fbpx

スポーツの域を超えた存在になる

ライルズへのインタビューは、5月11日、12日のIAAF世界リレー2019横浜大会の直後に行われたが、世界リレーでは4×100mリレーでアメリカチームのアンカーとして、2、3チームをかわして、2位でフィニッシュした。その1週間後のIAAFダイヤモンドリーグ上海大会100mでは、抜群のスタートダッシュを決めたコールマンをフィニッシュ直前に逆転し、同タイムながら優勝を果たした。今季世界最高の9秒86という記録以上に、終盤の猛追にはものすごいインパクトがあった。

sample alt

今季、シーズン序盤からフルスロットルのライルズは、昨季以上のパフォーマンスを見せてくれそうだ。そして、2020年の東京では、間違いなく最注目選手の1人だ。

「ゴールドメダルを3つ*持ち帰るつもりだ」と、ライルズ自身、東京で主役になるつもりでいる。(*100m、200m、4×100mリレーの3種目

sample alt

記録の面でも壮大な目標をもつ。

「100mから300mで全ての世界記録を破りたい。自信がないと言ってしまったら、絶対に実行できない。記録を破るためにまずやるべきことは“できる”と信じることだ」

つまりは、ボルトの持つ100m、200mの世界記録を塗り替えるということ。先に “ネクスト・ボルト” 候補と書いたが、ライルズが見据えるのは、さらにその先にあった。

sample alt

スプリンターとしての才能が溢れんばかりだが、ライルズというアスリートのユニークさは、そのキャリア構想にもある。ライルズに、将来のビジョンを尋ねるとこんな答えが返ってきた。

「最高のランナーでありたいという以上に、スポーツの域を越えて、ラッパーであったり、ミュージシャンであったり、アーティストであったり、クリエイターになりたいと思っている。私が一番好きなパフォーマーはマイケル・ジャクソン。私は、たんに“走る”というのではなく“パフォーマンスする”と考えているので、私のパフォーマンスを見たいと思われたい。ウサイン・ボルトも、最速の選手というだけではなく、スポーツの域を越える選手だったと思うが、私もみんなの記憶に残る選手になりたい」

sample alt

ライルズのツイッターアカウントのプロフィール欄には「athlete」の肩書きの他に「artist」「dancer」などの文字が並ぶが、実際、彼のユーチューブのチャンネルでは、彼がラップを披露している動画がアップされている。彼にとって “走る” ことは、それらの行為と同様、様々な表現手段の1つなのかもしれない。

スポーツという枠を取り払って、ライルズという存在を世に知らしめるために、ノア・ライルズは、走ることで世界の頂点を目指している最中だ。

ノア・ライルズ Noah Lyles

ノア・ライルズ Noah Lyles

1997年7月18日、アメリカ・フロリダ州出身。2014年ユースオリンピック200m優勝、2016年U20世界選手権100m、4×100mリレー優勝と各世代の世界大会でタイトルを手にしている。200mを得意としているが、2018年は20歳にして100mで全米選手権を制した。自己記録は100m9秒86、200m19秒65(2019年5月21日現在)。また、300mの室内世界記録(31秒87)をもつ。両親、弟も陸上選手という陸上一家に育つ。父・ケビンは1995年世界陸上イエテボリ大会で4×400mリレー(予選)に出場している。