(写真 山田陽 / 文 小泉咲子 / 協力 adidas

11月4日に開かれた第9回エコアイランド宮古島マラソン。エメラルドグリーンに輝く海やさとうきび畑といった沖縄らしい景色抜群の大会に、シューズショップ「SteP SPORTS」で働く3名が走った。シューズ大型店部門からは山ノ井幸平さん、シューズ中型店部門からは熱田智也さん、アパレル部門から草野海李さん。それぞれ異なるカテゴリのセールスチームから選抜された優秀な販売員たちである。レースのレポートに加え、シューズやアパレルを売る側としてランナーをサポートする彼らの思いを聞いた。

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今年、30周年を迎えたシューズショップ「SteP SPORTS」。「すべてのスポーツの原点は走ること」という創業者の考えの下、陸上の聖地のひとつに数えられる長居陸上競技場の近くから始まった。なかでも、「SteP SPORTS RUNNING」は、ランニングシューズに特化した専門店として、ランナーから絶大な支持を受けているショップだ。社員の9割は、学生時代に陸上競技をやっていた経験者。箱根駅伝を走った人もいる。そして、ほとんどがフルマラソン完走者だ。今回、宮島エコマラソンで走る3人もしかり。

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名古屋店で店長を務め、7回のフル経験を持つ山ノ井幸平さんには、専門店で働くプロとしての自負がある。陸上選手やランナーがStePに抱く信頼は、絶対に裏切れない。商品知識は、メーカーの営業担当からのヒアリングだけでなく、スタッフが自主的に勉強会を開き、徹底的に叩き込む。そして、何より大事なのが、実際に履いて走ることだ。

「お客様自身が走ってらっしゃるので、その実体験に、僕らが勉強で得た商品知識だけでは勝てないんです。正直、僕らが知れる情報のほとんどは、お客様も調べようと思えば、ネットで手に入れられるものでもあります。だからこそ、自分たちがちゃんと走らないとならない。その経験で得た感触こそが、お客様にとって有益な情報になり得るんです」(山ノ井さん)

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新宿本店で働いて2年目の草野さんは、小学校高学年から高校時代まで400mと400mハードルを続けた。

「新宿本店には、実業団の選手もいらっしゃいます。ランナーのお客様は、『この人は走っているんだ』という安心感を私たちに抱いてくださって初めて、いろいろ相談してくれます。走ってない人間が何を言っても説得力がないですから。アパレルについては、とくに女性は、着た時にぼてっと見えないものを求める方が多いんですが、その点、adidasのウェアは、ボディラインをきれいに見せてくれますね」(草野さん)

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柏店で働く熱田さんは、「お客様にとっていちばんいいシューズ選び」を心掛ける。

「売り場に立っていると、“攻め”のシューズ選びをする方が多いと感じるんです。背伸びをしたい気持ちはわかるのですが、本来の走力に合ったシューズをおすすめするのが僕の役目かなと。やっぱり、無理をしない“守り”のシューズを履くことが安心材料となって、結果、パフォーマンスが上がるんですよね」(熱田さん)

3人に共通しているのは、豊富な商品知識、試して初めて得られる実感、さらに、「走るのが好き」というというシンプルな思いだ。「走って得られる達成感は何にも代えがたい」と草野さん。この言葉は、全ランナーが共感するところだろう。

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自分たちが売るシューズでエコアイランド宮古島マラソンンへ

自分たちが自信を持って売ってきたシューズをフルマラソンで試せることを、とくにシューズ部門で売り上げ1位の山ノ井さんと熱田さんは楽しみにしており、自分たちが当日履くシューズについて熱っぽく話してくれた。

「僕が履くのは、『adizero Japan3』。adizeroは個人的に好きなシリーズで、2も持っていました。反発性とクッション性を兼ね備えていて、まるでスーパーボールみたいな感覚で走れます。厚底ですがとても軽いですね。よく初心者ランナーから『クッション性があって、でも軽くて、速く走れるシューズはないの?』と聞かれるんですが、全部当てはまるのがこのシューズというイメージ。スピード走も長距離走もこなせるのも、気に入っている理由です」(山ノ井さん)

3時間27分の自己ベストを持つ熱田さんが選んだのは、『adizero Boston3』。

「本来は5時間台くらいのランナー向けのシューズですが、今回は無理をせず、boston BOOSTにしました。厚すぎず、かといって薄いとも感じさせない絶妙なソールですね」(熱田さん)

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苦しかった42.195㎞での経験が今後の糧に

この大会のコースのハイライトは、5㎞地点から始まる伊良部大橋。宮古島と伊良部島を結ぶ、全長3540mのこの橋の上からは、絶景が楽しめる。手前は、サンゴ礁がくっきりと見えるほど透き通っていて、奥にいくほど青色が濃くなっていく。自然が織りなす海のグラデーションは、3人の期待を大きく超える美しさだった。

しかし、この日は最高気温28℃。遮るものが何もない橋の上は、立っているだけで汗が流れてくるほど。高低差もかなり激しく、3人はタイムを狙うのは厳しかったと振り返る。タイムは、山ノ井さんが4時間38分、熱田さんは5時間15分、草野さんは5時間38分。実は、大会出場が決まったのは、コンテストの結果が出た約3週間前。いつもの大会前とは異なり、事前にしっかり準備ができたわけではなかった。

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「あまりの暑さだったので、タイムは気にせず、楽しむことに専念しました。写真を撮りながらフルマラソンを走ったのは初めてで、観光ランとしてはすごく楽しかったです。走りながら、japan BOOSTの軽さを実感できたのもよかった。元気があるときは、シューズのおかげで貯金を作れました」(山ノ井さん)

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「フルマラソンは5回目ですが、坂が多くて、今まででいちばんきつかった。心の中で『もうフルマラソンはいいや』って思いながら走ってました(笑)。でも、ゴールしたらものすごい達成感が押し寄せてきました。これがあるからまた走りたくなるんでしょうね。今回、エイドが少なかったこともあって、サプリの大切さが身に染みました。大会に出るお客様には『予備の分も持って走ってください』と、これまで以上に実感を込めて伝えられそうです」(熱田さん)

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いちばん悔しさをにじませていたのは、草野さん。それでも溢れ出る涙を拭きながら「絶対にリベンジします」という強い決意が自然と出てきた。そして、驚かされたのが、暑さと必死に戦っていたにも関わらず、「ソールの薄いシューズを履いている人が多かった」と他のランナーが履いているシューズをしっかりチェックしていたこと。シューズを売るプロとしての視点は、どんなに苦しくても忘れていなかった。

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ショップに訪れる人も、万全にレース準備ができる人ばかりではない。マラソンは屋外競技である以上、当日の天候に大きく左右される。タイムを気にしない大会があってもいい。今回の大会を経て、3人が感じ取ったことは、今後、販売員として、そして、いちランナーとして、大きな糧になるに違いない。

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