(文 神津文人 / 写真・協力 ニューバランスジャパン

青山学院大学を卒業後、実業団を経て、昨年5月にプロランナーとなった神野大地選手。マラソンでの東京五輪出場を目指す神野選手にとって、3月3日に開催される東京マラソンは、日本代表選考レースである「MGC(マラソングランドチャンピオンシップ)」出場権獲得のために、非常に重要なレースだ。

東京マラソンでMGC出場権を得るためには、既にMGC出場権を持っている選手を除く日本人1〜3位となり、かつ2時間11分以内でフィニッシュしなければならない。日本人4〜6位となった場合は2時間10分以内のタイムが求められる。神野選手の場合は、ワイルドカードでの出場権獲得の可能性もあり、2時間11分42秒以内でフィニッシュできれば、順位に関わらずMGCへの切符が手に入る。

プロランナー人生がかかっていると言っても大げさではないレースに向け、神野選手はケニアのイテンで合宿中。標高2,300mの高地であるイテン合宿は、昨年の夏に続き、今回が2度目だ。

「去年の夏に約2か月間ケニアで合宿をしたときは、そこで強くなれるという確信があったわけではないんです。自分自身の力を考えたときに、日本で同じ練習を続けていても、すでに結果を出して先を行っている選手たちに、追いつき、追い越すことはできないだろうなと感じていました。2段階、3段階レベルアップをして、トップレベルで競うためにはどうすべきかを考えたときに、強いランナーがたくさんいるケニアという場所が浮かんできたんです。プロランナーになり、いろいろなことに挑戦できる状況でもあったので、ケニアに賭けるじゃないですけど、まずは行ってみようとなったんです」

実際にケニアへ行くと、そこにはランナーとして力をつけるために理想的だと感じられる環境があった。

「走るのに適した環境で、走れる場所がいくつもあるんです。ワンウェイで長い距離を走れるコース、アップダウンの多いコースがあって、基本的には不整地です。日本ではどうしてもロードで走らなければならないし、長距離走となると場所も限られます。2,300mというイテンの標高も、良いトレーニングに繋がっていると思います。同じキロ4分ペースのジョックでも、日本で走るのとは負荷が違うんです。それからイテンは走ること以外何もすることがない環境なので、練習に凄く集中できます。本当にやることがないんですよ、練習以外に(笑)。基本的に20時半には就寝していますから」

30km、40kmのロング走にファルトレク。スピード練習。ケニアの不整地を走る際も、足元はもちろんニューバランス。神野選手が好んで着用しているのは、現代の名工・三村仁司氏が率いるM.Lab(ミムラボ)との共同開発で生まれたNB HANZO V2だ。

「NB HANZOシリーズのシューズで僕が履いているのはRとS。スピード系の練習やレースではRを使うことが多くて、たまにSを使う感じですね。とにかくフィット感がよくて、靴紐を通して立った瞬間から自分の足とマッチする感覚があるんです」

練習をともにするケニア人ランナーからも、刺激を受けた。

「ボラレスポーツというところに所属している選手たちと練習をすることが多いんですが、練習に挑むときの目の色が違うなというのは感じます。彼らは実績のあるプロランナーたちなんですが、自分には走ることしかない、走らないと生きていけない、家族を養うことができないという覚悟を持っている選手ばかりで。そういう選手たちと練習ができるのも、ケニアの魅力だと思います」

2017年12月の福岡でマラソン初挑戦を果たし、2018年は2月の東京、9月のベルリン、12月の福岡の3レースを走り、3月の東京が5度目のマラソンとなる。トラックや駅伝とは違う難しさをマラソンという競技に感じている。

「トラックや駅伝の場合、事前の練習の内容と前日の調子が良ければ、100発100中でうまく走れるという感じでした。ですが、マラソンはコンディションがいい状態で挑んでも、42.195kmという距離、2時間を超える戦いの中でいろいろなことが起こる。初マラソンのときは脚がキツくなってしまいましたし、去年の東京はそこそこ走れたものの、自分が目指すところはもっと上だったので納得できませんでした。それ以降は腹痛に悩まされ、福岡では低体温症のような状態にもなってしまいました。もちろん自分の力不足ではあるんですけど、クリアしなければならないことが多く、難しい競技だなと感じています」

MGC出場権獲得のためには失敗ができない3月の東京マラソン。自分の中で確固たる自信を持った状態でスタートラインに立てるかどうかが大事だと、神野選手は言う。

「今まで4度フルマラソンを走っています。その時は自信を持ってスタートラインに立てたと思っていたレースも、経験を重ねる事で実はメチャクチャ自信があるという状態ではなかったと気付きました。練習量が足りているかという不安があったり、直前のポイント練習で自分が思ったような走りができなかったり、40kmを予定していた距離走が途中までしかこなせなかったり。どこかでそういったマイナス要素を、自分は結構気にしてしまっていたようです。もちろん練習不足を気にせずに力を発揮できる選手もいると思うんですが、僕は目標、課題をきっちりこなしてレースに挑みたいタイプの選手なんです。マラソンで結果を出すにはメンタル面も重要だと思うので、しっかりと準備をして、自信のある状態で東京マラソンのスタートラインに立ちたいですね」

プロランナーとして結果を出し、次の世代の選手たちにもプロという選択肢があることを見せたいという神野選手の東京マラソンの走りに注目したい。

神野大地(かみの・だいち)
1993年9月13日愛知県生まれ。青山学院大学卒業後、実業団を経て、2018年5月にプロ転向。セルソース所属。3月3日(日)開催の東京マラソンが5度目のマラソン挑戦となる。

<自己記録>
5,000m:13分56秒05
10,000m:28分17秒54
ハーフマラソン:1時間01分4秒(2017年香川丸亀国際ハーフマラソン)
フルマラソン:2時間10分18秒(2018年東京マラソン)

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