スキーを始めたのは3歳の時。スキーのインストラクターをしていた父親の影響もあって幼少の頃から雪山には毎シーズン行っていたという塚田邦晴さん。中学時代にスノーボードに転向するも、22年間、今も変わらず、シーズンになると、トータルで30~40日くらいは冬山で週末を過ごします。昨年7年半勤めたオークリー・ジャパンを退職し、アスリートのマネジメント会社「First Track」を設立しました。今までの経験そのものを仕事に生かす道を選んだ塚田さんにとって、スノーボードへの特別な”思い”とは?
(写真 古谷勝 / 文 onyourmark)

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塚田さんのキャリアの転機は2007年の事。当時、バンクーバーオリンピックを目前に控えていた時期に知人の紹介から、現地でコーディネート的な仕事ができる人を探しているという話を耳にすると、即座にワーキングホリデーを決めてバンクーバーに向かったと言います。

「当時の仕事に物足りなさや行き詰まりを感じていたんです。だからこの話を聞いた時に、特に迷いはありませんでした(笑)。それが僕にとって大きな転機になりました。居心地も良かったし、そのままバンクーバーで暮らそうとしたものの、リーマンショックがあって、ビザが下りなくなっちゃって。日本に帰国せざるを得なくなってしまったんですが、自分の事を立ち返って考えた時に、好きな事を仕事にしたいと、と心が決まったというか。それで、一番好きなブランドだったオークリーのホームページを見てたらスポーツマーケティングの求職を見つけて。カナダから応募したんです」

バンクーバーから帰国を決め、オークリー・ジャパンへ就職を決めると、塚田さんの情熱は、スノーボードへとますます注がれるようになりました。

「誰も滑っていない雪の上を滑ると、そこでしか出ない気持ちよさが”声”として出てしまうんです。ゲレンデでもパウダーは滑れますが、競争率が激しくて。リフトが動く30分前くらいにまずは並んで、最初の1~2回くらいでゲレンデはもうギタギタになっちゃうから。2~3時間かけて雪山に行っているのに、2~3回じゃ物足りないじゃないですか。だから滑っているその数秒のことをひたすらイメージしながら、ハイクアップして、誰も滑ったことのないパウダーを見つけて、滑る。学生の頃はトリック系もやっていたのですが、社会人になるとケガもできないですし。バックカントリーは大人になって見つけた冬山の遊びなんです」

しかし、4年前、崖から落ちて膝を粉砕してしまうという事故に見舞われてしまいました。それは再起不能、今後スノーボードはおろか、ちゃんと歩くこともままならないかもしれない、と医者に言われてしまったほどだったそうです。死んでもおかしくなかった状況に置かれたら、スノーボードはおろか、冬山、雪さえ見る事さえも怖くなってしまわなかったのでしょうか?

「僕にとって、スノーボードというか、冬山は人生になくてはならない存在、”生きがい”です。楽しい事も辛い事も両方経て、それでもないといけないものって気づいたんです。スノーボードがあって、これだけやってきたから、多分オークリーにも入れたし、これだけ一つの事を本気でやってきたから、選手にも認めてもらえて仕事をこなせてきた、というのもあったと思うんです。山を通して仲間になり、仕事に繋がった事もありましたし。たかがスノーボードと言われたらそれまでですが、大人になって意気投合しあえることってなかなかないじゃないですか。それが増えるほどに仕事のつながりが増えていったという自覚があるというか。スノーボードはそれを教えてくれました。だから、一生懸命リハビリして、トレーニングをこなして、治ることを祈ってできる限りのことをしました。1シーズンはもちろん全く行けなかったけど、翌シーズンになんとか復帰することができ、今では”バンクドスラローム”(ターンの上手さを競うレース)に出たりしています」

まるで雪上のカーヴィングのように、人とのつながりが点と点を繋げて滑り続けた7年半。一度も冬山への情熱が途切れることなく続けていたものを仕事として掘り下げて、アスリートをサポートし、そしてギアに落とし込んでいく。スポーツマーケティングという仕事は塚田さんにとって、まさに天職でありました。そして今年、新たなビジネスを、自分で立ち上げることに。

「スポーツやアスリートの魅力を多くの人に伝える為に、スポーツと音楽やファッション、アートといったカルチャーを融合させて新しい価値を創りたいという想いから、ファーストトラックを立ち上げました。社名であるファーストトラックは新雪に最初に跡を残すという意味ですが、仕事でも前例の無いような新しい跡を残したいという想いを込めました。まだまだ会社もスノーボード同様、滑りながら模索している状況ですが、仕事でも「気持ちいい声」が出せるように頑張ります」

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【名前】塚田邦晴 KUNIHARU TSUKADA
【生年月日】1982月3月4日
【職業or所属】ファーストトラック(株) http://first-track.co.jp/
【やっているスポーツ】スノーボード(22年)
【instagram】@tsukada_kuniharu

お気に入りアイテム

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「バックカントリーでハイクする時や、春先のライディング、山への行き帰りの車の運転などで愛用してます」