良質な睡眠が疲労を回復させるというのは、いまや一般的な常識の範疇になっている。しかし、練習と睡眠を同じトレーニングとして対等に捉えられているのは一部のアスリートだけだ。社会で働いている以上、自分の意思に反して夜間にパソコン作業をしなければならないこともあれば、練習時間が取れず睡眠時間を削ることもしばしばある。その生活に適応する睡眠サイクルを作るにはどうすればよいのか。良質な睡眠をとるためのヒントを探る。

(監修 菅原洋平(作業療法士、ユークロニア代表)/イラスト 鈴木暢男/文 黒澤祐美)

ロングレースにおいては睡眠をどのようにコントロールするかが重要。一方で、レース当日以外のときには、普段の睡眠の質を高めておけば更なるパフォーマンスアップにつながる。というわけで、実践編。睡眠力を鍛える方法を探る。

「人は遺伝子の違いにより、寝るのが得意な人と覚醒するのが得意な人がいます。まずは自分がどちらのタイプであるか、あらかじめ把握しておくことが大切です」(菅原洋平さん)

自分の睡眠特性を知る方法は2つ。ひとつは、完全なオフの日に『どれだけでも寝ていられるか』、もしくは『勝手に目が覚めてしまうか』を主観的にジャッジする方法だ。睡眠コントロールが苦手といわれているのは前者のタイプ。睡眠の質が下がっていると感じるときは、『計画仮眠』を取り入れてみるといい(次回解説)。計画仮眠で睡魔を追いやることができれば、日中の作業能率が上がり、夜は脳をリラックスモードに切り替えることができる。

もうひとつは、ノートに日々の睡眠時間を記録して、自分の睡眠位相を把握する方法。たとえば、0時から6時まで寝る日と3時から9時まで寝る日があったとする。この場合、必ず眠っている時間帯(以下、アンカースリープ)は3時から6時。1週間のうち、このアンカースリープが長くなるほど睡眠に一定のリズムが生まれるといわれている。リズムが整えば例外的に睡眠時間が前後にずれた場合でも、睡眠不足による弊害を最小限に抑えることが可能になる。これはロングレースにも応用が効く。多相性睡眠の1回をこのアンカースリープに当てることで、レースを続ける間も体内リズムを崩さずにすむ。つまり、身体にかかる負担を抑えられるはずなのだ。

それにしても今時ガジェットに頼らず記録をとるなんて、ずいぶん古典的だと思うかもしれない。その理由を菅原さんはこう話す。「睡眠は主観と客観にギャップが起こる現象です。自分では寝ているつもりでも脳波を取ると寝ていなかったり、寝ていないと感じていても実はよく寝ていたり。そのギャップが大きいほど、メンタルが不調であるサイン。自分の手で睡眠を記録することで、主観的な睡眠を可視化し、客観視能力(=メタ認知)を鍛えることができます。これは睡眠をコントロールするうえで非常に重要なことなのです」

なお、睡眠はおよそ2週間でマスキングされる。大事なレースが控えている場合は逆算して実践してみよう。

※2018/11/28発売mark10『RECOVERY FOR TOMORROW 明日のために本当の休息』転載記事

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