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この週末、2018年11月17日・18日に長野県の野辺山高原で、冬の自転車レース「シクロクロス」が開催される。近年人気を集める自転車版障害物競走であるところのシクロクロスだが、その人気の火付け役が2010年に始まったこの「野辺山シクロクロス」だ。トレイルランナーやトライアスリートの間でも、冬の楽しみとして始める人も増えているというシクロクロス、その魅力に迫る。

サイクリングブームを経て、自転車は泥を走る時代に

 21世紀に入ってから、日本のスポーツサイクリングは活況を呈している。ロードレースでは2人の日本人が同時にツール・ド・フランスに出場・完走を果たし、BMXでは東京五輪で金メダルを待望される若手が育ち、最近ではトラック競技でワールドカップの金メダルという快挙の報が届いた。都心部のサイクリングロードには毎週末ロードバイクがひっきりなしに行き交う。そしてシクロクロスという競技もじわじわと広がりを見せ、日本各地で泥まみれのライダーが増えている。それも冬の寒い中に。

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階段を上る!? シクロクロスは冬がシーズン

 数ある自転車競技の中でもマイナーなシクロクロスは、ツール・ド・フランスを走るようなロード選手達の冬のトレーニングとして20世紀初頭に始まった。シクロ(=自転車)クロス(カントリー)という言葉通りに、オフロードを走る自転車競技だが、当時はマウンテンバイクなどない時代だったから、自転車はロードバイクをベースに太めのオフロード用タイヤを履かせたものを使用した。

現在も、ロードバイクと見間違うようなドロップハンドルのバイクに、最大33mmまで(50mmが標準のMTBに比べれば随分細い)のタイヤを使用することがルールとして決められている。コースは一周2.5km~3.5kmの未舗装路を1時間でできる限り周回するもので、一周のうちには必ず足を地面に着けるセクションが設けられる。が、テクニックのある選手は乗って行ってしまうことも。

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階段や急坂またシケインと呼ばれる高さのある板は、シクロクロスならではの障害物。多くの場合、そこに泥や砂、雪(!)といった困難を伴う。自転車レースなのに、自転車に乗らない時間もある障害物競走なのだ。そして障害物競走は、走っても楽しいし観ても
楽しいものである。

シクロクロス人気の火付け役「野辺山」

 1980年代後半に日本に持ち込まれたシクロクロスは、信州や関西での局所的な盛り上がりはあったものの、しばらくは知る人ぞ知る競技だった。それが2018年の今、人気を博している。その潮流を作ったレースが、2010年に始まった「野辺山シクロクロス」(正式名称Raphaスーパークロス野辺山)だ。八ヶ岳の東麓、標高1350mの長野県野辺山の滝沢牧場で開催されるこのイベントは、プロレースとしてのレベルの高さはもちろん、アマチュア部門は毎年キャンセル待ちが出るほどに、活況が目覚ましい。

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全国のシクロクロッサーが憧れ、人口2000人強の村に2日間でのべ1200人が集まるのである。ウルトラマラソンの開催地でもある野辺山は、スポーツイベントの受け入れも慣れたもの。野辺山シクロクロスのコースを作るのは地元商工会の面々だ。大工さんからラーメン屋さん、ホテルマンから農家、そして牧場主まで村を挙げて一大イベントを作り上げる。

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2017年は評判を聞きつけた世界各国の選手がプロレースのカテゴリーに出場した。シクロクロス大国チェコ、日本以上のシクロクロスブームが現在進行中のアメリカ、さらには真夏のオーストラリアからも有力選手が顔を揃え、ハイレベルかつ鮮やかな走りで観衆を魅了した。選手はコースを何周回もするし、前述のとおり階段や泥や、そのほかたくさんの障害物があるから、観ていて単純に面白い。

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観戦が楽しい。これはシクロクロス人気の一端であるが、やはり、ぜひ一度走ってみることを強くおすすめしたい。一般カテゴリーのレース時間は30分とそう長くない。

30分間の非日常へ

 しかしシクロクロスを走ってみれば、そのあまりの苦しさに驚くはずだ。オフロードでの全開走行を強いられるレースは、想像以上に苦しく痛みを伴う。真冬に雨が降ろうが雪が降ろうが、路面が泥でぬかるんでいようがレースは開催される。悪路に落車したり、ライバルの加速についていけなかったり、心臓も足も上半身も、さらには気持ちまでもがこてんぱんに痛めつけられる。

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それでも必ずやってくるゴールラインを越えると、今度はえも言われぬ充足感が満ちてくる。同じ時間と痛みを共にしたライバル達とゴール後に交わす会話には、共犯者じみた友情の芽生えがある。フツーに生きていて、大の大人が全身泥まみれになることなんてあるだろうか。大の大人が鼻水とよだれを垂らしながらモガくことがあるだろうか。自転車と人と泥と30分間の非日常へ、ようこそ。

Raphaスーパークロス野辺山観戦ガイド

参加エントリーは大会直前のため終了しているが、シクロクロスの魅力がぎっしり詰まった野辺山シクロクロスは、観戦に訪れる価値が十二分にある。17日(土)、18日(日)ともにプロ選手が出場するUCI(世界自転車競技連盟)公認レースなので、国内屈指のハイレベルなレースはどちらでも観戦が可能だ。

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17日(土)は変速機のない自転車限定のカテゴリー「シングルスピード」が開催され、世界的なトレンドとして仮装したライダーが楽しみにながら走る。こちらはお祭り的な雰囲気もあり、観戦していて特に面白い。自転車レースのイメージを変えてくれるはずだ。また、18日(日)は未就学児のカテゴリー「キンダーガーデン」が開催される。補助輪のついた自転車でも参加可で、当日エントリーもできる。観戦がてら、お子さんの自転車イベントデビュー!もできる。家族ででかけよう。

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会場の雰囲気はまるで音楽フェスさながらで、美味しい飲食ブースも多数立ち並ぶ。シクロクロスの本場ベルギーのように、ビールを片手に観戦することだって可能だ。ピクニック気分で牧場のお祭りの雰囲気を楽しみたい。なお、標高1350mにある会場の滝沢牧場は言うまでもなくとても寒い。もちうる真冬の支度をして出かけよう。雨が降ると泥になるので、長靴を履いていくのがおすすめ。

観戦のお土産には大会のアイコンでもある「泥」グッズを。これを目当てに野辺山にやってくるファンもいるとか。カウベルはシクロクロス応援の定番アイテム。牧場の雰囲気もあって、いい記念になりそうだ。

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Raphaスーパークロス野辺山 公式サイト nobeyamacyclocross.cc
公式Twitter @nobeyama_cx

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日本で開催されるシクロクロスレースは、AJOCC(日本シクロクロス競技主催者協会)のウェブサイトにまとまっている。近くのイベントをチェックしてみよう。www.cyclocross.jp

onyourmarkではシクロクロスを始めるためのコンテンツも、今後リリース予定。シクロクロスタグでチェック!

(写真:古谷勝 文:小俣雄風太)