世界最高峰の自転車レース、ツール・ド・フランス。名前こそ有名だけれど実際のところどんなレースがわからない「ツール」を、今年はちょっと観戦してみませんか? ルールを知らなくても夢中になれる、旅する美しいスポーツがツールです。OYM流観戦ガイドでお届けします。

ツール・ド・フランスとは?

「フランス一周」を意味する、世界最大にして最高峰の自転車ロードレース。毎年7月の3週間、毎日およそ200kmを走り続け毎日のレースの優勝者と、合計約3600kmを走っての総合優勝者を決める。オリンピックとサッカーワールドカップと並ぶ、世界三大スポーツイベントに数えられることも。その距離や運動時間、自転車ロードレースの競技特性から『世界で最も過酷な競技』とも言われる。

世界で最も過酷な競技、というフレーズはいろんなスポーツで耳にすることがある。アイアンマン、UTMB、etc.etc…。過酷でないスポーツなんてない、というのもひとつの結論。しかし諸説あるものの、ツール・ド・フランスを走る選手が1日に消費するカロリーはおよそ6,000kcalと言われており、それが3週間連続するのだからその過酷さは推して知るべし、である。下の写真は、昨年のツールを走ったパウェル・ポリャンスキ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)が大会3週間目に自らの足を写したもの。いかに消耗して走っているかがわかる。

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本国フランスではツールに出る選手のことを「路上の囚人」と表現することも。これは1920年代の新聞記事から端を発したもので、およそ100年が経った今でもこの表現が通用することに、大会の本質がなんら変わっていないことを思い知らされる。

ツール・ド・フランスの舞台

「フランス一周」を意味するのだから、フランスを一周することが原則だが、ジツのところ近隣諸国を走ることもある。そしてコースは毎年変わる。コースに関しての暗黙の決まりごとは、次のとおり。

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・最終ゴール地点がパリ・シャンゼリゼ通りであること。
・おおよそフランス一周を描くルートを1年ごとに時計周りと反時計回りで走る
アルプス山脈ピレネー山脈で、「山岳ステージ」がそれぞれ数日間開催される
・一人きりで走らなければならない個人タイムトライアルが最低1回はある

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空から見るフランス一周旅行として楽しめる

ツール・ド・フランス観戦が好きな人がハマったきっかけとして、意外なほど多いものに「景色がキレイ」がある。レースが1日200kmを走る中で、当然いくつもの街を通り過ぎ、歴史的建造物の側を走り、また雄大な大自然を駆け抜ける。ツールには観光大国フランスが誇る数々の風景を世界中に見せる、という要素もある。それを支えるのがヘリによる空撮で、映画制作チームが監修する映像美は、圧巻の一言。他のレースにないツールならではの魅力となっている。自転車に乗らないけれど、ツールを見るのが好きな人が多いのも頷ける。

開催都市は自治体の誘致合戦!

3週間に渡り、移動していくツール。毎日違う街をスタートし、違う街にゴールしていく。ツールのスタート/ゴール地点を巡っては自治体の誘致合戦となるが、特にグランデパールと呼ばれる開幕初日は、世界中から大きな注目を集める。フランス国外であることも多く、近年では2017年にドイツのデュッセルドルフ、2016年にはフランス屈指の観光名所モン・サン・ミシェル、2015年にオランダ、ユトレヒト、2014年にイギリス、リーズなどがスタート地点になっている。いずれも観光アピールや、自転車の街としてのプロモーションなど、イメージ向上が狙いだ。華やかなグランデパールは、自治体にとって相応の価値がある。

今年は、フランス・ヴァンデ地方のノワールムティエ・アン・リルという街がグランデパール。フランス自転車競技の最も盛んな地域のひとつだ。

ツール・ド・フランス、3週間の構成

3週間続くツールは、例外もあるがだいたい次のような構成となっており頭に入れておくと観戦がスムーズになる。ステージ、というのは毎日の「区間」を表す自転車用語。初日は第1ステージ、5日目は第5ステージと呼ばれる。だいたいのことろ、第21ステージが最終日でパリにゴールするステージとなる(年によって若干の変動あり)。

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1週目(第1〜第8ステージ)……基本的に平坦なステージが続く。しかし単調になりがちなので、第4ステージとか第7ステージとかで急な上り坂や、石畳のコースが取り入れられて変化がつけられる。第7or第8ステージが土日となることが多いので、ここに大会1週目のポイントとなるコースが盛り込まれやすい(観戦者が多くなるから)。
1週目を終えた月曜日……この日に大会期間中に2回ある休息日のうちの1回が設定されることが多い。

2週目前半(第9〜第12ステージ)……起伏のあるステージが盛り込まれる。調子の悪い有力選手が最初に脱落して、チームとファンをがっかりさせるのがこのタイミング。
2週目後半(第13〜第15ステージ)……アルプスかピレネーでのガチンコ山岳ステージが連続する、大会を占う重要な数日間。あまりにも過酷な山岳コースで総合優勝候補の選手たちが火花を散らす、見どころステージ。
2週目を終えた月曜日……2回目の休息日が設定されることが多い。山岳で疲弊した選手たちが休める、最後の1日。

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3週目前半(第16〜第17ステージ)……アルプスからピレネー、あるいはその逆へ移動していく、つなぎのステージ。起伏ある平坦基調で、山岳では勝てない選手が奮起する。
3週目後半(第18〜第19ステージ)……もうひとつの山岳決戦となる数日間。大会も佳境で選手たちもボロボロ。極限の意地の張り合いと超人的な走りを目撃しよう。

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第20ステージ……最終日の前日には総合優勝の行方を左右する個人タイムトライアルが設定されることが通例。総合優勝者が陥落することは少ないが、表彰台争いにおいて劇的な変動が起こることしばしば。
第21ステージ……大会最終ステージは、パリ・シャンゼリゼ通り。3週間のレースの完走を喜ぶ選手たちのリラックスムードで始まり、最後はシャンゼリゼの石畳でガチンコのスプリント勝負となる。大団円、凱旋門を背景にした表彰式も見もの。

ツール・ド・フランスの見方

全部で21ステージ、3週間ほぼ毎日行われるレースを、22チーム・176名の選手が走るツール。3週間を通して最も速かった選手が「総合優勝」となり、自転車ロードレース最大の栄誉を得ることになる。しかしツールで不思議なのは、この総合優勝を狙える選手というのが、実質5名ほどしかいないことで、その他の170名は、別の目的でツールを走っているということ。そのことが観戦をややこしくも、面白くもしている。

ツールは毎日のステージで「ステージ優勝」が争われる。区間優勝とも呼ばれ、1つのステージを勝つこと、それだけでも世界最高レベルのツールでは大変なことであり、名誉なことである。このステージを専門で狙う選手が、170名のうち100名くらいはいる。とりわけ、スプリンターと呼ばれるゴール前の瞬発力に優れる選手はここに分類される。

総合優勝を狙う選手は、毎日のステージで勝つ必要はない。コツコツと上位でゴールを積み重ねていき、最終的にパリで最も合計タイムが少ない選手が総合優勝となる。そのためには、タイム差のつきやすい山岳ステージと個人タイムトライアルでともに強さを発揮できるオールラウンダーと呼ばれる脚質を備えている必要がある。軽量な方が有利な山岳と、筋力を必要とする重量級が有利なタイムトライアルの両立は本当に難しく、それゆえに彼らがオールラウンダーと呼ばれ、またツールの総合優勝はわずか5名ほどにしか現実的ではないものとなる。総合優勝者には黄色いジャージ「マイヨ・ジョーヌ」が授与される。この黄色がツールのシンボルカラーだ。

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とはいえ、総合優勝はできなくとも、総合上位にも十分な価値があるのが世界最高峰のツール・ド・フランス。トップ10までに入れるような選手は、来期の所属チームのオファーに困ることはない。もちろん、総合上位を狙うような選手はあらゆるコースで強いので、どこかでステージ優勝を挙げることも少なくない。

176名のうち、5名が総合優勝狙い、100名がステージ優勝狙いなら、残る70名は何のためにツールを走るのか。それはひとえに、自分のチームのためのアシストとして走る。彼ら個人の成績は一切顧みられることはない。彼らの評価は、いかにチームとエースのために働けたかに尽きる。具体的には、エースの風除けになったり、走るペースを調整したり、飲み物を準備してエースに渡したり……とにかく身を粉にしてエースの成績向上のために走る。エースの自転車がパンクしたら、自らの自転車を差し出すことすらある。彼らが走り続けてその日のステージ成績を10位上げることよりも、エースの総合成績を1つも落とさないことに貢献することの方が価値がある(とみなされる)。

それだけ、ツール・ド・フランスで総合優勝をするにはアシスト選手が不可欠の存在でもある。実際、総合優勝狙いの選手のチームのアシスト選手は、他のチームにいけばエースを張れるだけの粒ぞろいだったりする(常勝軍団、チームスカイはその代表格)。アシスト選手が他チームのエースを山岳で粉砕していく様を見るのは、痛快でありまた資本主義スポーツの現実を見るようでもありフクザツな気持ちになる。

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ちなみに、100年以上の歴史あるツールにいて、日本人選手は4名が出場している。そのうちの2名が現役選手だ。しかし新城幸也(バーレーン・メリダ)と別府史之(トレック・セガフレード)は残念ながら今年は出場しない。1チームおよそ20名からなるトップチーム(ワールドチームと呼ばれる)の中でも、8名のツールメンバーに選出されることは大変な困難と、それゆえの栄誉がある。

チェックしておくべき5人の選手

176人の選手が集団(自転車用語でプロトンという)で走るツール。選手をひとりひとり覚えるのは大変なこと。そこで、2018年のツールで注目の選手を何人かピックアップ。まずは、この選手たちをチェックしておけばOK。それぞれの写真は選手本人のインスタグラムアカウントなので、フォローしておくと大会期間中の機微もチェックできる。

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1.クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
今大会の絶対的優勝候補。2013、2015、2016、2017年のツール総合優勝。今大会は歴史上4人しか達成していない大会5勝目に挑む、現代最強のオールラウンダー。ケニア生まれのため「白いケニア人」とも、そのハウンドドッグを思わせる長い肢体から「フルームドッグ」とも呼ばれる。登り坂での爆発的な加速力と、タイムトライアルでの安定的な強さを兼ね備える。ほとんど前を見ないでペダルを漕ぐ独特のライディングスタイルも特徴的。昨年のツール優勝後、9月のスペイン一周ブエルタ・ア・エスパーニャ、今年5月のイタリア一周ジロ・デ・イタリアとグランツールと呼ばれる3週間レースを連続優勝しており、その最強ぶりは圧倒的。

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2.ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
伝統的に小柄なヒルクライマーが多いコロンビアを代表する選手。圧巻の登坂力を見せる一方で、タイムトライアルがネックで、ツールでは2013、2015年に2位、2016年に3位といずれもフルームの後塵を拝している。次のツール優勝者としての期待も大きいが、今大会は同じチームからアレハンドロ・バルベルデ(スペイン)とミケル・ランダ(スペイン)が参戦するトリプルエース体制が敷かれることが懸念点。思うようなアシストが受けられるか、また調子次第では大会期間中にエースの変更をチームが指示することもありうる。

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3.リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)
オーストラリアが誇るオールラウンダー。2013-2015年のツールではチームスカイでフルームのアシストを務めた。特に2015年のツールではフルームの右腕として彼を総合優勝に導いた。タイムトライアルに強く、山岳もぐいぐいといける強さがある。しかし3週間のグランツールではどこかで綻びが出ることが多く、ツールは2016年の5位が最高位。今年は前哨戦ツール・ド・スイスで危なげなく総合優勝し、過去これまでにない仕上がりを見せている。

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4.ロメン・バルデ(フランス、AG2R)
100年以上の歴史を誇るツール・ド・フランスが開催されてきたことからわかる通り、フランスは自転車の国である。のだが、ことツールに関してはフランス人の総合優勝者は1985年以来、30年以上も現れていない。フランス国民も自国の選手が活躍しないツールにうんざりしていた2016年、バルデが総合2位に入り一躍脚光を浴びた。2017年は総合3位。いま一番総合優勝に近いフランス人。典型的なヒルクライマーで、山岳ステージでの攻撃的な走りが身上。今年も必ずアタックを繰り返すはず。

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5.ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)
これまでの4名とは違って総合成績ではなく、ステージ優勝狙いの筆頭選手。高難度の山岳ステージ以外のあらゆるコースで勝てる実力を持つ稀有な存在。3年連続で世界チャンピオンに輝いており、カリスマ性とユニークな存在感で、フルーム以上に人気のあるロードレース界のヒップスター。第1週目や2週目の前半でステージ優勝を狙う。世界チャンピオンの証、虹色のジャージ「マイヨ・アルカンシェル」をお見逃しなく。

*なお、世界チャンピオンはワンデイレース、すなわち1日のレースで毎年決められる。ツールの総合優勝と世界チャンピオンは同じだけの栄誉であるが、両方を獲得できる選手は多くない。ツールで総合優勝するのに必要な力(登坂力、タイムトライアル能力、3週間のスタミナ)と、世界選手権で必要なそれ(爆発力、スプリント力、国力など)が異なるからだ。

では、ツールはどこで観られるの?

J SPORTS
国内最大4チャンネルのスポーツテレビ局 J SPORTSがツール・ド・フランス全21ステージを生中継する。スカパー!やケーブルテレビ、そしてPCやモバイル機器でも視聴ができるオンデマンドなど、様々な契約が選択可能だ。なお、7月7日(土)第1ステージは無料で視聴できるキャンペーンもある。フランスとの時差があるため、ライブはだいたい日本時間の夜21:00-25:00くらいの放映となる(ステージによって異なる)。オンデマンドなら見逃し配信もあるので、途中までライブで観て、翌朝の通勤電車の中で続きを観るなんてことも可能だ。

J SPORTS サイクルロードレース

NHK
生放送ではないが、毎日のステージを25分のハイライトにまとめた「Daily ツール・ド・フランス 2018」が7月9日(月)から毎日NHK BS1で放映される。簡潔に、見所やポイントがまとまった番組なので初めての方はこちらもおすすめ。

NHK BS1 Daily ツール・ド・フランス 2018

外でワイワイ観戦もできる

ツール・ド・フランスを放映するカフェやバーもいくつかある。友達同士でビールを飲みながら観戦するもよし、詳しい人と仲良くなって観戦のコツを教わるなんてのもよし。

Rapha_tourdefrance

ラファ直営店(東京、大阪、福岡)
サイクルアパレルブランドのラファ(Rapha)は、カフェを併設した直営店「クラブハウス」でレースのライブビューイングを行なっている。ツール・ド・フランス期間中はキーとなるステージをライブで放映する。ロードレースファンが集まる場所で、わいわいと観戦するのは楽しい。なお、毎週土曜日にはツール・ド・フランススペシャルトークセッションが放映前に行われる。ツールをより楽しく、深く見ることができるようなセッションになるという。

ラファクラブハウス ツール・ド・フランス ライブビューイング日程
ラファ東京(渋谷区千駄ヶ谷3-1-6)
7/7(土)14(土)15(日)19(木)20(金)21(土)27(金)28(土)29(日)
・7月7日(土)20:00から、『2018ツール序論』と題したプレビュートークイベントを開催。Rapha Japan代表矢野大介とonyourmark編集部の小俣雄風太が、開幕したツールの見方がちょっと変わるようなトピックを映像や資料などを交えて、お伝えする。参加申込はイベントページより。
14、21、28の各土曜日は放映開始1時間前にトークイベントあり(参加無料)

ラファ大阪(大阪市北区曾根崎新地2-6-21)
7/7(土)13(金)14(土)15(日)17(火)18(水)19(木)20(金)21(土)24(火)25(水)27(金)28(土)29(日)
※7日6:00より「観戦初心者のためのロードレース観戦塾」、14、21、28の各土曜日は放映開始1時間前にトークイベントあり(参加無料)イベントページ

ラファ福岡(福岡市中央区赤坂2-1-18)
7/7(土)14(土)21(土)27(金)28(土)29(日)
※7、14、21、28の各土曜日は放映開始1時間前にトークイベントあり(参加無料)

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英国風パブ HUB
サッカーを始めとしたスポーツが店内で放映される英国風パブ HUBは、ツール・ド・フランスもカバーする。上野店、吉祥寺店、新橋銀座口店、新宿西口大ガード店、池袋サンシャイン通り店、なんば戎橋店で放映が予定されている。店内もマイヨ・ジョーヌにちなんだ黄色の装飾になるという。イベントカレンダー

HUB 上野店(台東区上野6-8-8 上野KSビル B1F)
7/7(土)8(日)9(月)10(火)11(水)12(木)13(金)14(土)15(日)
HUB 吉祥寺店 (武蔵野市吉祥寺本町1-2-7 アルファビル B1F)
7/8(日)9(月)10(火)11(水)12(木)13(金)

ツール・ド・フランス2018は、7月7日開幕。美しい風景と、人間の極限を見ることのできる、稀有なスポーツイベントを、楽しんでみてはいかがでしょうか。

ツール・ド・フランス公式サイト www.letour.fr/en/
Twitter @LeTour @LeTour_jpn(日本語)
Instagram @letourdefrance
いずれのSNSも公式ハッシュタグは #TDF2018