間04分10秒