タイムにこだわらず、風のそよぎと木々のざわめきを感じながら、気の向くままのペースで、リラックスして、走る。スロージョグを見直そう。無理なく続けられるし、結局それが一番ヘルシーだから。

(写真 若林武志 / 文 礒村真介(100miler) )

WHY “SLOW JOG”? BACK TO ENJOY RUNNING スロージョグが身体にいい理由

スロージョグに出合って、余計なものが落ちて
「走ること」それ自体の喜びに気がついた

東京マラソンは2018年大会で12回目を数えた。日本にランニングの一大ブームが起こってから、少なくとも10年以上が経過したことになる。それだけの時間がたてば、当然、マンネリに陥るランナーの声もチラホラ聞こえてくる。最初のころは自己ベストを更新するたびに達成感を感じていたけど、それも頭打ちになるし、かといって無理をすればケガをしてしまう。そんなときにSNSを覗けば、友人がサブスリー達成の報告をアップしたり、走行距離を競い合っていたり……。

「それが心理的な負担になって、せっかく始めたランニングから離れてしまうケースは多いです。生涯スポーツと言われているのに」。

金城みどりさんは神奈川県の葉山町を拠点に活動するジョギングトレーナー。地元葉山でのグループレッスンをはじめ、ビーチサイドに構えるアウトドアフィットネスクラブで裸足ランのプログラムを担当するなど、歩きの動きの延長にあるナチュラルランニングを軸に、ゆっくり走ることの大切さを説いている。

「ランニングとの出合いは学生時代。陸上部に所属していて、そのときの走りはただひたすらに追い込むというもの。高校では全国高校駅伝に出場しました。でも、それでバーンアウトしてしまって」

こうやって走る先にいったい何があるのだろう。大学時代は過食に悩まされ、卒業後にはランニングと距離を置くようになった。その後、CAとして大手航空会社に勤務。結婚、出産を経て、身体や健康への興味の高まりから再び走ることに帰ってきた。それは学生時代のランニングとはまったく違うものだ。距離や時間、ペースにとらわれず、走ることそのものをナチュラルに楽しんでいたら、過剰な筋肉や体重、その目的など、余計なものが一つひとつ落ちていった。

「学生時代の経験からやりすぎは身体に悪いと実感しました。スロージョグではタイムやペースではなく、身体と対話します。ただ
走ること、身体を動かすことが目的なので、フィールドはどこでもいいんですよ。子どもと近所の公園に行くまでを走るのでもOK。シューズもスニーカーでも何でもいいんです」

WHY “SLOW JOG”? BACK TO ENJOY RUNNING スロージョグが身体にいい理由

金城さんによるランニングセッションのフィールドは葉山の一色海岸だ。皇室の御用邸が近いこの浜は『世界の美しいビーチ100』にも選ばれ、砂浜だけでなく芝生のフィールドも広がっている。

「トレーニングランとは違って走り終わって倦怠感が残るというのではなく、心地よい運動の後味を楽しめるのがベストです。距離や時間も気にしません。やりすぎに注意して、走りたいだけ走る。鼻で息を吸って、口ではき続けられるペースの範囲で。マフェトン理論の心拍数(P124)を超えるようでは速すぎます。そもそも実業団レベルのランナーでも無理な走りでランニングを断ち切られてしまう例は少なくありません。レッスンではできるだけ身体に優しいフォームになるようアドバイスをします。ゆっくり走ればフォームも整いやすいですし、無理をしないので故障のリスクからも遠ざかることができます。今、人生100年時代とも言われていますよね。生涯にわたって自分の足で動き続けたいじゃないですか」

ランニングのメリットとは何だろうか。健康上では体脂肪が燃焼され、筋肉が適度につく。血流がよくなり、免疫力がアップする。これらはすべてスロージョグで十分に実感できるベネフィットだ。

「蹴らず、ひねらず、力まない。体重移動を生かしながら自然と前へ。女性の場合過度な筋肉がつかないので美しいボディラインにもつながります。激しいランニングはときに日常生活に支障をきたしかねません。免疫力もむしろ落ちてしまいますし」

走る目的は人それぞれ。フィジカルなスペックを上げるためでなく、身体の使い方を学び、自分を知る手段としてのスロージョグ。

全世界でスマッシュヒットし、ランニングカルチャーの一端を築いた本『BORN TO RUN』では、ヒトの骨格はそもそも速さではなく長く走るために進化したという理論が紹介されている。曰く、それがホモサピエンスの狩猟におけるストラテジーであり、生存につながった、と。

走ることがDNAレベルに刷り込まれているのであれば、ランニングそれ自体とシンプルに向き合うスロージョグこそが喜びにつながるのは、もしかしたら必然なのかもしれない。

※2018/4/20発売「mark09 カラダのミライ」転載記事



「mark09 カラダのミライ」は全国書店(一部コンビニエンスストア)と、amazon楽天ブックスなどのオンラインでご購入いただけます。また、『mark』のバックナンバー(01~08号)は、SHOP by onyourmarkからご購入が可能です。オリジナルグッズやバックナンバーも、ぜひあわせてチェックしてみてください!

オンライン販売 amazon

次号、mark10『RECOVERY FOR TOMORROW 明日のために本当の休息』は11月28日(水)発売予定!