(写真 古谷勝 / 文 黒澤祐美 / 協力 THE NORTH FACE

クライミング初心者である信太美月さんがクライミングに向き合う様子を追いかけてきた本連載も、いよいよ最終回を迎える。はじめてボルダリングジムに足を踏み入れた時と今とでは、彼女のクライミングに対しての印象はどう変わったのだろうか。最終回では、本連載の集大成として、THE NORTH FACEとonyourmarkが主催したROCK&RUN RETREAT CAMPの様子を交え、その模様をレポートする。

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現地に到着。トレイルランニングからスタート

会場は前回の外岩ボルダリング体験をした、長野県は川上村にある「廻り目平キャンプ場」。それぞれのテントに荷物を置き着替えをすませて、さっそくアクティビティがスタート! AチームとBチームに分かれ、トレイルランニングとクライミングを交互に行う。信太さんはAチームで、トレイルランニングからのスタートだ。

トレイルランニングのアテンドを務めるのは、THE NORTH FACEアスリートである宮崎喜美乃さんと、トレイルランナーの志村裕貴さん。コースは、テントサイト近くの登山口から小川山へと続く登山道で、コース途中にある展望台までのピストン。山の中腹にはアルミのハシゴを渡る危険な箇所もあることから、登りは歩きがメインだ。淡々と続く登りに参加者たちの口数が減った頃、コーチ陣からとの激励が。「みなさん、元気ですか! ネガティブワードはNGですよ。心拍数が上がってきたら『心臓がよろこんでる』、足が疲れてきたら『足が熟成してきた』と、ポジティブワードに変換しましょう!」

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参加者に笑顔が戻ったところで、登り方講座に。
「登りはふくらはぎを使ってしまいがちですが、パワーを出すには、お尻や腿の裏側といった大きな筋肉を使う意識が大切。また、後ろ脚で蹴りながら登ると疲れやすくなってしまうので、前脚を引き上げるイメージで登りましょう」(志村さん)

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3〜40分ほど登ると分岐点に差し掛かり、そこからわずかに小川山方面に進むと消えかかった文字で「展望台」と書かれた岩が現れた。岩峰に立つと、そこには瑞牆山の荒々しい岩肌が織りなす絶景が広がっていた。来た道を戻り、傾斜がゆるやかになったところでスピードを上げて駆けおりる。ふかふかの落ち葉が気持ちいい。

はじめてトレイルランニングを経験した信太さんは、「ロードのランニングは足を止めることに罪悪感があるけど、トレイルは景色を見たり、危険を回避したり、あえて立ち止まることもあって、それが私には合ってた。綺麗な空気を吸い込みたくなる感覚とか、山のなかを流れる時間のスピードとか、すべてが気持ちよかったです」と、満喫した様子。

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いよいよクライミング、と思ったら突然の雨

 次のアクティビティに移ろうとした午後3時頃、天候が急変し雨模様に。岩が濡れてはクライミングは中止せざるを得ない。翌日の天気に期待して、Aチームは初日のアクティビティを終えた。

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 ディナータイムには雨はやみ、『さいころ食堂』の美味しいフードとお酒に舌鼓を打ちながら会話を弾ませていた。そして夜8時、トークショーの時間。第一部はonyourmark編集長とTHE NORTH FACEサポートクライマーの中嶋徹さん、THE NORTH FACEプロモーション担当の永山さん、そして信太美月さんによるトークセッション。中嶋さんの活動とスタイル、外岩を楽しむのコツ、ロッククライミングとインドアクライミングの違いなどをテーマに話が展開された。

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その中で中嶋さんと信太さんは、この日参加者と行ったボルダリングの魅力についてこう語っていた。

「ボルダリングは体格差が出るスポーツ。背が高い人と低い人では、楽に登れるルートや使うホールドが全然違うんです。一般的には高い人が有利なことが多いですが、今日登ったルートのように背の低い人がスムーズに登れるケースもある。インドアと違って自由度が高い分個性も出やすいので、自分のスタイルを発展させるという面白さがあります」(中嶋さん)

「初めてジムで登った時は、柔軟性があったお陰かスムーズに課題をクリアすることができて、「わたし、ちょっとできるんじゃない?」なんて自信がついていたんです。ところが外岩はそう簡単には登れず、ジムでついた自信が打ち砕かれました。でもそのできない悔しさとか、登りきった時の達成感が一度経験しただけでも忘れられなくて。全部ひっくるめて外岩が好き! って心から思っています。でも外岩は、安全確保やルートの情報収集、街からの岩場までの移動とハードルがちょっと高いのも事実。だからこういったイベントや普段通っているジムで、一緒に外岩に行ける仲間を見つけたいなと思っています」(信太さん)

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第二部は、引き続きonyourmark編集長と、THE NORTH FACEアスリートの宮崎喜美乃さん、THE NORTH FACEプロモーション担当の田中嵐洋さん、トレイルランナーの志村裕貴さんが登場。アスレチックな部分と文化としての魅力を併せ持っているトレイルランニングの面白さ、旅ともいえる100マイルレースで起こる数々のドラマと仲間の大切さ、マインドフルネスとトレイルランニングの関係性などをテーマにトークが繰り広げられた。

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2日目、絶好のアクティビティ日和

みんなの願いが通じたのか、翌日は見事な快晴。トレイルランニング、ボルダリング、トップロープクライミングの3種目から、信太さんはトップロープを選択。テントサイトから20分ほど林道を歩くと、右手に『フェニックス』と呼ばれる15mほどの大岩が現れる。ここがこの日の舞台だ。同じ岩に4本のロープが設置されており、参加者はそれらの課題を順にトライしていく形式。

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アテンドをしてくれたのはTHE NORTH FACEグローバルアスリートであり、アルパインクライマーの馬目弘仁さん。

「フェニックスは比較的簡単な課題もあれば、テクニックを必要とする課題もあり幅広い層が楽しめる岩です。4つどの課題でもビレイヤーが必ずサポートするので、安心して楽しんでください」

ハーネスを履き、落石から身を守るためにヘルメットを装着。登り始める前に手足を置く位置を目で見て確認し、いざクライミングスタート。遠目ではフラットに見えるホールドも、岩に近づくと大なり小なり凹凸がある。そこに足をの乗せ、思い切って踏み込み立ち上がるのがコツだ。

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参加者のほとんどがロッククライミング初心者とのことだったが、励ましあいながら皆次々と課題をクリアしていく。信太さんも、これまでの練習の成果を披露。みんなの注目を集めるなか、さすがの負けん気で、この日最も難易度の高い課題を落とすことに成功した。

「はじめて課題の岩を見たときは、こんな高さを登るの…? と焦りましたが、いざ登ってみるとロープで安全が確保されていることで安心感がありました。下からみんなに応援されると、絶対登り切ろうという気持ちが高まるし、もうダメと思うところでも踏ん張れた。仲間と一緒に登るって、いいですね」

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これまで本連載をサポートしてくれたTHE NORTH FACEプロモーション担当の永山さんも、「登りきったあとはみなさん本当にいい表情で、あらためてクライミングっていいものだなと感じました。岩の上に立つ爽快感を味わっていただけたんじゃないかと思います」と笑顔。

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1泊2日のキャンプ、そして連載を終えて

「ロック&ラン」と題し、山で遊ぶ楽しさを体感してもらった今回のキャンプ。初心者にはハードルが高そうなロッククライミングとトレイルランニングだが、誰にでも楽しめるアクティビティだと感じていただけたに違いない。「これを機に、クライミングをはじめます!」と話してくれた参加者も。

最後は信太さんに、キャンプアクティビティの感想を聞いてみた。
「みんなで美味しいご飯を食べて、いろんな話をして。アクティビティ中はお互い応援して、できたら一緒に喜んで。クライミングやトレイルランニングを通じてはじめて出会う人たちが仲良くなれるって、素直にいいなぁと感じました。私がフリーの時間にコーヒーを淹れていると、みんなが飲みたいと話しかけてくれたり、手伝ってくれたりしたのも嬉しかったな。

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正直、この連載を始める前は、クライミングってどこか地味な印象を受けていたんです。コアな人がやるスポーツで、どこか入りにくいような。でもいざジムに足を運んでみると、綺麗だし、明るいし、手軽だし、想像と違って一気に距離が近づいた気がします。今思うと、最初の一回で大きく印象が変わったなって。連載を通してクライミングの魅力を知れたこともそうですが、技術面でも、アウトドア・インドア問わず体の使い方が上手くなっているのを実感できて嬉しかったです。今後はもっと、ライフスタイルに落とし込みたい。友達を誘ってこれからもクライミングを続けようと思います!」(信太さん)

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信太美月(しだ・みづき)
1992年、茨城県生まれ。日本女子体育大学卒業。表参道にある「LATTEST」でバリスタを務めながら、フィトネスモデルとして活動中。6歳から始めたクラシックバレエは17歳まで続け、学生時代には並行してバレーボールや陸上、水泳といったスポーツも経験。現在の趣味はヨガやサーフィンとアクティブな生活を送っている。